眠剤入りのコーヒー飲んでうつらうつらしてる
10月20日が近付いてくると死んだ祖父の事を思い出す。
本当は父は祖母の連れ子で全く血の繋がりなんてなかったのに40年一緒にいた祖父。
実子はすぐ近くに住んでいたのに全く世話をしなかった。
死んだ後市役所で色々な手続きを手伝っていくうちにどんどん父が現実を見ることになりヘコんでいく様を見た。
娘として、孫としてできるのは事務手続きの手伝いくらいだった。
死んだらみんな突然物になる。
魂の抜けた器に私は毎回恐怖を抱く。
でもそれ以上に恐怖を抱いたのは実子の存在だった。死んで間もなく遺品整理を始め、祖父の物はことごとく捨てられていった。悲しむ素振りもなく、我が家に出入りしては祖父の品をどんどん捨てていく。狂気にも感じられた。
そして私は聞いてしまった。
「じぃちゃんの棺に入れる物は残してあるの?」
と。返ってきた言葉は信じ難い言葉。
「何もないでしょ。あ、でも骨壺にいつも使ってた腕時計は入れるから大丈夫。」
何が大丈夫なんだか分からなかった。祖父のトレードマークといえばいつから使ってるか分からないキャップと釣り用のベスト。それらが捨てられたと聞いた夜、私は誰にもバレないように泣いた。声を殺して泣いた。
棺に何も入れられないなんてそんなことあるもんか。
なんとか見つけ出させた外行き用のキャップを最期に被らせることができた。その時その場にいた親戚たちがみんなやっぱりこうでなくちゃねとつぶやいていた。
私の小さな反抗はじぃちゃんを救えただろうか。
1周忌すら行われるか危うい状況だが、完全に我が家とはつながりが切れてしまったので何も出来ない。
火葬されるあの瞬間の扉が閉まってしまった時。私たちのつながりが切れてしまった。
どうか、どうかじぃちゃんがいるところが穏やかでありますように。
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