見出し画像

逃げてきた果てには、

「逃げ」って、ちょっとネガティブな印象がある。

日本人の考え方なのか、私が自分に厳しすぎるのか、はたまた別の理由があるのかもしれないけれど、私はこれまでいろいろなものから逃げずに向き合ってきた方だと思う。

苦手なことやできないことがあれば努力したし、学校ではみんなが嫌がる班長とかリーダーとか、そういうものは全部引き受けてきた。辛いことに向き合えば向き合うだけ正義だと思っていた私は、自分にも他人にも厳しくて。ピリピリした空気を放った、嫌な奴だったと思う。

そんな私が「逃げても良いんだ」と思えたのは夫と出会ってから。彼はいい意味で肩の力が抜けていて、私から言わせるとゆるキャラみたいだ。「辛いことは無理にやらなくてもええんやで〜」的な人。頑張りすぎる私に、安易に「頑張れ」と言わない。そのかわりに「やりたいことしたらいいよ、俺がいるから大丈夫」と言うのだ。なんとできた男だろう…。

それからというもの、私は数多くの辛いこと、嫌なことから逃げてきた。

これ以上訓練するの嫌かも、看護師違うかも、と思って大学を辞め。会社員違うかもな、と思ってフリーランスになり。通勤嫌だなー、と思って在宅でできる仕事を始め。ついにはコミュニケーションがしんどい親と縁を切った。苦手な人とは無理に関わらないようにしたし、ワクワクするかどうかで仕事を選択している。

「なんてこった」ってくらい逃げてきたけど、これらの選択に後悔はない。無理して向き合ってきた頃より生きやすくなった。これは逃げられるようになってから気づいたのだけれど、逃げるには一定の勇気が必要だ。これまでとは違う、新しい道を選択する勇気。「逃げずに向き合ってきた」というと聞こえはいいが、逆に言えば辛くても止まることで楽をしていたのかもしれない。

そして「逃げても良い」という選択肢があることは、むしろ強い。単に人生の選択肢が増えるだけでなく、精神衛生が保たれる(気がする)。

人生のなかでやりたいことですら全部できないかもしれないから、やりたくないことからはできるだけ逃げるのも悪くない。

逃げてきた果てにあったのは、ハッピーな人生だったのだから。

この記事が参加している募集

この経験に学べ

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはライターとしての活動資金にさせていただきます。