忌錄: document X
■ 感想
「みさき」「光子菩薩Awaken」「忌避（仮）The Ibi」「綾のーと。」の四編で構成されている忌まわしい忌錄たち。電子書籍を生かして、ブログや読書メーター、YouTubeと連動型の話があるのも面白い。
作家名：阿澄思惟（Alan Smithee. アメリカ映画で一時期、諸事情により監督の名前を伏せる際に使用されていた名前）と隠された執筆作家さんが誰なのかは盛大な引っ掛けでなければこの方だろうなと察しが付くものの（でもトラップかも）、おそらく読後の考察に重きを置かれている本作の真相に辿り着くことはできるのか。
私には生涯をかけても無理そうな気がしつつも、何年かけても解き明かしたい。でもそこから何が飛び出してくるのか…。それぞれ独立した話として愉しめる構成になっていますが、一筋縄ではいかない話揃いかつ、一つ解けるごとに恐怖は2倍どころか数段跳ね上がる地獄システム。
まず一話目の「みさき」。両親と散歩中に立ち寄った神社で神隠しのように姿を消したという失踪当時六歳の美咲ちゃん。神社は周辺を濠で囲まれており、両親が目を離したのもほんの少し。失踪翌日に意味の分からないことを一方的に話し、最後に「もしもし」と言って切られた電話はあったものの、他に脅迫電話の類もなく捜査は打ち切られた。
謎だらけの事件を解明すべく叔母さんに勧められた霊媒師の女性を通じて降霊をするが…。文字通り読むだけでも恐ろしい話となっているけれど、仕掛けを解き明かした時、いやあああああ！と、白目で恐怖に震えること間違いなしなトラウマ級の恐怖。大筋は解明できでも他の話との繋がりとなる人の真相がいまいち解ききれず。何層にも複雑に絡まっているので、ひとつひとつ謎を解いていく愉しみがありすぎて大混乱。
次は、書簡の体で始まる「光子菩薩」。この手紙を読んでいるあなたに、ここに書かれたことを闇に葬ることなく白日の下に晒して欲しいと。谷中で九人の眼球を刳り貫いて逮捕された犯人が、自分は殺人犯などではなく光子菩薩に憑りつかれた人の命を救ったのだと訴え、犯人の所持品だった光子菩薩の護符十数枚を検めたことから始まる不気味な歪みと齟齬に砂を噛むような話。この護符も他の話にも関わってくる大事なファクターの一つで、特級呪物。
3話目は、沖縄で実際に起きた事件を基にした、幽霊屋敷「忌避（仮）」。ある実在の幽霊屋敷を調査して記事に起こそうとしていたライターが「取材に行く」と行ったきり消えてしまった。そしてそのフロッピーを資料室で見つけたライターが新たに取材・検証してみようと試み…。不気味な符号が時間の歪みを感じさせる、キーポイントとなるべき章の気がするが、時系列をまだ整理しきれず。
そして最後の「綾のーと。」主軸となるのは、綾ちゃんのブログ。新生活を楽しんでいる様子から始まり、友達から聞いた「読書メーター」を作るとの記述もあるが、本当にユーザー名「綾」で、本文に言及のあったナオコーラさんや川上弘美さんなど、感想は書かれていないが読了、積読、読んでいる本の登録もあり。
同じ読書メーターユーザーという点にぐっと親近感はわくものの、怖くてお気に入り登録はできず。でも、綾ちゃんの読んだ本には大事なヒントもありそうなので、積読で持っている本は読んでみよう。収録された4つの話はすべて複雑に絡み合っていると思われ、信用できない語り手や、時系列の歪みもあるので、読後じっくりとひとつひとつの違和感を解いていくのも楽しい。
しかし、何より気になるのが綾ちゃんのブログのパスワード。友人へと宛てられた鍵付き記事を開いた時こそ最後のピースが埋まると思われるが、この小説が刊行されたのが2014年5月4日。10年経った現在でもパスワードは未だ誰も解けないらしい。私が解けるはずがな…い…。けれど、気になって仕方がない！「このホラーがすごい！2024」で雨さん×梨さん×背筋さんの鼎談で扱われているので、また新たに読む読者が相当数いらっしゃると思われるので、その中の名探偵さんに是非解いて欲しい（全力他力）！
解けずとも、私も何年かかろうとも取り組むべく、綾ちゃんの共読本からまずは。へっぽこ探偵・綾パスへの道もnoteでまとめていこうかな。kindleで299円と破格の安さで何年も楽しめそうな濃厚モキュメンタリーホラーなので、面白そう！と思った方は是非「綾のーと。」パスワード解読探偵にご参加下さい。そして解読できた方は是非ご一報を！何卒┏○))
当方へっぽこ探偵故、ものすごく心細ぅございますが、調べたことは逐一「note」か新しいSNSなどでまとめていけたらなと思ってます。YouTubeも分かりやすくていいなあと思うんですが、見る専門すぎて動画の作り方が分からないので、多分note辺りでテンション高く綴れたらと。怖いのでせめて明るく解明していきたいな笑。
貞子の呪いビデオが変化して電子の世界へと世界を広げ、恐怖と愉しさを天秤にかけたホラーが待ち受ける。最高濃度の驚愕を是非！
■ 漂流図書
綾ちゃんが「読書メーター」に登録していた作品から私も共読の4作品をまずは再読することで、綾ちゃんの解像度を高めていきたい。
それにしても10年経っても解けないパスワードって一体…。