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"CBのツケ払い"J1第37節 鹿島(H)vs鳥栖(A)マッチレビュー

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鹿島 1 ー 0 鳥栖

 鹿島は前節大分戦をスコアレスに終え、3位浮上の可能性が消失。ACL出場権の地力獲得は叶わなかったものの、4位に入り天皇杯で川崎が優勝すればACL出場権が残されています。他力ではあるものの、わずかな可能性に欠ける為にも残り2戦を勝利で飾りたいところです。主将・三竿が今節出場停止を受けており、レオ・シルバが久しぶりに先発。ピトゥカとのブラジルコンビで指揮を執りました。

 対するは7位鳥栖。こちらも4位名古屋とは勝ち点差6であり、今節直接のライバル鹿島を叩けば浮上の機会は十分可能性が。先発には8月まで鹿島で共に戦った小泉慶もおり、試合後含めて色々と感慨深い試合となりましたね。

鳥栖の守備狙いは鹿島CBの”縦パス”

 自陣に引き込みつつカウンターを狙うサガン鳥栖。鹿島はボールを保持できる時間こそ安定して立ち上がりから取れたものの、CBからの展開に苦労する場面が散見していく。

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 関川、町田は共にビルドアップ能力に長けたCBであり、距離問わず蹴っ飛ばせる自慢の選手だ。とはいうものの、本来なら鹿島の強みとなる彼らのフィード能力を発揮できるようなシチュエーションを整えつつ、鳥栖はボール奪取の機会を窺がってきた。

自陣でのマンツーマン守備を敷いてCBからのフィード先を限定(外につけたら背後から猛烈なアプローチ)し、荒木への縦パスコースを空ける(ように見せる)。関川or町田が縦パスを差し込もうとすれば、すぐさま中央からインテリオールの仙頭、樋口が顔を出してインターセプト。成功すればカウンターを直撃させることができ、実際にビッグチャンスを創出した。

 ただ、勿論成功すればそのメリットはでかいのだが、通ってしまうと起点を作られやすいのも事実。パスコース封鎖が甘く、最終ライン付近にボールを差し込まれると一気にアタッキングサードへ雪崩れ込まれる危険性を孕んでいた。マンツーマン故に一枚剥がせればそれだけで局面を打開しやすく、14分には自らトランジションを制してボールを奪った和泉を起点にショートカウンター。左足で折り返したクロスがファーサイドの綺世に届き、幸先よく先制に成功する。

鳥栖が攻撃で突いたSB裏のスペース

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 鳥栖はボール保持に入ると、大外WBへ展開からの攻めを中心に組み立て。インテリオールがかなり高い位置まで進出するのが特徴的で、ボールサイドのインテリオールは2トップとほぼ並行ラインまで前進。WBに展開されるのを見るや対面SBの裏へと走り込み、ニアゾーン強襲を試みた。

 ロジックは単純ながらも、インテリオールを務めた仙頭と樋口は”走れる司令塔”とも言わんばかりの高機動型ファンタジスタ。高い技術とアイディアでどんな位置で受けようと攻撃の起点として機能していたし、鹿島が彼らを上手く塞げなかった感は否めない。レオ、ピトゥカは決してボール奪取能力が低い選手ではないが、得意なボール奪取の形は「前向きにアプローチ」すること。仙頭と樋口の走り込みを許す局面になってしまうと背走した守備局面が多く、真価を発揮できなかったのかもしれない。

守備に関して抜群のパフォーマンスを示してくれたのが関川と町田のセンターバックコンビ。というか、この試合における彼らの出来はほぼパーフェクトと言っていい内容。特に関川はLIXIL賞獲得が示すように成長を印象付ける圧倒的な対人戦、カバーリング、フィードを見せてくれた。試合通して相手FWと1対1の状況を作られながらも、鋭い読みでマーカーを捨ててサイドエリアをカバーするなど奮闘。若くして成長を遂げた彼ら抜きに、今日の勝利は語りにくい。

同サイド前進に拘る鳥栖に助けられた面も

 サガン鳥栖はボール保持時、同サイド攻略にかなり拘りを見せていた気がする。というか、本人らが何度もやり直せるような行軍速度ではない、と言った方が正しいか?CB→WB→インテリオールをほぼダイレクトに近い形で行い、相手が構える前にクサビを打ち込むのが肝なのだろう。何度もやり直す、ということは代えの利きにくい仙頭、樋口に無駄な消耗を強いてしまう点もあるだろう。

鹿島とすれば、狙いさえわかれば読みやすい状況ではあった。飛び出してくる仙頭と樋口に誰が食らいつくのかさえ常に整理できていれば、決定的なピンチを簡単に作られることは阻害できる。特に経由地点となるWBに対してアプローチを行い、展開を止めさせれば流れは淀みがち。鹿島は相手の推進力に対して強烈な球際で行軍阻止、ボールが止まったら食らいつきそのまま奪取!!という流れが理想的な奪回パターンとなっていった。

後半開始、鳥栖は4-3-3⇔3-5-2可変へ

 1点を追うサガン鳥栖・金明輝監督はHTで選手を代えずにシステム変更を指示。ぶっちゃけどういう判断で可変を行っていたのか明確にできなかったが、大体「敵陣守備 / 自陣守備」で主に可変していた気もする。

敵陣守備:4-3-3

 小屋松・島川・エドゥアルド・中野(伸)で4バック形成。中盤はそのままに、中野(嘉)と酒井をWGに据える。前線の枚数を増やしてプレッシング、受動的な守備ではなく、あくまで能動的に奪って攻撃時間増加を狙う。

自陣守備:3-5-2

 前半と同陣形。敵陣では右WGを務めていた酒井を前線に残し、プレスバックは極力回避。彼のキャラクターもあるが、前線に残しておいたほうが機能しやすい?

攻撃時にも可変するパターンが見られたものの、そのスキームは正直わかんなかったっす!中盤人員の位置関係や、鹿島が前線プレスに何枚割いてきたかとかに影響してたのかも?ともあれ、点を取るにはボールを奪う必要もあるので鳥栖は前線~中盤にかけて圧力UPを図る。

 対して鹿島はほぼ継続路線でリードを守りつつ、鳥栖を引き込んでCB裏のスペースを使って攻撃する路線に落ち着く。リードをしているのは鹿島であり、相手が動くのは当然のこと、と終始冷静に時間を進められていた気はする。荒木と綺世を中心にフィニッシュに持ち込めていたが、追加点を奪えなかったことだけは残念で仕方がない。

 69分には選手交代を契機に鳥栖は4-4-2⇔3-5-2可変を試してみたり、鹿島も疲労が出始めた選手を交代したりと状況は動くものの趨勢は動かず。80分のエドゥアルドの決定機(CK)には肝を冷やされたし、91分にはクリアを拾われて山下に決定機を与えてしまったりとピンチはあったが守り切り。今季ホーム最終戦で見事勝利することができた。

・・・・ケチをつけるわけではないが、89分に犬飼を投入し5バック化した鹿島。後ろを重くして前を軽くしたにも関わらず、前線プレスで前後分断間延びし放題になったのは意図したものなのか・・・?

次節、今季ラストゲーム仙台戦へ

 なんと名古屋がセレッソに敗戦したことで鹿島は4位浮上!!!(セレッソよくやった)。勝ち点差1とはいえ、次節仙台戦に勝つことで自力での4位確保が可能となった。これはデカい。名古屋は次節浦和戦、我々は降格確定している仙台戦となった以上は勝って終わりたいものである。

選手の移籍も、来季の監督体制も気になるところではある。というか皆ソワソワして仕方ないでしょう(笑)。ACL出場権があるかどうかでそこらへんの交渉は大きく変わりそうだし、主力の放出にもつながりかねない。期待の高い若手に、脂の乗った実力者を鹿島は揃えているだけに。

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