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ため息をひとつ


今月末で、8年近く住んだ家を出る。
一軒家から家族で引越してきたマンションで、兄の東京への大学進学を機に、そのあたりから何の前触れもなく気づけば一人暮らしが始まっていた。

緩やかに始まったそれは、きっといつも私の寂しさを増幅させたと思う。
使う部屋は限られているのに、家族の荷物は置いてあって、でも気配はあるのに存在はなくて、家に帰るのが嫌でアルバイトを詰め込んだり誰かの作るご飯が食べたくて賄いのある飲食店でアルバイトをしたり、バイト先のお姉さんに依存していたりした。16〜17歳の頃の話。


もともと母は出張が多い上に朝は早くて夜は遅かったから、私の持つ母親のイメージに、家庭に居る風景が欠けている。
兄が東京へ行く前に、うちらはずっと家族というよりも同居人という感じだったよね、という話をした。

とっくに同居人も解消されているのに、ずっと今の家に住み続けていた。
ここが実家という認識で正しいのかどうか、今でもよくわからないけど、みんなが帰ってくるとしたらここなのかなという認識だけで何となく住み続けていた。


先月、母に自己破産をすると告げられた。
莫大な借金を抱えたらしい。詳細は省く。ただ母の名誉の為に一応記すとギャンブルの類ではない。
そんなわけで、母名義の今の家には居られなくなった。私の名義にして住み続けることも考えたけれど、なんかもう、いいかなという気持ちになったのだった。


同居人うんぬんどころではなく、実家消滅。
存在うんぬんよりも、気配も消滅する。

地方から出てきた子が口にする、実家に帰省していたという話。
そこに行けば当たり前のように迎えられる場所、というのがあるのが幻のように思うときがある。


浅くつながっていた家族は、もしかするともう集まらないのかもしれない。


人生で初めて不動産屋に行き、内覧を済ませ、賃貸契約の審査をし、初期費用を振り込み、後は今荷物を少しずつまとめている最中。

去年建ったばかりの新築のマンションを見つけてもらい、温泉施設が近くにあること、部屋のベランダから山が見えること、周りに高い建物がないので空が広くよく見えることが決め手になった。勤めているキャバクラにも近づいたし、塾にも近づいた。

初めてのことへ抱く不安もかなりあったけれど、今は少しずつ新居を楽しみに思う気持ちも増してきている。


塾に行く、キャバクラに出勤する、引越しの準備を進める、先週末はバレンタインのイベントがあったので、その用意も進める。
何かを並行するのが苦手で容量はとっくにいっぱいになっていて、いつパンクしてもおかしくなかった。

寝る時間がなくて、ベッドで寝ない日が何日も続いたりした。机でうつ伏せで寝たり。


やっとイベントが終わって、抱えていた一つの課題はクリアできたけれど、だから終わりということにはならず課題、勉強、引越し準備にやっぱり追われている。
何か一つ終わってもその次があり、イベントが終わったからといって気を抜いていたら稼ぐ機会を減らしてしまうので、その次、その次を考えていかなきゃいけない。


おかげさまで塾の月謝も引越し費用も安泰そうですが、良いことがずっと続くとは限らないことをよく知っているので、怯えながら生きています。急激に上がって急激に落ちて欲しくないから静かに生きていたいのに。
人生がうるさくなってきました。






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