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日本人の私が中国のアニメ映画を見て感じたこと。

私はアニメの国、日本で生まれ育った。

以前、中国で留学したとき、
中国語が下手な私にとってアニメは強い強い味方だった。

 スラムダンク、ポケモン、ドラえもん、名探偵コナン・・・ひとつひとつ名前を挙げるとキリがないが、アニメの名前一つ言うだけで、一瞬で中国人と会話が弾み出すようなことが何回もあった。

 アニメはまさに、日本人の私にとって中国人と友達になるための「秘密兵器」のような特別な存在だった。

 だから、Twitterで偶然このアニメの映画広告を目にしたとき、

「中国のアニメって見たことないけど、どんなアニメなんだろう・・・?」

ととても興味がわき、仕事が休みの日に見に行ってみることにした。

 この映画は、広東省の小さな農村の落ちこぼれ3人組が、獅子舞を通して自信と誇りを取り戻し、成長していく過程を描いている。

 最初は村の獅子舞グループの屈強な若者達に、虐げられ馬鹿にされていた3人が最後には対等なライバルとして認められ見事に「野良猫」から「ライオン」へと姿を変えていく姿には感動して涙が止まらなかった。

 この映画は、現代日本の若者の心も強く強く打つことができる作品だと思う。

 今日本では「親ガチャ」という言葉が若者の間でインターネットを中心として流行している。

 ガチャとは、日本のゲームセンターにあるガチャポンの略称で、生まれてくるときにガチャポンのように親が当たりであれば人生は上手くいくが、親がハズレであれば人生は努力しても必ず失敗してしまうだろう、という意味である。

 つまり、経済的に豊かな両親の元に生まれた子供は「親ガチャ成功者」として、素晴らしい人生が約束されるが、

逆に経済的に貧しい親の元に生まれた子供は「親ガチャ失敗者」として、たとえどんなに努力しても成功するのは難しい。

そんな意味をもつのがこの「親ガチャ」という言葉である。

人生は生まれたときに決まっていて、努力ではどうすることもできない。

そんな諦めの空気がなんとなく漂っている日本社会において、この映画は本当に勇気と明日を生きるためのエネルギーをくれる映画と感じている。

 獅子舞3人組の、阿娟,阿猫,阿狗の3人組は大都市ではなく小さな村に生まれ、両親は出稼ぎに行っていて一緒に暮らせていない。
 容姿に恵まれているわけでもない、まさに日本で言う「親ガチャ」失敗者である。

そんな彼らはいつも村の笑いもので、彼ら自身も自分たちが「废物」ゴミのような存在だと認めてしまっている。

そんな彼らが一念発起して獅子舞チームを結成して、あらゆる困難や恐怖を乗り越えていく姿は、痛々しいほどに現実的でありだからこそ強烈に心を打ってくるものがあった。

「親ガチャ」という言葉を使って、「躺平」してしまっている現代日本の若者だって、誇りや自信を取り戻したい気持ちは持っている。
 でも、努力した後に失敗してしまうことが怖くて、最初の一歩が踏み出せないでいる。
「親ガチャ失敗だから努力しても意味ないよ」と言っている方が楽だから、努力をやめていつの間にか本当の失敗者になってしまう。

 これを書いている私も、時々「これ以上努力しても成功できることなんてない・・・」と思ってしまうことはいつでもある。

 でも、あの愉快な3人組が馬鹿にされても、笑われても、逆境に晒されても
「僕たちはゴミじゃない」という強い信念を胸に、誇りや自信を取り戻し人生を変えようと獅子舞を纏い、前へ前へと進む姿は冷めきってしまった日本人の若者の心をもじわじわと温めてくれるような力があると感じた。


 留学していた時代に「日本のアニメは、私がつらいときに元気をくれたんです」と仲が良かった日本語学科の学生が話してくれたのを聞いたことがあった。

しかし、今。

大阪の小さな映画館で、中国のアニメ映画が日本人の胸を打っている。

アニメというものはこれからも、政治や経済なんかの難しい問題を軽々と飛び越えて日中を往来し、日本と中国の若者の心をつなげてくれると思う。

私は来年から広州に留学するが、その時は絶対に獅子舞の大会を見に行きたい。
阿娟,阿猫,阿狗の最高の3人組に会いに行きたい。
(もちろん阿强師匠にも・・・!)

まだまだ知らない広東省の文化をもっともっと見てみたい、そんな風にワクワクさせてくれる。

この映画に出会えてよかったと、思える一本だった。


主人公たちが修行するシーンで流れる
広東語の歌「世間始終你好」という曲も素敵だったので是非是非!!

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