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"フルインパクト"J1第11節 鹿島(H)vs磐田(A)マッチレビュー

鹿島 3 ー 1 磐田

 前節セレッソ戦を勝利し、首位浮上中の鹿島アントラーズ。悪天候を逆手に取ったアウェイでの勝利を手にホームへ凱旋します。

出場停止処分を受けていたディエゴ・ピトゥカが戦列に復帰。これが一番のニュースでしょう。本人も反省を踏まえ、また新たな面持ちでクラブに貢献してくれることを願います。彼不在の中、樋口と和泉が奮闘してくれたとはいえシーズンはまだ序盤。ピトゥカの力は必ず必要となるはずです。

 対するジュビロ磐田は現在12位につけ、J1昇格初年度、無念の指揮官交代などを経ながらも中位から上位進出への足掛かりを模索中。鹿島はここ最近3バック(5バック)の攻略に手間取りがちなので、どう攻め立てていくのかは見どころ。名古屋戦のような、力勝負の腕相撲だけは避けたいところです。

○前半

鹿島が付け入ったライン間の隙間

 前半の立ち上がりから鹿島がボールの主導権を確保。ジュビロ磐田は
攻撃時:3-4-2-1(スタメンの並び)
守備時:5-4-1(大森と松本がボランチ脇まで下がる)

といった攻守における可変システムを採用。とにかく失点せず、手堅くサッカーを展開する様子が見て取れた。

 それに対して鹿島は、従来のロングボール→セカンド回収による攻略はやめて地上進軍ルートを主に選択。相手が人数有利のエリアにイーブンボールを送り込むようなことはせず、落ち着いて後方からのビルドアップに集中した。

ジュビロが5-4-1で後ろ重心だったこともあり、前線のプレスはあってないようなもの。ボランチの遠藤・上原が時折ポジションを上げてパスコースを塞ぐ動きこそみせるものの、前線で奪い取る気配はなかった。そのため、関川と三竿、アンカー位置の樋口はかなりフリーで捌きに徹することに成功。彼らか出される縦パス、サイドチェンジは抜群の威力を発揮できた。

後方から通される縦パスの受け手は主に和泉と優磨。特にこの試合においては優磨がいつも通りのフリーマンとして左右・中央問わずに幅広くカバーリング。ボランチの背後や3CBの脇など、バイタルエリアで受けて起点作りに大きく貢献した。ジュビロのカウンターに突破されかけるシーンこそあったものの、全体的な出来では鹿島が圧倒できていたように思える。

幸先よく鹿島がセットプレーでリード

 何度か訪れた決定機を決められずもどかしい時間が前半から続いたものの、29分にとうとう鹿島がCKから先制。ゾーンとマンマークの併用で守るジュビロだったが、ニアに走りこんだ綺世・優磨・関川に気を取られたかファーのカイキがドンピシャヘッド。CB伊藤の頭上から叩いたヘッドから待望の先制点を生み出した。

無失点がおそらくプランのベースだったに違いないジュビロも前からのプレスをハメようとするも、そのバランス維持に苦心。WBを押し上げれば、彼らの空けたレーンめがけロングボールが打ち込まれる。遠藤と上原が中央から迎撃すれば、優磨や和泉への縦パスコースがさらに広がっていた。もちろん球際の攻防まで持ち込めたシーンはあったのだが、その鍔競り合いを制した鹿島選手らのインテンシティは見事だったと思う。大観客のホームによる後押しもあったことでしょうよ!!

抜け出しを警戒していたはずのジュビロだったが・・・

 35分、樋口からの縦パスを受けた優磨がターンし2タッチでスルーパス。見事なラインブレイク(久しぶり)で抜け出した綺世が左足でシュートを突き刺して追加点GET。

磐田の陣形はおよそ縦30mほどの深さにコントロールされていた。コンパクトな陣形を保って間受けする鹿島の選手を掴まえやすくする狙いもあったのだろう。上田綺世の裏への抜け出しはかなり警戒しており、鹿島CB(特に関川)がボールを受け、ロングボールを蹴るモーションに入った瞬間には綺世のマーカーである伊藤が後方に迷いなくスプリントをかけていた。

DFラインを押し上げるなら、その背後への抜け出しには最大級の警戒をするのは定石。とはいえ、その裏警戒の意識が前方への出足の枷になった可能性もある。左右CBの山本義、グラサは中央付近の綺世、さらに鹿島SHの飛び出しを非常に警戒していた為か積極的には迎撃に出ていなかった。3CBはフラットな立ち位置維持に努めていたような感じ。

そのため追加点のシーンでは、迎撃に出れずに優磨に反転を許し、結果としてスルーパスを通されて最も警戒していたはずの裏抜けを成功させてしまった。ここらへんも、ジュビロ磐田としては誤算だったのだと思う。

○後半

やられっぱなしじゃ終われないジュビロ、反撃

 満点に近い内容で前半を終えたアントラーズだったものの、後半はジュビロ磐田が反撃開始。伊藤彰監督はハーフタイムで2枚交代を指示し、システムも3-5-2をベースに再構築した。2トップに交代投入されたファビアン・ゴンザレスと大津祐樹を据え、前線からのプレッシングと中央の密度をより向上されていく。外を使わせようと、中は使わせないソリッドな戦い方にシフトした。

 鹿島が後半ゲームの主導権を相手に渡してしまった大きな要因の1つに、前半終了間際から行った意図的なペースダウンがあったと思う。2点リードを奪えた時点でリスクをかけて攻め入る必要はなくなり、ゲームをコントロールする方向へと舵を取った。その選択自体は合理的だし、連戦が控えている以上は当然かもしれない。

後半も入りから”落ち着いて戦う”ことを意図していたことは間違いなく、試合の流れをギャンブル性のないクローズドな展開に持ち込むことを意識していただろう。そこに、リスクを冒してでも前に出てくるジュビロ磐田に付け入られた印象は拭えない。悪い意味でも落ち着いてしまった、とも言えるだろうか。

 鹿島は徐々に押し込まれ始めながらも、53分には綺世が抜け出してシュートチャンスに持ち込めた。ジュビロからすれば後方を手薄にした以上失点のリスクは免れらないが、それ以上に欲しいのは得点なので許容範囲か。いずれにせよ、ゲームの流れはジュビロ磐田に傾きはじめ、磐田を振り回していたはずの鹿島は、いつの間にか振り回され始めた。

”こんなはずじゃない”状況が鹿島を少しづつ狂わせた

 押し込まれる時間帯が続いたこと、更にファビアン・ゴンザレスが中央で、大津が左サイドに流れて存在感を発揮したことで鹿島はCBそれぞれが迎撃に出るシーンが増加。関川と三竿らが積極的なカバーリングでピンチの芽を詰められれば無問題だが、潰せなければ致命傷と成り得るプレーが起こり始めた。リスク管理を徹底したいはずが、リスクを孕んだ対応をせざるを得ない状況に陥ってしまったことはこの試合の大きな反省点に思える。

ていうかファビアン・ゴンザレスのパワーたるや。なんか佇まいといいオルンガを思い出し(ウッ 

ゲームに水を差した綺世の”フル・インパクト”

 71分にCKからとうとうファビアンにヘッドを決められ鹿島が失点。劣勢に追い込まれ修正もままならずリズムを崩した鹿島に対し、ふいなショートコーナーで更に責め立てた遠藤保仁の判断も流石か。ガツンとエリア内の競り合いで対応できていたはずの関川がボールを見送ると、ファーサイドで虎視眈々と狙っていたファビアン・ゴンザレスに押し込まれた。

ぶっちゃけた話、後半立ち上がりからの状況を考えると同点も十分あり得る状況に思えた。徐々に静まる鹿島側の手拍子、逆に強まる磐田の太鼓と手拍子の音がいまでも耳に残っている。「やばいかも・・・」と思った矢先の78分に、上田綺世がゲームに水を差してくれた。今日の理不尽の時間です。

カイキから敵陣PAエリア手前でボールを受けた綺世が反転。左に持ち出すと逆足を振り抜いてニア上ズドン。ゴ・・・ゴラッソ・・・・

2点リードと再び突き放した鹿島はその後も多くのピンチを迎えるもののなんとか塞いで試合終了。終盤大事な時間帯で安易なロストをしてしまった染野は反省です。飄々とプレーするのが彼のいいところなんだけどもね。あと話題になった関川のタックルは、ファウルと判断されなくて本当によかったなと。結果的に起死回生のタックルになったのでよかろうもん。ただ、あれでレッドなんてことがあったらと思うとゾっとする。

次節、アウェイ広島戦へ

 首位の座をガッツリ掴むことに成功。2位川崎との勝ち点差を5にまで伸ばし、週末にアウェイ広島戦を迎えるアントラーズ。疲労を考えたらフル出場したカイキはお休みorベンチスタートかな?(樋口は涼しい顔してたぶんフルタイムするでしょう)

ピトゥカも戻ってきたことで選手層は厚みを感じる状態。仲間隼人も復帰に向けてピッチには戻ってきているらしいので、「仲間隼人が途中から入ってくるとギアが一段階上がる(優磨談)」という男を待ちわびるばかりだ。

・・・荒木と土居がプレゼンス上げていくことも、タイトル獲るためには絶対必要よね。



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