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”泥だらけの夜明け”J1第25節 鹿島(H)vs福岡(A)マッチレビュー

鹿島 2 ー 0 福岡

 レネ・ヴァイラーが監督の座を8月7日を以て退任。翌8日には岩政大樹新監督の就任がアナウンスされました。優勝を争う順位にまで食い込めていたものの、ここ5試合で勝ち星がなくマリノス・広島との上位対決で連敗。取材に応じた吉岡FDや岩政監督らの言葉からすると、フロント・監督間の価値観の違いであったり、一部選手との間にも確かな溝があったようでしたね。「色んなところが壊れている」という岩政先生の言葉にはちょっと驚きましたが、言葉を選ぶ彼だからこそ、その重みを感じます。退任の報を聞いた時には感情的になってしまいましたが、こんな状況で監督を引き受けてくれた岩政先生を応援することに何の迷いもありません。岩政監督はしきりに「みんなで(選手だけでなくサポーターも一緒に)進む」ということを強調しています。その心意気に応えてこそサポーターです。

 急転直下の初陣を迎えるにあたり、アントラーズは三竿が出場停止で欠場。新加入が決まっていたエレケも12日にチームへ合流しており、約1週間あった準備期間も「良い手応えがあった」と試合前インタビューで岩政監督は話しました。アビスパ福岡にはリーグの前回対戦では勝利したものの、ルヴァン杯では敗退においやられた因縁の相手です。

 対するアビスパ福岡はコロナ陽性者の続出により相当しんどい状況。直近のリーグ戦は延期し、ルヴァン杯ではベンチにFP1人だけといった状態で戦い抜きました(それに負けるヴィッセル兄貴の心境よ…)。今節は18人スカッドを揃えることができましたが、復帰直後の選手が大半なのも事実。コンディションにはかなり不安があったんではないでしょうか。

〇前半

レイオフで前進&サイドチェンジ強襲が岩政流?

 監督が変わったとて、メンバーがガラッと変わったわけではないアントラーズ。それでもレイオフを用いた前進はかなり意図的に狙っていたようにも。後方からの縦パス(あるいはハイボール)を落とす役、落とされたボールを前方スペースへ送りだす役、相手DFライン裏をスプリントで強襲する役。この3人の即興性がハマった時は特大のチャンスを呼び込めたし、再現性高く相手陣深くまでボールを運ぶことができた。縦パスの質も、ターゲット目掛けたハイボールに頼るわけではなく「足下へのクサビ」が最優先。コースが消されて蹴るしかないならタッチライン際めがけて蹴っ飛ばし、福岡DFに後ろ向きで対応させるようなボールを心掛けていた。いずれにせよ、不意のカウンターを食らうような攻撃のミスは最小限にとどめられていた。

 またビルドアップもかなり重要視(というか樋口&ピトゥカのゲームメイク路線再び)していて安定。ここは福岡が前線プレスをかけてこなかった事情も大きかったかもしれないが、樋口やピトゥカらが繰り出すサイドチェンジから空いた逆サイドを強襲するシーンは何度とあった。相手が寄ってきたら逆サイド、はむしろ鹿島がやられまくった攻め方だったところなのでちょっと泣きそう()。10分には樋口のサイドチェンジを常本が優磨に落とし、反転した優磨が切り込んでオウンゴール誘発。最高のスタートを切った。

 アビスパは開始10分ごろまではほとんど攻めの時間を作れず受けにまわってしまい苦しい立ち上がりを過ごす。それ以降はボールの送り先を鹿島SBの裏に設定し陣地回復からスタートすることで落ち着きを取り戻し、前線の外国籍4人中心の攻めにシフトすることができた。中でもやはりクルークスのクロス、そして中で待ち受けるジョンマリの怖さは一級品。手数自体は少なくとも、1つ1つのチャンスの質を高められるメンツが揃っていた。

先制されると更に苦しい福岡の台所事情

 正直、長谷部監督は先制されることだけは絶対に避けたかったはず。というのも、2トップ及び両SHにアタッカー色の強い外国籍選手を並べた時点で前線ハイプレスを仕掛けようなんて気はさらさらなかったはず。ベンチにいる選手も復帰したばかりであれば尚更消耗の激しい打ち合いはしたくないだろう。

実際に先制されたあとも、ボールロスト後のカウンタープレスに連動性はなくあくまで選手個々人の判断っぽい。鹿島の攻撃を前線や中盤で受け止めきれずにDFラインで耐え忍びボールを回収する時間が多かったので、1度押し込まれるとなかなか反撃に繋げられなかった。ボランチを組んだ城後は本職がFWだし、平塚はJ2からの新加入選手でリーグ初スタメン。こと守備に関しては安定性を重視せざるを得ないなと。ただ平塚はビルドアップの貢献度はめちゃくちゃ大きかった。広い視野、巧みなタッチは福岡のビルドアップを間違いなく支えていた。周囲との連携でもっと輝けるはずなので、個人的にちょっと期待してしまう選手に感じマシタ。

〇後半

陣形変更のアビスパ、とはいえ肝心の燃料が…

 ハーフタイムで長谷部監督は選手交代を決断。左SBを務めていた輪湖に代えて柳を起用し、5バックを採用。5-4-1でジョンマリを頂点に据え、鹿島がサイドチェンジで突いてきた大外レーンを埋めにかかる。鹿島の攻めを受ける形を整えて反撃開始!が狙いだったとは思うのだが、鹿島のとって悩みの種だったジョルディ・クルークスのプレー位置が右WBという前半より低く、より外になったことで怖さが薄まったかなと。クロスを送るにも中央とのレンジが広がったことで決定機に繋げるのは難しそうだった。大外レーンを埋める役も担っているので守備にも走らざるを得ず、消耗に繋がったとも思えた。

中央のジョンマリ、ルキアン、ファンマの火力は厄介だったものの選手間の距離が広がり攻撃自体は単調さが目立つアビスパ。というより、明らかに選手らは後半始まって割と早い時間から消耗が目立っていたし気力で戦っている印象すら。鹿島としては59分のカウンター、68分のカイキ決定機などいくつかゴールチャンスを作れていたので追加点を取れていれば大満足だったのだが・・・・

両軍疲れて交代合戦、耐えた鹿島にご褒美の追加点

 スコアが1-0のまま終盤に突入すると両指揮官ともに積極的に動き、72分には鹿島が3人、福岡が2人を交代した。鹿島はエヴェラウドと優磨の2トップに舩橋をトップ下、中村をアンカーにした中盤菱形にシフト。守備では舩橋が相手ボランチに食いつきビルドアップを阻害しつつ、攻撃では中村がジョンマリの背後のスペースを根城にビルドアップの安定化を担う。

福岡はFWファンマ→山岸、MFクルークス→田中とシンプルに火力向上を狙うチョイス。流石に鹿島も消耗して前線プレスは機能せず、福岡の攻めをなんとか受けて凌ぐ時間帯に入ってしまった。81分にはDF林を広瀬に代えて投入し、5バック化して凌ぎきる選択を下した岩政監督。ぶっちゃけこの3CBは急造なのは事実で、ライン統率のリーダー不在だし全員気負って迎撃しに出ていくしお見合いするしでヒヤッヒヤではありましたネ・・・・

88分、長谷部監督はボランチ平塚に代わりサイドアタッカーの北島を投入して更に火力マシマシ!にしたものの終ぞ攻撃は実らず。逆に鹿島は後半ATの自陣CKピンチを凌ぎカウンター発動。ピトゥカのスルーパスを受けて抜け出したエヴェラウドの放ったループシュートは1度村上に阻まれるものの、こぼれを押し込んで2-0。頑張った甲斐がありましたわ!!!!

次節、アウェイ湘南戦

 複数得点無失点という最高の結果を手に入れ、新たな船出を始めたアントラーズ。内容は勿論良い時間も悪い時間もあったものの、苦しい時でも組織として体を張り続けたことで得た結果だと思う。何はともあれ、久々の勝利に今は安堵しているし、岩政ボスに拍手を。男同士の熱い抱擁は何度だって観たいんじゃこちとら。

今節ピトゥカが警告を受けたので次戦出場停止。三竿が復帰するので、もしかしたら久しぶりに三竿がボランチ起用されるかもしんないっすね。ただ小川をベンチ入りさせたり、舩橋や中村も起用してきたので岩政監督がどうチョイスするのか気になるところ。行く先の結末は誰も知りませんが、少なくとも岩政監督と共に戦えるこの瞬間を楽しみたいっス!!







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