平野啓一郎「本心」を読む前に

今回の「本心」の発売に際して、自分は個人的に今までの解釈が繋がって辿れるのではないかと期待しているため、「本心」に関する情報を一切遮断してAmazonで予約だけして楽しみにしています。

(作品内容は全く見ないようにしていて「母を作って欲しい」というフレーズのみを正直見てしまいました)

自分は今までの作品を読んできて特に「ある男」と「ドーン」で感じた「愛、VR、分人」はそれぞれ相性が良いのではと感じています。

そこで前提のまま今回のnoteでは、自分のモヤモヤと期待しているその「それぞれの相性とはなにか」をクリアにするために書いていきたいと思います。

ちなみに、平野啓一郎という作家さんを知っているでしょうか?

少しだけ触れておくと「マチネの終わりに」という作品が福山雅治と昨年映画化され、世間に知られてしまった(それ以前からも有名なので失礼)と個人的には感じています(笑)

私自身も平野さんの作品を知ったきっかけは「マチネの終わりに」で、三省堂書店 池袋本店に置いてあった本のカバーが青と黄色でキレイだな〜って思ったことが本をとったことが入口でした。

自分はそこで内容がわかるのに漢字がよくわかってないため、自分の語彙力の乏しさを嘆きながら、電子辞書を片手に「日本語って繊細で綺麗だな〜」と感じつつ読み漁りました。。

そこですっかり虜になってしまった自分は「ある男」「私とは何か」「空白を満たしなさい」「ドーン」「決壊」「かたちだけの愛」「顔のない裸体たち」「透明な迷宮」の順で人生で初めて誰かの作品を追いかけるようになりました。


個人的に好きな平野さんの魅力は何か?

自分なりに探しましたが、一番しっくり来た言葉は結局自分の言葉ではなくコルクの佐渡島さんの言葉で。それは

「現代にある言葉にしづらい思いを共感させてくれる」

的なことだったと思います。(何かの雑誌に書いてあったような…)


自殺、愛、死、時間の流れ、人間関係といった誰もが抱く気持ちや疑問を的確に言葉で表現してくれて、読みながら「あーそれか!!」とまんまと共感させられています。

さて、前置きは長くなりましたが、今までの「あーそれか!!」の繋がりを振り返っていこうともいます。

「ある男」の帯には「愛したはずの夫はまったくの別人だった。」と書かれていて、(まだ読んでいない人は要チェックです)

愛にとっての時間軸、人を証明するには他者との繋がりしかないのではという印象を感じました。

例えば、職場に新しく転職してきた人、引っ越してきたお隣さん、マッチングアプリで今度会う人(最近始めました!)後に自分が深く関わる大切な人の情報が戸籍上で全くの別人だったなら、あなたはどうしますか??

え、急にそんなこと言われてもどうしようもなくね?と感じる方が大半だと思います。ちなみに、カンボジアでは日本のヤクザさんが戸籍の売買をしているという話を聞いたことがあるため、無くはない話だと自分は感じました。

「他人になった誰か」は今ではSNSでエゴサすれば素性が出るかもしれませんが、識別できるのは「顔のみ(顔のない裸体たちを読むと面白いです)」や「過去における人との関わり」でしかその人がその人であると証明することができないと考えました。


「ドーン」では、死んでしまった我が子のDNAを入れ物にいれて精製された存在は我が子なのかナニカという「何を持ってその人とするか」、もう会えない誰かを創ることで、その人を通じて生きられた自分を取り戻した主人公の奥さんの感情(死や自殺を通じた作品は「空白を満たしなさい」がおすすめです)。

例えばアカウントの乗っ取りがあったとして、自分を誰かが使って周りから見た「私」は「誰か」であって、他人が演じた私を見ているという状況なら、「私」を証明できるのが、過去の誰かが見た「私」であって、今の私は誰でもない「誰か」ということが創る出せるようになる。


さっきの例なら、「我が子もどき」を演じていた誰かが既にいる。

Twitterで複数アカウントを所持して乗っ取り被害があるように…

そうなると、

何を持って「愛」や「その人」だと証明できるのだろうか?

という疑問があり、今までの「顔」が識別の基準だったものの、それすらアカウントとして複製されるため使えなくなり

「他者を通じて共有した時間」という回答のみが有効だと感じていましたが、それすら壊れるのではないかという期待があり、自分は「本心」という作品ではそこに期待しています。(全く情報に触れないようにしているので、明後日の方向に期待が飛んでいたらそれはそれで自分であれこれとりとめなく考えるので良しとしましょう)

以上、自分の今の暫定解が壊されるorそんな視点があったのか!を期待して楽しみにしています。〜おわり〜

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