博多酔吟集(15首)

   スターバックス太宰府天満宮表参道店
木材に深く組まれて空間は保たれながらコーヒーを飲む

勾玉のブレスレットが売ってあるお守り屋さんに集うこどもたち

   思い出したように話しかける
長い参道にならぶふたりはふたりとも結婚記念日を忘れてる

見えてきた文字がゆっくり意味になる 〈ひとつの中心のその中心〉

   九州国立博物館
一瞬のたのしさがくるかなしさは馬のはにわの写真を撮った

すすめてくれた梅ヶ枝餅を食べながら胸にながれるやさしいことば

   鈍行で天神駅へと帰る。
海賊版はイリーガルだから見ないという会話きこえる きみはねむってる

   水鏡天満宮の看板犬ハリー
撫でているだけでなにかのポイントが溜まっていくような犬だった

   福岡アジア美術館へ。ツルテミン・エンクチン《窓》
窓枠にぶつかる光 草原はここにはなくてなつかしい光

   ツェレンナドミディン・ツェグミド《不思議なこと》
肉体がなくなったときほんとうの黄金の風景があるのかな

   別行動をして、それぞれの友人と会う。
半袖が5月の風にうす寒くなびいて山下翔はやってくる

夜の澱もらったことばひとつずつうれしい黒霧島ソーダ割り

山ちゃんの友達は次どうする?と訊かれて告げる三岳ロックを

元気でね。と言ってもらって元気になる想像をまず点す心に

買ったのは覚えていない飲みかけの金麦を朝、ぬるく飲み干す

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