遠きに在りて

遠い、目の前の物語
凪いでしまえば忘るのか

なかまはずれの夕惑い
かえり道 ほら
蒸してぼやけた

讃美歌伝う町にいて
夢に入るような具合に落つ

焼ける夏は 葉にも縋る

遠い、目の前の物語
世紀も経ぬうち忘れたか
毒除け綺麗なものばかり
食んで伝えも薄れたか

祈りましょうの罪つくり
閉ざしてもまた
古傷は膿み

宵は千灯籠の町にいて
混ざる歴史の狭間に落つ

焼ける夏は 川も見えず

遠い、目の前の物語
泣いて縋るか
生きるより
楽な業は幾つもあり
ふと足を踏みこんでしまいそう
力抜いてしまいそう

今もいずこかの地に惑い
凪いだ順に忘れてゆく
爆撃の中
逃げ果せた者の末裔であるのになぜ

人はかぐわしのものばかり
追ってしまうか
水に酔い
忘れてしまえば繰り返す

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