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"新王凱旋"J1第13節 鹿島(H)vs札幌(A)マッチレビュー

 前節アウェイ広島戦を0-3で敗戦した鹿島アントラーズ。いまだ首位はキープできてはいるものの、すぐ後ろには川崎が追随しています。今節対戦する札幌もまた堅守がウリのチームで、現在5試合連続クリーンシート。9位と順位に開きはあるものの、油断できない相手となりました。

前節から約1週間が空き、ピトゥカが先発に復帰。定位置奪回に向け、順調に頭角を表し始めていた松村優太がトレーニングで負傷離脱してしまったのは残念です。

○前半

”縦パスを潰す”鹿島の守備テーマ

 良い守備が良い攻撃を生み出す、その言葉を体現したのがこと前半における鹿島だったと思う。基準点型のCFが不在の札幌にあって、彼らの攻撃はほぼすべてが足下やスペースへの縦パスから始まった。

とにかく出足鋭くインターセプトを狙い、奪えば即カウンターへ。前線でのプレッシングから相手の出しどころに圧力をかけ続け、相手のパス精度を削る。札幌はビルドアップ時に大きく配置を転換するため中盤中央は手薄になり、カウンターに持ち込むには十分なスペースが生じていた。開始5分で中盤カイキのインターセプトから決定機に持ち込めたシーンを皮切りに、この試合多くのカウンターからチャンスを迎えることができた。

 対する札幌も福森、高嶺のロングパスで鹿島プレスを剥がそうと画策。特に10分ごろにあった、高嶺→田中へのサイドチェンジなどは通ればプレスをひっくり返すだけの価値あるプレー。タッチライン際まで開いた田中へのロングパスから起点を作られると鹿島は厳しい状況に持ち込まれた可能性が高かったものの、サポートのルーカスはじめ手厚い支援があったわけではなかったのが幸いだった。

2度のスルーパスで得点を生み出したピトゥカの左足

 6分、相手のロングパスを拾った常本がヘッドでピトゥカで落とし、即前方の綺世(ないしカイキ)へスルーパス。綺世がこれを冷静に決め、幸先よく先制点を奪えることができた。25分には、自らプレスを剥がしたピトゥカが抜け出したカイキへスルーパスを決めPK誘発。これを優磨が紆余曲折ありつつも決め2点差へ突き放した。復帰後初の先発で、見事なロングスルーパスを送ったディエゴ・ピトゥカは素晴らしい!守備でも体を張って、潰しも効いていたしね!

 とにかく札幌の縦パスを地上・空中問わず潰しが効いた鹿島が試合を優位に進めた前半。「奪われた時のリスク<パスが通った時のメリット」を取るミシャ・ペトロヴィッチの哲学も影響があったと思う。自陣守備をセットした状態で、奪われても苦しくない状態から攻撃をするわけではない。とにかく攻めの美学を貫いたがゆえの失点だったか。

44分には中盤の要である高嶺が負傷し、岡村大八に交代。前半ATにはまたもカイキの抜け出しから優磨が3点目を奪い、大量リードで試合を折り返した。練習中の衝突が話題を攫っていたカイキと優磨のダンスを観て、あぁやっぱ鹿島はこうじゃなくちゃな、と感慨深く思いましたわ。

○後半

札幌、反撃開始

 ハーフタイムでミシャ監督は2枚交代を決断。CB宮澤に代えアタッカーの青木を、FWシャビエルに代えトゥチッチを投入した。青木は左シャドーに入り、駒井が1列下がる形へ。最前線のシャビエルは縦パスを狙われていただけになかなか貢献が難しかったものの、長身FWミラン・トゥチッチはフィジカルコンタクトも厭わないハードなスタイル。敵陣での攻撃時間を増やすためにも、体を張っていた。

反撃を試みた札幌ではあったが、後半立ち上がりからハイボールのこぼれを上田綺世に拾われあわや追加点を奪われそうに。48分には鹿島が右サイドで得たFKから追加点が生まれ、カイキのドンピシャヘッドで4-0と更に試合を優位に進めた。樋口のセットプレーは可能性しか感じねえな・・・

 とはいえ、さすがに消耗の激しい守備がゆえにアントラーズの出足に鈍さも出てきた。制していたはずの球際でボールがこぼれるシーンも増え、前掛かり気味だったプレスの裏をかかれて強襲されはじめてしまった。金子拓郎の推進力が活き始めたことで札幌は攻勢の足掛かりを見つけていく。

交代策が活きなかったレネ監督の采配

 最前線でプレスの先陣を切り、プレスバックで自陣での守備にも貢献していた鈴木優磨をはじめ消耗が目立ち始めた鹿島。59分にレネ監督は3人同時交代に踏み切り、関川(→ミンテ)、樋口(→中村)、上田(→アラーノ)とセンターラインを交代した。

 残念ながらこの交代は功を奏しなかった。全体的にプレー強度が落ちてしまい、フレッシュな選手を活かすには至らず。一時的に優磨とピトゥカの2トップを試すなど試行錯誤したものの、最適解はわからなかった。中村亮太郎が特に苦戦していたようで、マーカーに対して寄せきれず潰せなかったシーンが目立つ。奪えば即カウンターの方針も継続したので、彼の持ち味である捌きや組み立ての局面が少なかったのも、彼自身からすれば難しい状況だったのかもしれない。

74分~広島エッセンスを交えた3-5-2が猛威を奮う

 69分に菅が右足を振り抜きゴラッソを叩きこむと攻勢が加速。鹿島もカウンターでこそチャンスを作るものの、全体的には札幌の押せ押せムード。90分高いインテンシティを保つことの難しさは感じる内容だったと思う。ここをやり切るのを目指すのか、それともリードをとったあとコントロールを目指すのかはレネ監督の色が大きく影響しそうだ。

 74分、ミシャ監督率いる札幌はシステム変更。FW中村大嘉を入れ2トップ化し、先日の広島のような3-5-2へシフト。試合後のはミシャ監督自身、広島戦をヒントにしたと仰られていたので意識したのだろう。純粋にフィニッシャーが増加、それもフィジカル自慢の2トップとあって最大火力もup。鹿島としては選手交代によるコントロールに失敗したので耐える状況となった。

結果として、菅のゴラッソのみに失点を抑えられたのはラッキーでしかたなかったと思う。青木にも何度か決定機があり、岡村のCKヘッドも脅威的。札幌の攻撃力を正面から受けきるにはあまりにきつかったか。終盤にはイージーなミスも散見したし、スカッド全体の完成度はまだまだこれからなのかもしれない。

次戦、ルヴァンG大阪戦へ

 快勝は飾ったものの、選手交代による戦力維持ないしプラン継続に課題を残した内容だった。ここは伸びしろと捉えるべきだろうし、若手の多いスカッドならではの悩みだとは思う。仲間や荒木、エヴェラウドといった負傷者の存在も大きいか。

ここからは連戦が始まり、ミッドウィーク18日にはルヴァン戦。流石にここで先発交代なしは考えにくいものの、後半の出来を考えたら大幅に変えるかも微妙なライン。まぁ変えるか、ルヴァンもグループ首位やし。

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