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雑詩とかけらたち


夜 夜 夜
飲み干して

微睡の中で
優しい忘却に身を委ねる

どこかに落とした涙
広がる波紋をなぞって

撫でる 爪を立てる
痛みと慰めの間

揺れる 闇 に
映るのは
知らない顔

誰ですか?と聞く声は
耳に跳ね返るから
笑っちゃうね

夜 夜
潤って

明日もまた
起きたいと思えますように



孤独が寝息を立てている
すやすやと 優しく目を瞑って
 
抱き枕のように抱えて
私も一緒に眠りにつく
 
水の夢を見る
浮かんでいるのか 溺れているのか 沈んでいるのか
わからないまま
息ができないことだけ理解して
夢の中でも目を閉じる
 
想像上の私は 自由に泳いでいる
想像上の私は 手をめいっぱい広げて おどけてみせる
想像上の私は 水面から漏れる眩しさに 焦がれみたり
 
自分の身体を抱きしめて 
 
ここには 誰も訪れない
扉がないから
誰も入ってこれない
 
扉がないから 入ってこれない
扉がないから 入ってこれない
 
そう遠くないうちに 溶けていくのだろう
このお話を 誰も知ることはない
 
扉がないから
 



言葉が尽き果てた世界で
それでも君となら話せる気がする

すべからく 手の鳴る方へ

触れて溶けてしまったのはどっちなんだろうねと笑った

いつものように振る舞って見せてと昨日の他人が口にする

私のために怒ってくれたこと忘れないよ 泣いちゃうけどね




「……悲しいね、誰もきみのことを殺してくれないんだ」

「生きちゃったんだ。何も知らず、何もわからず」

「永遠に生きるって寂しいよね。
 ずっとひとりで、ここにいたんだね」

「……もう大丈夫だよ。私がきたから」

「私だけが、きみのことを終わらせてあげられる」

「そうだよ。きみが望むだけ、殺してあげる。何度でも」

「泣いても殺すし、笑っても殺す。
 生きているとわかったら殺す。
 動いていたら殺す。音を立てたら殺す。
 息をしたら殺す。息を止めても殺す」

「幸せだね。ちゃんと終われるなんて」

「私がきみの死を確認する。
 看取ってあげるから、安心して死んでいきなさい」




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