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先行投資・日米の違い (26/365)

企業では「先行投資」「先行開発」という言葉がよくつかわれます。先日この言葉に対する日本とアメリカの考え方の違いを感じる場面がありました。私の経験に基づくもので必ずしも一般化できるかはわかりませんが紹介します。

先行投資は細分化すると、ヒト・モノ・カネに分けられると思います。日本の企業は、ヒトに比重が置かれていると思います。

よくあるパタンとして、顧客の製品試作を支援するために技術者を送り込むことがあります。多くの場合、これは無償で行われます。よく「手弁当」などと言いますね。

これは、その製品開発が成功した時にそのビジネスに参加して収益を挙げるという将来価値への期待すなわちヒトの先行投資です。

新規事業を担当するあるアメリカ企業のマネージャと会話していたとき、このような取り組みには違和感があると言います。つまり、不確かな取り組みにヒトを投入するという考えはないというのです。

気付きの多い会話でした。カネの先行投資についてはアメリカ企業はむしろ積極的に見えます。一方日本企業は、カネの投資は苦手ですが、ヒトの投資はむしろ日常茶飯事に思えます。

これは雇用形態とも関係するのかもしれません。うまく行くかどうかわからない仕事に時間を割くことは、キャリアの空白と映るのかもしれません。そもそもいわゆるジョブ型雇用では定義しにくい業務なのでしょう。

一方日本の終身雇用もしくはメンバーシップ型雇用では、いろいろな現場を経験して人材を育成する考えがありますし、有力顧客先での製品開発支援は、人脈形成の上でも価値を認められると思います。

つまり、企業という組織視点から見るか、従業員という個人視点から見るかによって景色は変わってくるのです。当然日本企業は組織視点が強いですから、ヒトの先行投資も組織の成長要因の一部として捉えることができます。

ともすれば、欧米、特にアメリカ型の経営が礼賛されがちで日本型経営を自己否定する場面が多いですが、日本型経営の特徴も深く理解すれば過去の栄光ではなく、現在の市場環境においても強みに転換できるはずです。もちろんバージョンアップは必要でしょう。

組織の壁を超えた共創の仕組みとして、日本には「大部屋」という考え方があります。トヨタグループの「大部屋」は特に有名です。

過去最強だった日本型経営を全否定するのでなく、よい点を再構成して再び強みに転換していくことが大事です。「大部屋2.0」を目指しましょう。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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