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コロナ禍でアジア女性社会起業家たちが創りだす未来 〜私たちが、社会課題解決に取り組んでいる理由〜(前篇)

2020年12月13日 LEAP DAYにて

沖縄からオンラインで開催された、社会課題を解決する起業家や学生たちの交流イベント「LEAP DAY」に、AWSENも登場。3カ国からAWSENメンバーの女性社会起業家を迎え、100分に及ぶ熱く温かいセッションとなりました。

0. 登壇者紹介

Pacita Juan(ECHOstore 創業者兼会長, フィリピン)

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シリアル・アントレプレナー。持続的なライフスタイルをテーマに、農業・商品開発・観光などに幅広く関わる。女性起業家の商品の販売促進をするためのプラットフォームの構築や、コーヒー農家を支援するための財団を設立するなど、起業家としてだけでなく起業家を支援することにも多く携わり、COVID-19禍でも様々な活動を行う。2017-2019年は、Asian Women Entrepreneurs Network(AWEN)のPresidentも務めている。

Naw Eh Wah(Amazing Grace 代表, ミャンマー)

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ミャンマーに生まれ育つ。 障がいのある女性の雇用を目指して、2012年に創業。女性たちへの就業訓練や、フレキシブルな雇用の機会などを通じて、女性の所得向上を目指している。 2015年には、ヤンゴンにお店も構える。2018年に沖縄で開催したAWSEN Summit volume.0にも登壇。現在1歳になる子どもの母親でもある。

Supatchaya Techachoochert(Refill Station 共同創業者、タイ)

タイ


生物学者。現在は、Mae Fah Luang財団で環境マネージャーとして勤務する一方で、Refill Stationの創業者であり、オーナー。Refill Stationは、2017年にタイで初めてできたバルクストアで、”ゼロ-ウェイスト”としてできるだけゴミをゼロにすることを目標に廃棄物を出さないライフスタイルを推進するため、タイの顧客に対して製品を通じたソリューションや教育を提供している。


セッションは、まずそれぞれのスピーカーから事業の紹介とコロナ禍での対応などについて話をしてもらった後に、AWSEN代表理事の渡邉がモデレーションを務めてパネルディスカッションが行われた。

1. 「楽しみながら人の役に立つために、前に進み続ける」 〜Pachita Juanさん @フィリピン〜


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私の家族は、ビジネス一家でした。そのため、小さい頃から空いた時間にはビジネスのことばかり考え、大学を卒業してどの事業で創業しようかということをよく家族とも話してました。これまでに、コーヒーショップやレストランなどのビジネスをしてきましたが、2008年にECHOstore を創業しました。ECHOstoreを創業した理由は、コーヒーが好きだから。人の役に立つことが好きだから。自然環境と食が好きだからです。

ECHOstoreの「ECHO」は、それぞれ意味を持っています。
Environment(自然環境)を表す「E」
Community and Coffee(コミュニティとコーヒー)を表す「C」
Hope and Health (願いと健康)を表す「H」
Organization (組織)を表す「O」 

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ECHOstoreは女性3人で立ち上げました。販売しているのは、オーガニック製品。当時、オーガニック製品自体は人気でしたが、専門店はなかったのです。製品は、女性のサポート事業の一環として、女性運営の小規模会社から仕入れるか、私が直接農家に出向き、納得のいく商品を仕入れます。
経営しているカフェでは、コーヒーやチョコレート、お米などを商品として提供しています。そうするとカフェにいらっしゃったお客さんと会話が生まれ、それをきっかけとしてECHOstoreの商品を購入していただけます。その意味で、echomarket、echocafe、echoshopと隣接した場所で経営していることに効果がありました。

chitお弁当

COVID-19で、ショッピングセンターの何店舗かを閉店せざるを得なかったので、ビジネスのデジタル化を進め、商品のオンライン販売に移行しました。ハンドジェルなどECHOstoreの商品はコロナ禍において需要が高かったです。
ビジネスのオンライン化と同時に、医療従事者をサポートする新しいプロジェクトも始めました。当時の医療従事者は店が開いている時間帯に食料を買いに行くことができないほど忙しい状況だったため、プロジェクトでは、寄付を集め、医療従事者に料理を提供しました。

起業家として言えることは、「全ての事業が成功するわけではないということ。ときには失敗するけど、前を向いてどんどん進まなければいけない」という事です。ビジネスは、100%成功するとは限らない。だからこそ挑戦し続けならない。そして、創業は自分が熱意を注げることができる商品やサービスでするべきだと思います。私は、コーヒーや食、音楽、旅が好きだからこのビジネスをしています。お金を稼ぐことだけのためにビジネスをするのは嫌いです。
コロナ禍で大変ですが、コーヒーと食で多くの人のお役に立てるように我々のビジネスはこれからも前に進み続けます。

2.「クリエイティブな仕事とサステナブルな事業で、女性の生活を向上させたい」〜Naw En Wahさん@ミャンマー〜

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ヤンゴンで「Amazing Grace」というアクセサリーショップを経営しています。ショップで扱う商品は、障がいのある女性を雇用し、サステイナブルでエシカルな素材を用いてハンドメイドで制作しています。

いくつか商品を紹介しますね。

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自転車タイヤのチューブや雑誌の紙から作ったネックレス、新聞紙から作ったバングル、プルタブで作ったカバンなど、様々な商品があります。

Amazing Graceの商品はでは、有りふれたものや価値のない資材から価値ある作品を生み出す事ができる素晴らしさを証明していくと同時に、環境保護にも注目しながらアクセサリーを制作・販売しています。

ミャンマーは多種多様な民族で構成されており、少し前までは皆がロンジ―という民族衣装を着ていました。ロンジーはカラフルで多くの種類があります。着られなくなったロンジ―と雑誌の紙、木材でネックレスを作っており、このネックレスにはミャンマーのストーリーが込められています。

ロンジー


Amazing Graceのほとんどの従業員は、女性か障がい者です。ミャンマーでは、女性の賃金が低いうえ、障がい者は職業訓練に参加することもできない。ですので、Amazing Graceではそんな方の雇用をしています。従業員は、アクセサリー制作の仕事を楽しみながら、収入を得て、家族に仕送りができることを喜んでいます。

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私はこどもの頃からジュエリーを作るのが得意でした。捨てられるものを使ってアクセサリーを作ろう、女性や障がい者と一緒に作ろう、と思い、2011年にこの活動をはじめました。販売を開始したのは2015年です。今後ももっと、世界中の人々と地元の顧客にミャンマーの伝統的工芸品の美しさとミャンマー女性のクリエイティビティを見せたいと思っています。そして、ミャンマー女性の生活水準を上げたいのです。
他にも、ヤンゴンの精神科病院で月一回のクラフトセラピーへの参加をしたり、ヤンゴン盲学校職員や孤児院の教師、また教会で開かれるこどもサマーキャンプの職員たちへのトレーニングなどにも従事しています。
新型コロナウイルスによるパンデミックは、グローバル経済、日々の生活に苦しんでいる人たちの命や生活を根こそぎ奪っています。しかし、このパンデミックにより今後の事業展開の方向性がはっきりしました。私は、人々と地球を第一に考える経済をつくっていきたいのだということです。ただ、お店は開けられないし、ワークショップなどもできない。現在の従業員6名に仕事を与えられない状況が現状です。

3.「新しい意識を生み出すにはコミュニケーションが大切」〜Supatchaya Techachoochertさん @タイ〜

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最初にお伝えしますが、私はビジネスウーマンではありません。
「生物環境」を重点的に研究して、生物学の博士号をもっています。友人とRefill-Stationを設立し、タイで初の量り売り事業を始めました。その傍ら、オンライン雑誌でナショナル・ジオグラフィックのライターとして、科学と環境に優しい生活スタイルについて書いています。また、王室の後援下で設立されたMae Fah Luang のエンバイロンメンタルマネージャーも兼任しています。

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私は、自然を愛し、ジャングルでよく過ごしていました。小さな植物や生物、蝶々や鳥がいて、これらを守らなければと思い、生物学のPh.Dへの道を進びました。自然保護に一生懸命取り組めば、地球を救うことができると思っていました。ある日、ジャングルでの滞在からタイの都市に帰ってきたとき、自然の内部だけでなく町にも影響をもたらす環境問題があることに気付きました。
気候変動、山火事、都市部での光害、大気汚染、路上での動物のひき殺し、お腹に85枚のビニール袋が詰まっていた事が原因で死んだクジラの死体、ストローが鼻に突き刺さっていたカメ…。これらの現実をみて、2017年の7月にRefill Stationを設立しました。量り売り事業はタイでは初の試みでしたので、市場調査から始めました。環境問題に関心のある人がどこにいるのか分からなかったからです。

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市場調査では、以下の事を検証しました。
グループCとしてターゲットとしたのは、中流所得層。仮説検証として立てた問いは、「こだわり商品を購入する収入があるのか?量り売り事業がグループC層の問題を解決できるのか?」ということでした。
グループBとしてターゲットとしたのは、環境意識が高い高収入層。こちらは、「ボトル使用後にポイポイ捨てるこの層がこの事業に関心を持つのか?」ということを検証しました。

そこで、まず、グループCの調査のために、人が集まる市場(いちば)の中にテーブルを構えて実験をしました。
初日は全くお客さんが来ませんでした。買ってくれた、たった1人のお客さんは「あなたが学校で成績Fを取らないですむように、何か買って助けるわ~」と…。もっと、いろんな人とのコミュニケーションが大事だと思い、リーフレットを作って自分たちの事業の説明を開始し、商品を半額にして、やっとお客さんが来るようになりました。

数か月後には、Facebookのフォロワーが商品を求めに店に来るようになりました。

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グループCの調査の後、グループBに検証を移しました。
グループBは、環境への意識が高く、収入も多い層。
12月には、ターゲットを決定し、Better Moon Cafeで販売をはじめました。

最初の頃にお店にくるお客さんは外国人でしたが、徐々に環境問題に興味のあるタイ人も訪れるようになりました。
Refill Stationでは、シャンプーだけでなく、プラスチックでもなく、紙でもないストロー(ステイリ―ストロー)を販売しています。Better Moonカフェで食事をする際に容器の無駄を省くために「ハッピープレート」というお皿を貸し出しています。

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幸いなことに、私たちの事業に興味を持つ人たちがお店にきてくれたり、記事にしてくれる人が出てきました。メディアに露出することは、事業を知ってもらいより多くの店舗に展開していくことに繋がりました。また、コミュニティを作ったり、こどもたちへのワークショップをしたり、コミュニケーションを大切にしています。
現在Refill Stationの仕組みは、20店以上に拡がっています。より多くの店舗に採用してもらいたいと思っています。


記事執筆:黒崎寛子、曽根原千夏
編集:渡邉さやか

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