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あの日も雨だった。


冬の深夜だった。
夏の夕方だった。
秋の明け方前だった。
春の昼下がりだった。


あの日もあの日も、傘をささずに一人で歩いた。雪の日もあった。道行く人影もなくて、たまに通る車が私を照らした。雨なのか涙なのか自分でもわからないまま濡れていた。


たまに地面に蹲って声を出して泣いた。食い込む爪、コンクリートを殴って、塀に頭を打ち付けて、そんなことでは紛れることなんてなくて心の方がよっぽど痛かった。胸が心が痛すぎて呼吸ができなくて、倒れ込んで。雨が傷にしみる。


恐らく生きる限り傷から逃れられない。踠いても踠いても、なかなか上手く浮き上がれない。浮き上がれてもきっとまた雨が降って、水かさは増えて、また溺れていくのだろう。

それでも死は選べなくて、音楽やら花やら誰かやらを愛してしまう。


私は今日も血を流しながら溺れている。



Jun 4, 2017

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