衛星コンステレーションでビジネスをするということ(第3回)

こんにちは、アクセルスペースCSO(最高戦略責任者)の太田です。
第2回目では軌道の特徴ごとに事業/サービスから見たときの特徴についてお話をしました。ここからは軌道別の3回に分けて、軌道の特徴と事業性について少し詳しく見ていきたいと思います。
まず今回は静止軌道です。静止軌道はどこか特定の地域に対し、常時接続が可能なサービスを行うことを得意としています。このため民間では衛星放送などの通信・放送の分野でよく使われていますし、常時観測が可能ということで「ひまわり」のような気象衛星も静止軌道に置かれます。常時サービスの提供が可能なのは非常にわかりやすく、またサービス提供地域もある程度限られるため、事業が上手くいったときの拡張性の議論も比較的行いやすいです(もちろん実際は許認可の関係からそんなに単純ではないのですが・・・)
しかし静止軌道は地表から3万6千キロという非常に遠く離れたところにあるため、大きく2つの困難があります。まず1つは非常に遠い所に位置するために、データを速い速度で伝送しようと思うと、どうしても必要な電力が増え、結果として衛星もとても大きくなってしまいます。これは第2回の中村CEOのNoteでも触れられたように、開発費・建造費が高くなるということを意味します。例えば気象衛星の「ひまわり8号・9号」は開発費を含めますが2機の衛星製造で340億円(打上・地上整備は別)と公表されています。金額の規模としてとても大きいことがわかります。
そしてもう1つは打ち上げ費です。衛星が大きく又遠くに運ぶことになるため、静止衛星は小型ロケットでは打ち上げることができず、通常大型ロケットそのものを調達(購入)して打ち上げます。簡単に想像できる通り、ロケットは安いものではありません。安いといわれるFalcon9でもロケット1本を買うと67百万米ドルもします。
これらを足し合わせた単純計算でかなりの資金がが事業を構築するための初期費用として必要であることがわかります。当然これに加えて事業を運営するための販売費・管理費が必要になってきます。日本でもスカパーJSATなどが静止衛星を使った事業を行っていますが、事業規模の大きさ・ダイナミックさがわかるのではないかと思います。
(近年小型静止衛星という単語も出始めていますが、それはまた別の機会に)

では太陽同期軌道は?こちらは次回解説したいと思います。

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