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”新生”J1第1節 鹿島(A)vsG大阪(H)マッチレビュー

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鹿島 3 - 1 ガンバ大阪

 待ちに待った新シーズンが開幕します!先日行われたPSM水戸戦では初めて敗戦を喫してしまったものの、新戦力の樋口をはじめ選手らには躍動感がありました。水戸戦を現地観戦した感想としては「全体的なプレー強度不足」が印象として残っています。特に守備面ではアグレッシブさが足りていませんでした(天候の影響も多少あったとは思いますが)。

 入国制限の影響により未だレネ・ヴァイラー監督はじめ新コーチなどの合流が遅れている中、岩政コーチが代行監督として初の公式戦采配。「プレッシャーは感じている」と試合前に話していましたが、彼の強い責任感は選手へも良い形で伝わっていることでしょう。対するガンバ大阪も新監督・片野坂知宏氏を大分から招聘。昨季天皇杯決勝での激闘は見事でしたし、後半からゲームを立て直した手腕は本物。かつて選手として、コーチとして酸いも甘いも経験したクラブOBの帰還は大きな意味をもつことでしょう!

鹿島は空中戦で、ガンバは地上戦で色が出る

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 立ち上がりから両軍が決定機を迎える。3分に荒木にチャンスが訪れれば、8分にパトリックがヘディングであわやゴールといった場面を作る。鹿島は立ち上がりからシンプルに蹴っ飛ばすシーンがあったものの、ただ蹴るだけでなくボールの拾い方にも落とし込みがあった。上田綺世、鈴木優磨らが後方からのロングボールを競って手前に落とすと、SHがその位置に走り込んで回収→前進という手順がかなり整理されていた。特に優磨はPSM水戸戦でもハイボールに対して相手DFを抑え込み胸でボールを落とすといった強靭なフィジカルと技術を見せていたのでおあつらえ向きだ。

 ガンバ大阪はというと、片野坂イズムを遺憾なく発揮するビルドアップから縦の突破を目指すポゼッションスタイル。昨季のガンバとは全く違った印象だ。パトリックのフィジカルを活かしたキープから溜めを作らせつつ、後方では簡単にボールを捨てない戦術を行うことで試合を優位に進める時間帯を明らかに増やしていたと思う。ミスもあったが、そこは伸びしろと捉えるべきだろう。

立ち位置変更が鹿島両翼のカギ?

 2トップにストライカーを置くことで懸念なのが荒木の起用位置問題。これまでザーゴ、相馬元指揮官らも荒木をSHで使ったことはあったが、大外で純粋なサイドアタッカーとしてなら荒木は正直怖い存在でない。この日、荒木は左SHとしてスタートこそしたものの、その立ち位置や役割を考えればSHとしてよりも2トップ背後がメインの戦場となった。「荒木が内レーン、安西が外レーン」とお互い得意なエリアで仕事を全うし、荒木のストロングポイントが最も出るバイタルエリアでの貢献を担保。反面、安西は左サイドでアイソレーション気味になるため守備強度は懸念。その懸念に対する答えが「迅速なカウンタープレス」で即時奪回を目指すこと。2トップ含め全員がアグレッシブなプレスを行うことで、この布陣のバランスを保とうとしていた。

カウンターで一閃、鹿島の先制から乱打戦へ

 20分、相手のロングボールを拾った関川がピトゥカに落とし、すぐさま前線で抜け出した綺世へスルーパス。腰をぶん回して放ったシュートはゴール対角に突き刺さり、開幕を告げるにはもってこいの強烈な先制点を奪った。

26分にはガンバ大阪も反撃。CKのこぼれ球を小野瀬がエリア手前から振り抜き同点弾。見事な弾道を描いたシュートにはスンテも反応できなかった。追いつかれた鹿島はなお突き放そうとペースを下げることはなく積極的に迎撃。ボール保持により主導権を握ろうとするガンバを揺さぶり続け、30分相手のミスを誘い鈴木優磨が勝ち越し弾GET。10分間で3点が生まれた両軍の試合はこの後もお互い決定機を作り続ける乱打戦となっていった。

試合を変えてしまった、パトリック退場

 37分、試合が思いもよらぬ形で大きく動く。カウンターのチャンスでボールをキープしたパトリックに対し、優磨が後ろからスライディングでチャレンジ。ボールに触れずに相手の足を刈り取る形となってファウルになったのだが、このプレーに対してパトリックを肘を振ってしまい一発退場。倒れた際に優磨がパトリックの足を掴んで妨害しており、それを振りほどこうとしたのだろう。が、あまりに印象が悪かったか____

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乱打戦の中数的不利に陥り、前線で時間を作れるポストプレイヤー兼エースを失ってしまってはゲームは全く異なるもの。片野坂監督はシステムを3-4-3から4-4-1に代え前半を凌ぎ、反撃の糸口を見つけることとなった。鹿島は手を緩めず37分、44分と土居が続けて決定機を迎えたが押し込めれず。GK石川が本当にこの日素晴らしいセーブを連発し、ガンバを支え続けた。

後半開始と共に片野坂監督は勝負に出る

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 ハーフタイムで両軍選手交代が発生。反撃を狙うガンバ大阪は石毛に代えて山見をIN。この山見は攻守で積極的に走り続け、ゴール前でも存在感を発揮するなどまさに必要とされたタスクを全うしたように思える。リードして折り返せた鹿島だったが、前半で幾度かの接触により頭部を打っていた関川にアクシデント。前半の終了間際には足の違和感を訴えていた様子で、脳震盪の影響による交代となった(それにより鹿島は今節6人交代)。

 ガンバ大阪は中盤3枚+2トップで火力向上を目指したものの、やはり中盤3枚の消耗は著しそうに思えた。前半もバイタルエリアのケアはおろそかになりがちだったし、そこを起点に鹿島は攻撃を作り出せた。後半は中盤がより動く(動かされる)展開になったため、更にスペースのケアには人手が足りていない。そういったリスクを踏まえてでも、なんとか踏みとどまって反撃に転じるのだという不退転の決意もあったのだろうか。

 鹿島は抜群のトランジションから、特にネガティブトランジションが機能して試合を優位に進めていた。反面、ネガトラで潰し切れず相手のボール保持攻撃を4-4-2ラインで受け止める守備(ブロック守備)に関しては後手を踏んでいた印象。前に出て迎撃する意識が強いのは大いに結構だが、連動を発揮できずプレスを回避されひっくり返されるシーンも多発。水戸戦とはまた違った課題ではあるが、構えた状態からどう相手に対応するかは成熟させていきたい。岩政さんならある程度落とし込んでいけそうだけれどね。

輝きを見せたSB黒川の存在

 守備に追われる時間が多かったものの、ガンバ大阪左SBの黒川はハイパフォーマンスを見せた選手の1人。SBながら司令塔さながらの振る舞いで攻撃を牽引。高い位置までスルスルと攻めあがってきてはボールを引き出し、スペースに走り込んで味方を存分に活かして攻撃を組み立て。自身単独でゴリ押すタイプではないのだろうが、周りを活かしながら敵陣攻略をする様は現代的SBっぽさがある。ただ、彼が上がった後のトランジションで40~50m戻らされるのでマジでしんどかったはず・・・いつかその頑張りが報われる日がくるといいっすね・・・

やり繰り続く片野坂監督、反撃は届かず

 55分にレアンドロ・ペレイラを高尾に代えて交代し更に火力upを狙うガンバ。更には宇佐美と山見の位置を入れ替えて前線プレスもテコ入れ。あの手この手でなんとか試合をひっくり返そうとする片野坂監督は見事だ。実際に数的不利にも関わらずスペースを見つけては入り込み攻撃していく連動性には手を焼かされたし、主導権をガンバに握られた時間はあった。が、攻めれば攻めるほど消耗もしていたのは確かで、その疲労から生まれた一瞬の緩みが3失点目に繋がったのかもしれない。66分、ピトゥカの縦パスを受けた荒木が相手DFを背負いつつ反転し綺世の足下へパス。抜け出した綺世は難なくシュートを流し込み、勝負が決した。

見事な勝利。課題はブロック守備と決定力?

 3-1と快勝した鹿島は第1節を終えて首位に立った!!やったぜ。ここ数年の鹿島はスロースターターっぷりが目立っていたので何より何より。ただ、決定機の多さを考えたら3点は物足りない気も。勿論GK石川がビッグセーブを連発したのもある。仙台ストイシッチの時といい、出番を得た控えGKが出てくると苦戦するのは呪いなのか????

さらに懸念の1つなのが関川の負傷具合。たぶん大事には至ってないと思いたいが、今季鹿島がどれだけ戦えるかは彼の出来によるところも大きい。水戸戦では関川が右、ミンテが左CBを務めたが今節は逆。たぶん関川が左足で難なくフィードできているから?詳細は分からないけれども、負傷離脱だけは避けてくれ・・・( ;∀;)

 豊富なアタッカー陣を擁し、単純な火力だけならリーグ屈指だと思える鹿島。一刻も早く監督らとも合流し、成熟を図っていきたい。合流までにどれだけ勝ち点を拾えるか。

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