見出し画像

雑日記:『読みたい瞬間が出会う日』

衝動的に綿矢りささんの作品が読みたくなって、本屋でまだ手に取ってない一冊を買い、先ほど読み終えた。この本が読みたい、ではなく、特定の作家が書いた言葉を今すぐ摂取したいと思ったのは珍しい。先日買った読みやすい感じのミステリー小説が全然読み進められないフラストレーションもあったのだろうか。

綿矢りささんの本は、言葉が脳ですぐ音になる。声に出すように読み進められる。見た言葉を音で聞いて景色を浮かべたりリズムに乗っていく自分の読書スタイルに合っているのだ。お洒落な比喩表現、言い回しがどことなく賢い(アカデミックというか感性だけではない、文学的センス)のもいい。好き。

『蹴りたい背中』で鮮烈にデビューした当時は、実は触れていなかった。その頃は小説は石田衣良とか村上龍とかを摘んではいたけど、もっぱら現代小説より岩波文庫の哲学書の方が好きだったし、本より美少女ノベルゲームにどっぷりハマっていたから、そもそも縁はなかった。

きっかけは女性同士の恋愛を描いた『生のみ生のままで』百合界隈で話題になっていたという理由で読み始め、あまりの面白さに一気読みしてしまった。『生のみ生のままで』は身体描写へのこだわりが凄く、言葉でここまで身体の交わりの質感を表現できるものなのかと舌鼓を打った。


それから過去作をちょっとずつ読んでいる。そういえば今年は『ひらいて』が映画化されるらしい。激情が迸る作品で好きなのだけど、百合的要素もあって、予告編を見る限り、その辺りもちゃんとやってくれるのかな?楽しみ。


ちなみに今日読んだのは『意識のリボン』という本。私小説風味で綴られる八編の短編からなる作品で『怒りの漂白剤』と表題の『意識のリボン』が特に響いた。三十歳になった心境で描かれているので、世代的にもタイムリーだった。


数ヶ月前に『憤死』を読んで以来だったのだけど、やっぱり綿矢りささんの本、好きだな。波長が合う。喉に支えていた悩みの小骨を取ってくれたので、いつもよりは穏やかに寝れそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?