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”邀撃劣勢、のち反撃”J1第32節 鹿島(A)vs磐田(H)マッチレビュー


鹿島 3 ー 3 磐田

 ミッドウィークの天皇杯でまさかのジャイアントキリングを許し、ベスト4敗退が決まってしまった我らが鹿島アントラーズ。これで今季無冠も確定し、何度目かの「今季こそは」の願いが実らぬまま、またシーズンが終わろうとしています。試合後のあの静まり返った、なんともいえない雰囲気は今でも忘れられません。そしてその後に起こった、ゴール裏での衝突も。拍手と怒号が入り混じったあの光景は色々と感情に来るものがありました。

そこから中2日で迎えたアウェイ戦。岩政監督は流石にスタメンそのまま!とはいかずに6人交代。復帰直後の常本がスタメンに抜擢され、エレケも3試合ぶりに先発しています。スタメンもここ最近使っていた中盤ダイヤモンドの形ではなく、オーソドックスな4-4-2布陣。ジュビロ磐田がWBを使ったサイド攻撃を仕掛けてくる可能性が高かった以上、大外へのケア対策は必要だった判断でしょう。それでも苦しめられましたが()

 対するホーム、ジュビロ磐田は現在18位と残留争いの真っ最中。試合消化数が少ない為まだまだ残留の可能性があり、結果が伴っていない鹿島相手となればモチベーションは高かったはず。磐田は前節静岡ダービーが延期だったこともあり、公式戦は3週間ぶりとのこと。気合十分と。

 前回対戦では綺世の2ゴールなどもあって鹿島が3-1で勝利。綺世は2ゴールとも彼らしい得点だったのが印象的ですね(ウッ 涙が)

〇前半

大外展開からのニアゾーン強襲が磐田の攻め筋

 立ち上がりから両軍共にシュートチャンスを迎えるなど打ち合いの様相を呈した。鹿島はエレケが相手CBを引きずるように深さを取り、その手前に空いたスペースを優磨が使って前進の起点作り。今日のエレケはかなりコンディションもよさそうで、球際のバトルも力強くポストプレーも柔軟。決して手厚いサポートがあったとは言えなかったものの、充分最前線での役割は全うできていた印象だ。

4分、7分とジュビロ磐田に決定機が訪れ得点の匂いが漂い始める。磐田はアグレッシブに後方からでも選手が鹿島DFライン裏のスペースへ走りこんでくるうえ、ボランチから配球されるボールも正確。磐田の先制は時間の問題のようにも思えた。

 ところがぎっちょん。10分に鹿島が先制に成功。樋口のサイドチェンジから大外常本→ハーフスペースの仲間からPA内エレケへダイレクトパス。エレケが懐深く収めると、PA手前の樋口に落として弾丸ミドルが炸裂した。あまりに見事で鮮やかな先制。磐田にとっては「こんなはずじゃ」と思った失点だったはずだ。

トータルの完成度で勝る磐田が徐々に押し込んでいく

 先制こそ許したものの、黙っているわけにはいかないジュビロ。サイドチェンジを契機に鹿島のDF陣を広げさせ、生じたギャップを突いていく攻撃は再現性も高く破壊力満点。ボランチも積極的に攻撃に参加するため、磐田のバイタルエリアはかなりスペースがあった。ただ、鹿島は大外の守備対応にボランチも寄るため自陣PA前が手薄になりがちで、優磨がそこをケアする役割を担う。となれば最前線はエレケのみなので、広大なスペースはあれど効果的なカウンターを打つにはリソース不足。ジュビロが押し込める条件は整っていた。

26分にはサイドチェンジで鹿島を振り回し、WB鈴木雄斗が決定機。31分には遂に同点弾の奪取に成功する。左大外にボールを展開すると、常本の背後をシャドー金子がニアゾーン目掛け走る。ボールを引き出すと中央から三竿を釣りだすことに成功し、折り返されたクロスを杉本がニアでスルーしてゴール前の鈴木が押し込んだ。外に振って、中で仕留める。磐田の狙いが結果に繋がった瞬間でもあった。

33分には勢いそのままに追加点GET。右サイド大外で時間を作りつつ、上原の縦パス一閃で一気にPA内強襲。受けた金子が反転に成功し、GK早川のブロックも躱しつつゴールへ流し込んだ。鹿島は押し込まれてから反撃に転じるための道筋を明確にできなかったのが悔やまれる。ただ、とにかく点を取るためにリソースをぶち込み続けるジュビロ磐田の強い覚悟とモチベーションを感じる時間帯だったとも。

 前半アディショナルタイムには縦パス交換の緩急から右ニアゾーンを突破。山本のクロスはエリア内三竿の左手に当たってしまい、PK判定。これを杉本が左隅に冷静に決め、1-3と大きくリードを取られて折り返すことになった。

〇後半

HT2枚交代。三竿を一列上げて反撃先導

 岩政監督は(最早様式美となりつつある)ハーフタイムでの2枚交代で修正を施す。ピトゥカを下げて関川を入れることで三竿をボランチに変更。右SHの仲間をより単独突破も望める松村へと代えた。ピトゥカ、仲間は共にパフォーマンスが良くなかった印象はなかったし、三竿を一列上げてこぼれ球回収からの二次攻撃を求めたこと等の狙いからくる交代かなと。仲間は実際前半終了間際に惜しいヘディングシュートを放つなど、エレケや優磨がエリア内から外れていた場合にゴール前へ走りこむ3人目のストライカーとして奔走していた。樋口を残したのはセットプレー要員としての重要性ゆえ。

ジュビロ磐田も闘志満々で、後半立ち上がりからハイプレス敢行。鹿島のターンにはさせねえぞと言わんばかりに押し込みを図っていた。が、47分に大きな1点が鹿島に入る。左サイドからのクロスを常本が拾いシュート、松村に当たったボールがゴール前エレケの下へこぼれ、ダイレクトで押し込んだ。エレケにとって嬉しい初ゴール。相手を背負いながら、難しいバウンドに良く合わせてくれた。結果としてこの1点が非常に大きく試合に影響したと思う。

というのも、あくまで印象だけれども磐田はセーフティリードを失ってしまったわけで、現実的に「虎の子1点リードを死守」が至上命題となった。前線ハイプレスを剥がされて自陣に攻め込まれるくらいならば、キッチリと自陣からブロックを組み上げて迎撃しよう、と思わせるには充分な一撃だったのかもしれない。磐田は無理にボールに食らいつくようなことはせず、ひたすら鹿島のボールを跳ね返すことにリソースを割いていく。アタッキングサードには前半ほど人を送り込むようなことはせず、ボランチも常に2枚横並びで中央のネガトラ対策を講じていた。

”追加点を奪う<失点をしない”、という明確な任務がピッチに下されたのかもしれない。残留を争っている状況だからこそ。

大外を崩せても中が薄い鹿島。一発が遠い。

 そんな状況もあり、後半は鹿島が攻める時間帯が増加。磐田はセットプレーを中心に追加点を狙う恰好となった。鹿島が反撃に転じるための条件は色々と揃っていたものの、引き籠るジュビロ守備ブロックを崩すのは容易ではない。優磨が起点を作ろうと外へ顔を出せばエリア内はエレケのみとなり火力が足りない。優磨が崩しの過程に加わることでチャンスは作れるものの、フィニッシュの場面でパワー不足に陥る問題は解決していないのだから仕方ないっちゃ仕方ない・・・・てかエレケのみなのにクロス合戦はじめたのは彼に重荷背負わせすぎだってw

 61分には広瀬(→常本)、カイキ(→和泉)を入れて火力底上げを図る。たぶん常本の交代は復帰直後だったので既定路線だったのかな。ともあれ、大外で仕事ができる人間と、エリア内で仕事ができる人間が増えた理にかなった交代。ただ、68分にエレケが相手との接触(スライディング)を受けて負傷交代。エヴェラウドとの交代となったが、せっかく好印象のプレーを続けていただけに非常に残念。軽症であることを祈るばかり・・・

76分にはジュビロ磐田がCKのセカンドボールから決定機を迎え(マジで危ねぇ)、80分には負けじと松村が右カットインから左足シュート(ロッベン!!)。どちらも惜しくも枠を外れたが、終盤まで得点の匂いがするグッドゲームが続いていく。それでも時間が過ぎ、鹿島の敗戦濃厚に差し掛かったもののエヴェラウドが殊勲の同点ゴール。右ニアゾーンへ走り込んだ広瀬が球際を粘って折り返しクロス。抜けてきたボールにエヴェラウドが合わせ、3-3のタイスコアに持ち込んだところで試合終了となった。

劇的なドロー決着となったが、最後の最後まで諦めずに踏ん張った広瀬はm見事だったと思う。こぼれたボールに頭でくらいつく執念、ここしかないというコースに難しい態勢でもクロスを送り届けた技術に感服します。

次節、アウェイ清水戦

 また勝てませんでした!!!!!悔しいっすね本当に!!!樋口のミドルを見た時には勝利を確信して酒飲もうかと思いましたが、前半ラスト20分くらいで3点叩き込まれた時には感情がおかしくなってましたネ。感情が追いつかない。あっこれやばいと思ってたら逆転されたし。

ただ、ジュビロ磐田の勢いに負けず47分にエレケが1点返せたことは非常に大きかった。試合の雰囲気がガラリと変わったし、集中して守る磐田に対して最後の最後までにじり寄って勝ち点を取れましたからね。3ゴールという結果だけを見れば上出来でしょう。3失点は反省だけれども。エクスキューズをつけるとすれば、相手は3週間、こちらは中2日という日程差による準備の差かなとも。磐田の幅を使いつつ、ニアゾーンへ人とボールを送り込んでくる攻撃は見事でしたし美しかったと思う。あれを前半だけで修正するのは簡単じゃないし、修正できるくらいならここまで苦しんでませ(殴

岩政監督が試合前インタビューでこのゲームを「はじまり」と銘打った
。その意図はいかに、だけれどもリードを奪われてもエネルギーを絶やさず前へ進んだスカッドには力強さがあった。今はその姿を信じ、応援したいと思います。次節はまたも残留争いの真っ最中清水さん。流石に忖度して勝ち点はあげないよね!?

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