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②表現力を意識して書く記事

表現をがんばる。その気持ちは分かった。それで、なんとかフィギュアスケートにおける「表現力ってなにか」もまだまだながら理解できそうなところに来た。
じゃあ、次は記事の中で「表現力」をどう書き込むかについてもとても悩みました。
 NHK杯ではまだ表現について考えがまとまっておらず、そもそもNHK杯で宇野昌磨さん、鍵山優真選手に質問していたくらいなので、表現について記事でしっかり書き込むことはできず。
 チャンスは全日本選手権だなと照準を決めて、全日本に挑みました。

 


全日本選手権での執筆に向けて

SP、FSともに坂本花織選手、宇野昌磨さんの原稿をメインに書きました。
 とくに、宇野さんの原稿についてかなり悩みながら、書きました。全日本のちょっと前からどんな風に書こうかなって考えながらお風呂に入ったり、寝る前に考えたり。思い浮かんだ言葉をパソコンに打ち込んでみたり。
「こうやって書こう!」と考えはまとまらないままでしたが、長野に向かいました。 

男子SPでは・・・?

男子のSPの日。
朝の公式練習が一段落してから、原稿の準備に取りかかりました。
宇野さんの原稿に取りかかったんですが、書いては消し書いては消し。あの静かで濃密な世界観がそこに生まれたんだよということをどうやって伝えよう。悩みました。
 
もう一回演技を見返しました。
まず、演技の冒頭ってどうしてたんだっけ。女性ボーカルで「ILoveYou」って何回言ってた?4回転フリップはどのタイミングで跳んでた?
 
 
そんなことを考えながら何度も映像を見返しました。
そして、第3グループが始まる前くらいになんとなくの原稿の形を整え、あとは本番を待つのみ。
そして、全日本の氷の上に立ってから食い入るように宇野さんの演技を見つめました。
昨年の全日本選手権は、2022年より試合が終わる時間が早く、一番速い締切時間には少し余裕はあったものの、それでもなるべく速く原稿を出せるように、パソコンのキーをたたきました。
 
最初の版に載せる原稿を出し、その次の版、さらに次の版に向けさらに原稿をブラッシュアップしての繰り返し。
 
最終的には、宇野さんの表現の部分を表す言葉はこのようになりました。
 
女性ボーカルが繰り返す「アイ・ラブ・ユー」の歌詞に合わせ、宇野が指を指して始まる印象的なSP。連呼される愛のささやきの後、一瞬の間を置いて左足のエッジを内側に倒した。高く舞う4回転フリップ。静かな音楽に溶け込むような着氷で2・99点の出来映え点を得た。
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男子SPの紙面


 
この後も原稿が続きますが、あの印象的な始まりをどうしても書き込みたいと思い、こういう風にしました。

男子FSでは・・・?

そして、FS。NHK杯であんなすごいもんを見てしまったからどうやって表現しようかと、SP以上に悩みました。こちらも何回も映像を見返して、思い浮かんでくる単語や文章を何個もパソコンに書き込み、それらをつなげられるかどうか、あれこれあれこれやっていました。が、なんとなくしっくりこなかったですね。
それでも、時間は待ってくれない。とりあえず、方針だけは決めました。
FSは静かな空間の中で派手な振りはない。原稿でも余計な修飾は必要ないかなと思い、動きを丁寧に書いていこうと考えました。

男子FS

冒頭の4回転ループは回転不足となったが、4回転フリップは2・51点の加点を獲得。「ジャンプのぎりぎりまで振り付けを入れている」。ただ跳ぶのではない。3回転半の直前に体を後ろに反らす難しい動きを組み込んでから踏み切ると、滑らかなランディングで2・63点を得た。一方で、連続技を避けるなど、手堅くまとめた。
後半は、ピアノによる単調な繰り返しと、消え入るようなバイオリンの調べ。静かな空間では粗いスケーティングや、ジャンプの乱れは目立ってしまう。ゆったりとした動きでエッジを深く倒しながら、氷に軌跡を描くステップ。滑りの緩急で静かな世界をつくり上げた。
~~~~以下略~~~~~


いい原稿って・・・?

いずれも、これが正解かは分からないし、時間の制限のある中でひねり出したのがこれらの原稿でした。これが正解なのか、いまも自問自答です。
 22―23年シーズンはまず書くことに慣れるシーズン。2シーズン目はまた違った角度から原稿について考えるシーズンとなり、学ぶことばかりでした。
もちろん、他社のみなさんが書く原稿からも学ぶことも多く、日々勉強、日々反省、日々進化です。
 
運動部に来てから「原稿をうまくなりたい」という思いを持つようになりました。それまでは、原稿のうまさよりも「ネタのおもしろさ」のほうに軸足を置いていたように思います。
 
先日、強化合宿の取材をさせてもらい、新しいシーズンが始まるなとひしひしと感じました。
また、選手の皆さんの演技がしっかり伝わるような原稿をどうやって書いていくのか。日々、考えながら選手の言葉をお伝えできればと思っています。

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