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絶景の淵で




愛媛県旅行記の続きです。
前編はこちら。





旅先では日中活動的に体力を消耗しているので割と早めに就寝し、そのため朝は早く起きる。バランスがいい。健康的で文化的な生活。

日の出と共に目覚め、昨晩教えて貰っていた街の中の足湯へ行こうと身支度を整え旅館を出た。
その前に、旅館から徒歩1分ほどの場所に伊佐爾波いさにわ神社という、朱色が大変美しい豪華絢爛な神社へと足を向けた。
国の重要文化財にも指定されている。
社殿へは135段の石畳を登って目指す。
スポーツシューズに速乾性素材のウェアを纏った男性とすれ違った。いつものモーニングルーティンなのかもしれない。彼の健康は本物に違いないなと思った。
早朝の穏やかな風に吹かれながらてっぺんまで登り、振り返って道後の街を見渡す景色は絶景だった。


賽銭箱に硬貨を投げ入れ、手を合わせる。
いつの日か、参拝するときには住所と名前(と年齢)を神様に告げてから願いを伝えなければいけないと教えてもらったから、毎回ちゃんと言うのだけれど「大阪府○○市〜〜から参りました。○○ ○○ です。○歳です。」
という時には、どうしても新婚さんいらっしゃいが頭をよぎる。行ったことないけど、街コンとかもそういう感じなのかな。
それに、神様が(あぁここかぁ)とか言いながら自宅を尋ねてくる様子を想像すると笑ってしまう。
それでも、お願い事をちゃんと叶えて欲しいので型にはまることにしている。

大抵旅先では、「無事に家まで帰れますように」とか「事故を起こしませんように」が多い。


その後、賽銭箱のすぐ隣に置かれていたおみくじを引いた。観光客向けになのか両面印刷で片面に日本語、もう片面は英語で書かれていた。


あせらばあせる程 苦しみ多く
騒げばさわぐ程損をする災い添う運です
けれど何事も控え目にして心静かに身を守り
信心怠らなければ却って後は大の幸福あり


ちなみに今年の初詣のおみくじは凶だった。
不吉過ぎるので引き直したらまた凶が出た。
さすがに3度出たら立ち直れないので2回でやめておいたけれどまだ根に持っている。

やっぱり今年はあまりよくないのかもしれないなと思った。めざましテレビの星座占い含め、悪い結果は絶対信じないと決めているのに。


それから少し歩いて道後温泉 空の散歩道にある足湯へ浸かりに行った。
地元民らしき人と、観光で来たらしき人とがいて、私もそこに加わった。
少し坂を上った高台にあり、上から道後温泉本館を見下ろす形で足湯に癒される。
温かい湯に浸かるといつでもこうして緊張や疲れをほぐしてもらえるから良い。
白湯や熱いお茶を飲むのも好きで、某YouTuberが「白湯いいよ!内臓がお風呂に浸かってる感じ。」と言っていて、わかるなぁ〜と思った。白湯飲みながらお風呂に浸かる私は変態だろうけど。


旅館から拝借してきたタオルで足を拭い、先程よりも軽くなった足取りで部屋へ戻った。

仲居さんがやって来て、朝食の準備を始めますねと伝えながら、身支度も全て整えてさっぱりとした姿の私に、随分早起きなされたんですねと声を掛けてくれたので、
昨夜教えてもらった通り、参拝し足湯に浸かり朝活してきたのだと答えた。
「教えた甲斐がありました」と嬉しそうに顔を綻ばせてくれて、私も行った甲斐がありましたと笑った。


朝食も和定食の御膳だった。
白米にお味噌汁に焼き魚。煮物にお浸しに卵焼き。豆腐の味に深みがあって美味しくて感動したのを覚えている。みかんジュースもあった。


食器を下げに来た仲居さんに2日間のお礼を伝え、また道後に宿泊する際には必ず利用しますと約束した。
今日はどちらへ行かれるのかと聞かれたので、にこぶちと四国カルストへ行ってから帰りますと言うと、行動力があって素晴らしいと驚いていた。

にこ淵は高知県の端にあり、この旅館からは車で2時間弱かかる。
私は自分が行きたい場所に行くための運転なら3時間でも4時間でも苦にならないタイプだけれど、度々人に驚かれる。


車のキーを受け取り、貴族気分を味わった城に別れを告げ目的地へと車を走らせた。

少し早めに出たけれど、朝の通勤時間ともろ被りしてしまい2時間弱で到着するところ、3時間弱かかった。途中休憩を挟みながらなんとか辿り着いたけれど、苦労した上で見る絶景はより一層輝いて見えた。

にこ淵というのは、仁淀によど川から流れる支流による滝壺である。
仁淀ブルーという言葉がSNS中心に流行るほど、青く神秘的な川があり近年人気の観光スポットとなっているらしい。
その中でもにこ淵は一際壮麗さを感じられる場所で、どうしても訪れたかった。
私のカメラセンスのなさで魅力を半減させてしまっているかもしれないけれど、このnoteのカバーがにこ淵です。

大きな無料駐車場が2つあり、訪れる人の多さを窺わせた。
晴れが続いていたので水面が濁ることも無く、澄んだブルーを眺めながら一休みした。
1つ残っていた道後ぷりんをここでおやつに食べた。


その後、最終目的地の四国カルストへと向かった。
愛媛県と高知県に跨るようにして広がるカルスト台地。白い石灰岩や草原が続き、日本のスイスとも呼ばれるこの土地は、日本3大カルスト(ほか2つは福岡の平尾台、山口県の秋吉台)の中では最も標高が高く1500m近くある。

そして春から秋にかけて牛が放牧され牧歌的な風景を見渡すことが出来る。
この時期に酪農家から牛を預かり、自然の中で肥えた牛を冬にかえすのだそう。
牛が見たくて訪れたのに、私が来るのは1週間ほど早かったらしく乳牛が1頭も居なかった。
でも牛はいなかったけれど、ずっと奥まで続く四国連山の眺望はその悔しさを吹き飛ばしてくれた。
雲に手が届きそうなほど空が近い。
壮大なパノラマに自分の悩みの小ささを思い知らされた。

しばらく続くカルスト風景を眺めドライブルートを走りつつ山を下っていった。

レンタカーを返却し、何事もなく終えたことに安堵する。
余裕を持って空港に着き、飛行機までは時間があったので食べ損ねた宇和島鯛めしを食べた。
鯛のお刺身が大きくてぷりぷりで新鮮で、卵黄を加えたタレと共に口に運ぶとこの上ない幸福感に包まれた。
元々好きだった鯛が大好きになった瞬間だった。


日本全国1周にはまだあと半分ほど残っているけど、主要観光地に訪れているとそれだけで人との会話のネタになり口下手な自分には救いになっていたりする。
外国人が日本語で話しているとそれがたとえ拙くとも嬉しく感じるように、自分の出身地に訪れたことがある人間というのは不思議と好意的に受け止めてしまうものなのかもしれない。
だから、私はこれからも国内旅行を続ける。全国どの出身のひとともその故郷の話がしたいから。あわよくば自身の幼少期を語ってもらいたいから。






おわり





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