なぎさボーイについて考える。その4
https://note.com/awayuk/n/n8b57ad71a8ea
1 おわび
すいません、体調不良のためずっと更新をさぼってました。あとここのエディタの使い方も忘れてしまって使いこなせません。とりあえずベタテキストでアップして直せるようでしたら後日直します。
2 夏、テニスコートのめぐりあい
夏休みも近いある体育の授業。男子は野外バレー、女子はテニス。
多恵子が数人勝ち抜きをきめる中、何があったか休憩時間に問い詰める松宮。ぼんやり「浮気」と答えるなぎさ。バレーが再開したが、多恵子の次の相手は槇で、なぎさはそちらがきになってしかたがない。そして、レシーブしようとつっこんだ槇の身体が奇妙なふうに右に傾ぐのがなぎさにはみえた・・・
後はいうまでもない。なぎさはまた槇の元に駆けつけた。「大丈夫か、また切ったのか」と。そして手を差し伸べて、多恵子とともに保健室につれていく。
3 槇の思い
保健室に養護の先生はいなかったので、多恵子が探しに行く。
槇はいう「ただの捻挫よ。心配しないで。音がしなかったわ」
アキレス腱が切れる時はパン、バシッという音がするのだという。疑うなぎさに、
槇は「ほんとよ。二度も切っているから、よく知ってるわ」と苦笑しながらいった。
二年前の競技会、医務室で医師は即座にこれが二度目のアキレス腱切断だと見抜いた。なぎさもその場にいたのに、その意味が理解できるようになるまで1ヶ月以上かかった。
槇は1年の後半に800メートルに転向した後、一度アキレス腱を切った。本当なら1年は無理な運動をさけないといけない。
それでもかくしてすぐに復帰したのは、なぎさと約束したから。2年の競技会でまた会おうと。なぎさが競技会にでれるかもわからないし、自分が800メートルで選ばれるかもわからない。それでも、なぎさに会いたかった。約束の時と場所へ。
注意してほしい。もしなぎさが最初の出会いで槇を見初めて「友達になろう」とか「付き合おう」といったのであれば(同じ市内なのだから決して不自然ではない)、槇も不確かな1年後に全てを(陸上競技者としての生命)かける必要はなかった。
なぎさに責任があるというと酷だが、なぎさからすれば「なぜ俺なんかのために」「なぜそこまで俺をそこまで信じて」という重荷をずっと抱えていた。
そんななぎさに、槇はいう。あたしのこと、みんなわかってくれるみたいだった。それが嬉しかったのよ、と。
なぎさはその言葉で救われる。俺たちはどこまでもわかりあえるんだと。槇は特別な人間で、多恵子とは次元が違う特別な存在なんだと。
・・・駄目よ、親友じゃ恋人にはなれない。親友になりたかったわけじゃないの。
もう、いいわ。駄目だとわかっていても、ついスパートをかけちゃうの。とことん駄目だと思い知らされるまで諦められないのよ。でも親友ってのはアキレス腱だった。諦めてあげる。
ここで、雨城なぎさと槇修子の不思議な物語は終わる。なぎさは認めないだろうがこれは明らかに恋だ。ただ、なぎさには帰るべき場所(多恵子)があり、槇にはない。
槇はそれでもいいと思ったのだ。優しい子だから。そしてそのことをなぎさにいうことはない。
作者にとって槇修子は特別の愛着のあるキャラクターだったのだろう、姉妹編の「多恵子ガール」そしてさらに続編「北里マドンナ」でも主要な役割を演じている。
(ただし、「北里マドンナ」での決着があれでいいのかはまた検討する必要があるだろう)
4 多恵子の気持ち。そして再び槇の思い。
その後、北里が「松宮がなぎさにベタベタしてくるから頭にきて、そばにいるために槇が好きだと嘘ついた」と告白して、なぎさは激おこ。とりあえずここはこれで仲直り。
さて、多恵子。
「またアキレス腱切ったのかと思って、怖かった」
多恵子はいう。競技会のたびに学校をさぼって見に行っていたこと。二年のときの競技会で女の子の足がどうかして、なぎさが駆けつけるのも見ていたこと。帰り際にアキレス腱どうこうとみんなが噂していたこと。
多恵子は全て知っていた。知っていて、黙っていた。
その心情は「多恵子ガール」に詳しくでてくるが、ひとつだけ。
実はこの時点でも、(正式には「多恵子ガール」の終わりまで)なぎさと多恵子は正式なカップルにはなっていない。槇問題が決着するまでは当然だろうが、中学のときはなぜつきあわなかったのだろう。すっかり影の薄い(登場しなくなった)三四郎への遠慮?
それもあったのだろう。しかしここまでくれば、なにもかもしっていた多恵子にとって、槇のことを話してくれない、そして槇のことを何も知らないふりをしてなぎさと交際するということは難しい、抵抗があったのではないか。それが女心というものだろう。
だとすると、槇が同じ高校に入学したこと、一学期のうちに動いたこと、もまた別の意味を持ってくる。ようするに、白雪姫のキス。
知っていて何もいわなかった多恵子は優しい。しかし、呪縛をとくために動いた槇また限りなく優しい。「なぎさボーイ」は二人の少女の優しさの物語だった。
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