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【番外編】新聞1頁500円の補償金は高いか妥当か?!著作権法の一部を改正する法律案 その1:図書資料 R4.1.1施行案について解説

 令和5年(211回国会)において、文部科学省より著作権法の一部を改正する法律案が出ています。実際に所管しているのは文化庁のようです。
 そういえば、文化庁って京都に移転しましたね。  どうして京都に移転したのかな。こんな記事がありました。いくつかの庁が誘致されているようですね。唯一の成功例みたいです。地方創生の起爆剤、として期待されているようです。
 文化庁長官が都倉俊一氏なのを、テレビ報道で知りました(;^_^A 都倉俊一といえば、昭和ヒット歌謡の作曲家です。いつのまにか、そんなお仕事をされるようになっていたんですね。
 
 さて、このブログは今国会の法案を調査したつもりが、令和4年1月1日に施行された改正案を誤ってとりあげてしまいました。
 ですので、あらためまして、この令和4年1月1日の法案についての説明とさせていただきます。


 検索の簡便のため、同省HPの法律案についてのリストを示します。

今回の改正案は、2回に分けて報告します。その1は図書館サービス、その2は放送番組についてです。

その1:図書館のメールサービスが可能になる?!

現在、市の図書館にコピー機が設置されていて、A41枚10円でコピーできます。今までは、紙でのコピーだけが許されていました。それが、この法改正により、一定の条件下のもとで、メール送信できるようになるそうです。ただし、条件つきです笑

著作権法の一部を改正する法律案(概要ポンチ絵) (PDF:239KB) 

 今までも図書館へのアクセス方法は検討されてきていたそうですが、コロナ禍で図書館休館などにより必要性が明確になり、今回の法改正にまで至ったとのことです。(説明資料 P2参照) 

 ➡(筆者)逆にいうと、このような非常事態にならないと「便利」が進まない、ということなのかな。。。(*_*;

権利制限規定とは



 ここで、「図書館関係の権利制限規定」という言葉が気になります(;^_^A
著作権法における権利とは著作権(作成者の財産権)であり、
これを制限(作成者の許諾を得ず使用)する規定ということのようです。
 コトバンクでは権利制限を以下のように定義しています。

著作権法で、複製朗読演奏などの他人行為を制約できる権利として設定された著作権に対し、無断使用が禁止されたままでは不都合のある特定範囲について、著作権が及ばないこととした規定のこと。またはその効果。権利制限が定められた範囲では自由に著作物が利用できることになる。家庭内での複製(私的複製:30条)、図書館での複写サービス(31条)、引用(32条)、時事報道のための利用(41条)などがある。なおこの規定は著作隣接権にも同様の効果がある。

コトバンク「権利制限」


権利制限の例は、文化庁資料13.著作者の権利の制限(許諾を得ずに利用できる場合)を参照するとたくさん出てきます。この資料のP9を読むと、すでに令和3年の法改正で、国会図書館から利用者へのメール送信が可能になっています。私が調べた限りでは、今回の法改正と大きく違う点は無いように見えます。今回の法改正は、新旧対称表p6をみるとあらためて言葉を定義して条文を改正しているようです。

 ➡この文化庁資料13には、財産権(著作権)と書かれてあり、あ、財産権なのか!と眼から鱗、でした。。お許しを得ずに著作物を利用するのって、財産権を奪っているようで、なんだか作者に申し訳ない感じがしてしまいます。。。

この法律案で気になるのは、上記に示した、概要ポンチ絵「図書館などの設置者が権利者に補償金を支払うことを求める」という一文です。
誰が誰に「支払うことを求める」のか、分かりずらいのですが、
絵のほうにある、文字情報によれば「図書館が作者に補償金を支払うことが義務付けられている」という意味だと分かります。

補償金について

  この補償金について、実はこのような仕組みがあります。公衆送信、とはインターネットによるメール配信、と考えればよいと思います。

図書館➡文化庁➡指定管理団体➡権利者団体➡権利者
という流れでその補償金が分配されます(;^_^A

指定管理団体として、このような団体があります。全国にひとつだけ、と決められています。

図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)

一般社団法人図書館等公衆送信補償金管理協会は11月7日、来年5月の開始に向けて整備されている図書館等公衆送信サービスにおける、補償金の額の決定、徴収、分配などを行う団体として文化庁から認可された。
同協会の略称はSARLIB(サーリブ)。現在、図書館等設置者21団体に、補償金算定基準に関する意見聴取を行っている。意見聴取後、料金体系を策定して再度文化庁に申請する。
(2022/11/17)

Shinbunka ONLINE

このSARLIBでググっても、SARLIB自体の公式サイトが見つかりませんでした。文化庁HPの説明によると、一般社団法人 〇〇協会といった、音楽、漫画、写真、など著作権に関わる14団体で構成されています。

HON.jpというサイトに、2022年12月23日日経新聞の報道について、今回の法改正やSARLIBについての論考がありました。

今回の法改正でメール送信ができる「特定図書館」になるための規定が、かなり困難な作業を強いられている、と書かれています。
 

とくに、送信する電子ファイルに対して講じる措置として「全ページヘッダー部分に利用者ID(貸出カードの番号等)を挿入」「全ページフッター部分にデータ作成館名、データ作成日を挿入」というのがキツイ。実務の難易度を飛躍的に上げているように感じました。

HON,jp週刊出版ニュースまとめコラム 2022年12月26日 鷹野凌

法律文からそこまで読み取れていないのですが💦 (この規定が政令なのか、今回はそこまでは調べていません)
現場の方は、このような細かい制約が本当に負担なのだろう、と思います。

このような懸念と提案も書かれていました。

現実的には、必要な情報を記載した透明なフィルムをスキャナーに載せたうえで資料をスキャンする、みたいなアナログ対応になるでしょうか。利用者IDだけ消せるインクで書けば、使い回しはできそうです。ただ、判型に合わせた微妙な位置合わせが必要になるので、めちゃくちゃ手間がかかりそう。利用者IDさえ入力すれば自動でデータを挿入してくれるようなシステムが欲しくなりそう。

HON,jp週刊出版ニュースまとめコラム 2022年12月26日 鷹野凌

これは大変そうです。

この記事が書かれたときは、まだ補償金の金額については検討中と書かれていますが、令和5年3月29日に文化庁から補償金額の認可について発表されています
発表された「図書館等公衆送信補償金規定」によると、

文化庁報道発表 図書館等公衆送信補償金の額の認可について P6

新聞1ページ500円。。。うーん。。。高い?妥当?笑 それに、算定式、とあるけど、これは式、なのか?笑
➡(筆者つぶやき)この500円という値がどのように導かれたか、何を基準としたのか知りたいなぁ。。。。

 補償金を管理する団体は、このSARLIBひとつ、と決められています。
 そして、このこと自体を決めているのが、文化審議会の中の著作権分科会です。
    文部科学省→文化庁→文化審議会→著作権分科会→SARLIB

   このように、私たち利用者が直接影響を受ける規制は、政府の、何段階もの組織を経て決まることが分かります。
 大きな政府は、巨大な組織にならざるを得ません。

筆者の感想

 著作権は財産権であり、それを守ることは大事なことです。しかし、インターネットでメール配信ができるようになって何年経っているでしょう。コロナ禍が起きなければ、いまだに実現していなかったかもしれません。政府を動かす力が自然災害や感染症、国際有事、でいいのでしょうか。
 そして、新聞1ページ500円という補償金が高いのか妥当なのか、よく分かりません。この幾重にもまたがる組織の人件費が加味されているかもしれません。これも、政府が価格を決めている例です。利用者負担とするなら、市場原理で自然と決まるほうが妥当な金額になるのではないでしょうか。
 やっと決まった規則は、末端の利用者や事業者にとってよりよい社会になった、といえる規則になっているでしょうか。この改正案については、必要な事ではあるけれども、合理的でない決め事を多々含んでいると思いました。

 ちなみに、楽譜はIMSLPという、無料であらゆる楽譜がダウンロードできるサイトがあります。もう楽譜はほとんど買わなくなりました。ですから、以前あった楽譜屋さんはほとんど廃業していると思います。けれども、楽器奏者にとっては恩恵です。輸入楽譜はとても高額だったので、楽器や音楽の普及に役立っていると思います。

議員だったら質問したいこと


①この改正案が施行されたのち、利用者や特定図書館などへ利便性を高めるためのリサーチと改善などを行っていく計画はあるか。
②例えば新聞1頁500円、という金額についてお尋ねする。この金額はどのように導かれたか。利用者である国民に理解を得るためにお聞きしたい。参考になる市場価格はあるか。あるとすればそれは何で、いくらか。

その1図書館のメールサービス についての調査は以上です。

続きの、その2 はコチラからご覧いただけます!お読みいただけたら嬉しいです。

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