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恋は

どしゃ降り、雷
ビニール傘は3回くらいみごとにひっくり返り、弱撥水性の上着はどんどん水分を含んでいった。傘を首と手で支えながら、自転車を漕ぎ、夕焼けが薄く明るい部分のある空から降る夕立の中、息子と父が濡れてないと良いなぁと願った。
風に煽られ車にぶつからないよう注意しながら高架下に入る。
自転車を片足で支えながら、家に入るとできないであろう仕事の電話を折り返した。 あたたかく、久しぶりに聞く人の名前に撮影風景が蘇る。

電話を終えると、真っ直ぐとわたしを見つめる父と同い年くらいの男性の視線。「?」と返すと「電話貸してもらえますか?」と言われる。
街角アンケートは120%頼まれるけど、携帯を貸して欲しいと言われたのは生まれて初めてだった。

「あ、もしもし、今、バス停に傘持って来てるから。携帯家に忘れて来ちゃって。降りたところにいるから」

それから間も無く、奥さまがバス停から降りてきて、二人はわたしの前を何事もなかったように通りすぎて行った。

家に着くと息子が「ママー雨大丈夫だったー?」とすぐさま駆け寄ってくれわたしも同じことを彼に聞いた。


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