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衛星コンステレーションでビジネスをするということ(第4回)

こんにちは、アクセルスペースCSO(最高戦略責任者)の太田です。

第3回目では静止軌道での事業/サービスから見たときの特徴についてお話をしました。今回は地球周回軌道のうち、太陽同期軌道の特徴と事業性について少し詳しく見ていきたいと思います。

太陽同期軌道とは簡単に言えば太陽光の角度がほぼ一定になるように、赤道上空の通過時刻(地方時刻)がほぼ同一になるような軌道です。低軌道衛星であれば衛星が地球の周りを一周するのにおおよそ90分かかりますが、90分の間に地球も1.5時間/24時間分の自転をします。例えばインド上空を現地時刻11:00に通過した場合、1周回った後に衛星は中東の南のインド洋にいますが、この時の地方時刻が11:00になるような軌道です(図参照)。この軌道は地上に当たる太陽光の角度が(季節変動を除き)ほぼ一定になるため、リモートセンシング衛星でよく使われる軌道になります。

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参照元: NASA, Catalog of Earth Satellite Orbits
https://earthobservatory.nasa.gov/features/OrbitsCatalog


この太陽同期軌道に打ち上げられる衛星はおおよそ高度400-600kmのところに行くことが多いです。この位の高度であれば軌道上の寿命としても少なくとも3~5年程度は持つ(高度が低いと寿命が短くなります)ことに加え、地球の磁場に守られているため放射線強度の強いバンアレン帯の下になり、そこまで放射線が強くないという特徴があります。アクセルスペースの衛星が打ち上げられているのもこの軌道になります。

この軌道を前提にした場合、大型ロケットで大きな地球観測衛星を打ち上げようと思うと搭載能力(スペース・重量)に余裕ができます。その余裕をセカンダリーペイロード(相乗り枠)としてロケット各社が販売することが行われています。また最近では小型衛星が増えたことにより、メインペイロード(主衛星)にあたる衛星がないクラスターローンチと呼ばれる相乗り衛星のみで構成された打ち上げ枠も出てきました。SpaceXはこの太陽同期軌道の金額を公開していますが、200kg以下までは衛星1機あたり$1.1Mとロケットを丸々買うことと比較すればぐっと安くなります。また先述した中村CEOのNote記事の通り、小型衛星であれば開発・製造費用も安価に済むため、衛星1機当たりの事業費は静止衛星と比較して2桁近く安くなります。

ただし静止衛星のように常時サービスを行うようなことが難しいため、それなりに高頻度なサービスを提供しようとすると複数の衛星を打ち上げ、コンステレーションを構築する必要があります。例えば我々のAxelGlobeでは現在5機の衛星で2-3日に1回の撮影・9機体制にすることにより世界中どこでも1日1回、決められた時刻の定期撮影を行うことができるようになります。複数の衛星を作って打ち上げるのはそう簡単なことではありませんが、それでも静止衛星の事業規模と比較すると相対的に安価にスタートできることがわかるのではないでしょうか。加えて、この1日1回という頻度を1日2回にしようとした場合、別の時刻の太陽同期軌道にもう9機打ち上げることで実現することができます。つまり全世界にサービスを提供しつつ、その品質(定点観測する頻度)を後から向上させることができるのです。

では太陽同期軌道ではない周回衛星は?今日はちょっと長くなってしまったので、続きはまた次回にしたいと思います。


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