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"寸先"J1第36節 鹿島(H)vs大分(A)マッチレビュー

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鹿島 0 ー 0 大分

 代表ウィークを挟んだことでリーグ戦終盤にも束の間の休息。鹿島は上田綺世がA代表に選出されるも残念ながら出場はなし。トレーニングや試合出場に支障はないものの、コンディションという面では多少不安が残ってしまいました。それもあってか、エヴェラウドが8月神戸戦以来の先発。今季リーグ戦1ゴールのみと不振にあえぐ昨季のエースは、今節ポストプレイヤーとして大きな貢献を果たしました。

 鹿島はACL出場権内まで勝ち点5差。可能性を繋ぐためにも勝ち点3が必要ですし、降格争い真っただ中の大分としても勝利は絶対。シビアでタフなゲームになる条件は揃っていましたし、実際その通りになりました。

自陣で受ける大分、差し込む鹿島

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 立ち上がりこそ鹿島陣に押し込まれあわや決定機のシーンを作られるも、その後のカウンターで挽回成功。徐々に鹿島がボールを握る時間が増えていき、”鹿島が攻めて大分が受ける”構図が出来上がっていった。

大分は得点よりもまずは無失点、という点に重きを置いてきたのだろう。自陣深くに5-4-1ブロックを敷き、後方のスペースを消して常に前向きに対応しようとしていた。鹿島CBがかなり自由にボールが持てたものの、密集地帯にボールを送らなければならないような状況。関川、町田とフィードには自信のある2人だったので良いボールが送ることができたものの、彼らが「どこへ送るか」が攻撃において重要な役割を果たしていたと思う。

関川・町田は前半こそ外回りのパスが目立ったものの、徐々にハーフスペースや最前線エヴェラウドに縦パスを差し込むシーンも増加。エヴェラウドは常にマーカーとしてペレイラを背負っていたものの、マッチアップを制して時間を作ってくてもいたので非常に助かった。というか、エヴェラウドはマジで今季リーグ戦ベストに近いくらいパフォーマンスは良かったと思う。欲をかかず、常にフォアザチームで振舞って役割を全うしようとしてくれたし、やってほしい仕事は全部してくれたようにさえ思える。

前でハメれば怖くない大分のビルドアップ

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 大分は自陣でのボール保持に回るとシステムチェンジ。ボランチ小林が外に開いて4バックを形成し、下田アンカー体制へ。エヴェラウドと土居により三竿or小林にボールを持たせ、周囲を囲んでボール奪取を鹿島は狙いに行く。シャドーの渡邉、町田をいかに巧く使って前進していくかが大分ビルドアップの大きな分岐点であり、ここさえ通せれば一気に敵陣へ。逆に詰まらされてばショートカウンターを受けてしまった。

呉屋のダイアゴナルランでSB裏のスペースを強襲するシーンもあり、まさにその展開からチャンスを呼び込むことも。ただ呉屋も起点作りにフィニッシャー担当とタスクは多くあくまでオプションの選択肢だったか。関川・町田もよく集中して彼のマークを徹底できていた気もする。大分はいかにシャドーを使って鹿島SBを引き出しつつ、CBを晒して前進するかが肝だったようにも。

 とはいえ、大分も鹿島陣内へと駒を進めれば怖さはあった。特に町田(也)はスペースを見つけては細かく動き、相手の出足を躱すボールタッチで受け手・出し手どちらにも成り得た。タッチライン際に開いたWBに対して鹿島SBが付くシチュエーションを生み出せれば、シャドーが内側からSB-CB間に割って走り込んでニアゾーンへ。36分常本のあわやPK献上のシーン等、自陣で突破を許したシーンは少なくなかった。PK判定で先制点を与えていたら、試合は更に困難なものになっていたはずだ。

滅私奉公のエヴェラウドに何を思う?

 正直、私は今季のエヴェラウドに多くの期待をしていなかった。するべきてない、とさえ思っていた時期もあった。リーグ戦では鳴かず飛ばず、自慢のパワーが空回りすることの方が多かった今季。カップ戦ではいくつか点を決められたが、それはカテゴリーも下の相手ばかり。短い時間ながらリーグ戦に出場しても、フラストレーションをピッチ上で滲ませるばかりで自分を見失っていたようにも思えていた。

ただ、すくなくとも今日のエヴェラウドは違った。肉弾戦上等は言わずもがな、淡泊なプレーに終始せず役割を全うすることに徹していた。欲を出さずに味方へボールを捌き、相手を背負い、オフザボールでも献身的な姿があった。結果として得点という形で期待には応えられなかったが、今季の不振ぶりを鑑みればかなり上々の出来だったと思う。それくらい今季の印象がよくなかった、とも言えるのだが。

上質なパス、上質なポスト、そこに上質なフィニッシュが乗ってくれば得点は時間の問題。フィニッシュの質はまだまだチーム全体で上げていく必要があるだろうが、エヴェラウドがいることで綺世以上にポストプレーで計算が立つ。今日だけの出来で言えば、来季もエヴェには鹿島でのプレーを望みたい、そう思わずにはいられなかった。

結局、終盤にかけて非常に多くの決定機を鹿島は迎えながらゴールをこじ開けることはできなかった。勿論最後まで体を張り、集中を切らさなかった大分守備陣も称賛に値する。片野坂監督が交代の決断を渋った(ように思えた)のも、それだけ大分というチームが薄氷の上でギリギリの戦いをしていたからだろう。

町田が脳震盪の疑いで交代を余儀なくされポストプレーでの得点期待度が落ちたこと、どこか体の重そうな綺世に頼らざるを得なくなったことなど火力不足の要素はいくつかあったものの...こんなに1点が遠く感じるとは。さようなら、ACL...。

次節、サガン鳥栖戦へ

 タイトル奪取も出来ず、ACL出場権獲得も叶わず。残り2試合のリーグ戦をどう戦うかは気になるところだが、相手は7位サガン鳥栖に降格決定の仙台。インテンシティの高い試合になるかと言われると・・・。

来季を見据えて~と先発の大幅刷新をするかな!?とも期待したいけれど相馬監督はそういうタイプじゃなさげ。ACL権もなくなった事で選手やスタッフとの契約に影響も出てきそうではあるし、急激に監督の新候補が出てきたりする可能性もある。相馬さんが責任取って急に辞任、なんてことがあったりしてね。


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