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お金のことってなんで話しにくいのかな?▶『三千円の使いかた』読書感想エッセイ

自分の環境と脳力が数値化されるのが「お金」。
その使い方となればなかなか人には話しにくいし、お金の危機管理能力は大事だって解ってるのに、ムダ使いしてしまう……。

と一度は感じたことがある人なら、この本は安い買い物です!(たぶん)

『三千円の使いかた』原田ひ香
 読書期間︰2023.05.13〜06.13

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単行本が出た時に、神楽坂のかもめブックスに平積みになっていたなぁ、と書いてて思い出しました。
あの書店は本当に楽しくて、良い本がずらーっと並んでいて、片っ端からほしくなります。
また行きたい。プリントースト食べたい。(むしろ働きたい)

そのかもめブックスで気になった当時はハードカバーだったので購入に至らなかったのですが、今回ドラマ化に伴って文庫版を買ってみました。
地元の古本市仲間オススメの作家さん、というのも購入の後押しでした。

で、読んで感じたのは、
これは20代のうちに読むべき一冊
ということ。
20代というか、「働きだしたら」でしょうか。

就活して、それなりの会社に入れば、学生時代のバイト代よりも多くのお金が給与として手に入ります。
しかも辞めない限り、決まった額が入ってきます。
主人公・御厨 美帆(みくりや みほ)のように、憧れの生活のために使う人もいれば、自分の大事な誰かのために使う人もいます。
欲しいなと思ったら、ポンと出せる金額が、学生時代の頃のそれとは違うのです。
ローンも組める!

でもそんな生活がいつまで続くの……?
と疑問を投げかけるのが、主人公の祖母・琴子です。
3,000円の使い方で、人生が決まるのよ、と。

子供の頃、3,000円は大金でした。
私も10歳だった当時、お年玉で1,000円のカバンを買うのに、何度も何度も母親に「本当に買っていいの?」と確認したのを覚えています。
自分のお金で1,000円も払って、ずっとほしかった、けろけろけろっぴのトランク型プラケースを買うということが、とても大ごとで、キラキラしていて、突然大人になった気分でした。
お年玉を親に預けず、自分で管理するようになったことで、親に認めてもらえた気がしたのです。

あの気持ちは今でも忘れられないし、超えられないかなぁ。
(去年、MacBookAirを買うのに、同じくらいソワソワはしたけど。金銭面で・笑)

お金の話って、生きてく上で大事なことなのに、なんで身近な人に相談しにくいのでしょう?
……ってことが、いろんなHowto本でも書かれていますが、私は、
金額  =  環境と能力
が顕になるからだと思っています。

環境と能力は、どちらも生まれた時点で備わっているものが土台になります。
もうこの時点で「生きる基礎体力」が決まっているのです。
ここからどう肉付けしていくかで、生活が変わっていくのですが……そこが難しいところ。

私は就職氷河期ど真ん中の世代です。
短大時代、教室の壁に各企業ごとの求人が張り出されるのですが(2000年代の地方大学はまだアナログなのよ)、毎年その枚数が減っていくのです。
歯抜けで壁が見えてしまっている状態。
先生たちが「今の学生は求人がこんなに少なくて可哀想だ」と嘆いていたのを覚えています。
この景気の悪さは学生だった私たちではどうにもできないことで、「環境要因」だと思います。

さらに私は、子供の頃から軽い発達障害があったようです。(40過ぎてから解った)
人より応用力や理解力が低く、言われたことをまともに受け取ってしまうので、自分の判断にいまいち自信が持てないのです。
(なのに正義感は強いので、学級委員とかはやってました・笑)
これも「環境要因」と言えるのかもしれません。

じゃあ、回避するにはどうしたら良かったのかというと、もっと早く、自分の素質に気がついて、認めていれば良かったのです。
バブル期(私は小学校低学年だった)から先を見越して、学力と知識量を上げておくとか。
自分が人と進み方が違うのはなぜなのか、というのを親子で一緒になって考えて、自分なりの進み方を見つけておくとか。
(まず親が「うちの子は周りと違う」ことに納得が行かなかったのも一因)
自分で考えて、正解に近い答えを出せることが、自力で生活するために必要な「能力」です。

この2つが「生きる基礎体力」になるではと思っています。

「個性の時代」とか散々言われて育って来ましたが、結局、令和になっても学歴社会なのは変わりません。
『三千円の使いかた』は、今の自分に生きる基礎体力があるのか、不足しているのかを考えるきっかけになりました。
すごく高いわけでもなく、だからといって安くもない3,000円。
3,000円を払っても今後の生活に役立つ何かがあったならば、それは飲み会の会費でも、コンビニでの買い物でも、自分の生きる基礎体力を上げる良いお金の使い方なんだと思います。
まぁ、「自分の心に偽りなく」というのが大前提ですけどね。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本日もミッドナイトな相棒・MacBookAirからお送りしました。
また次の本でお逢いしましょう。

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