脂肪腫を取った[本編②]

いよいよ手術当日。私の執刀は2番目だとのことで10:30からを予定していた。日頃仕事のスタート時間が10:00の私からすると、10:30の時点で人の体にメスを入れる大仕事をすでに一件こなし、さらに午前中にもう一件って外科医マジすげーと変に自分の時間軸で感心してしまった。
時間が来ると看護師がテキパキとベッドを折り畳み?、稼働式にして病室からベッドごと連れ出された。てっきりストレッチャーみたいなものに移ってとか普通に歩いてとか考えていたので、ちょっと心の準備もないままスムーズすぎる移動であれよあれよと手術室まで来てしまった。

さて生まれて初めて大学病院の手術室というものに入ったわけだが、私が入ったのはドラマに出てくるような個室タイプではなく、横に長ーい空間にパーテーション的なもので区切られた手術台がいくつかある感じ。歯医者さんの大きいバージョンのような。ただ床や壁の色や大きなライトがぶら下がっている感じなどはドラマそのものだ。何せベッドに寝た状態なのであまり周りを観察することはままならなかったのだが、なんとなく無機質な空間ということはしっかり分かった。
稼働ベッドから手術台にズルズルと移動してセット完了。この時どんな状態だったか、もはやあまり思い出せないが、麻酔医や助手?みたいな人が男性で下着も着てない手術着一枚の私恥ずかしいけど、この人たちは毎日やってることだしな、若い女性だったらもっと恥ずかしいのだろうけど、私40過ぎたおばさんだしなとかそんなことを考えていた気がする。
この時点で私の担当の女医はまだいなかったと思う。最初は麻酔から。口に酸素吸入のようなマスクを当てられ、煙を吸って2〜3口。咳き込むだったかむせるだったかそんなことを言われていて、本当にそうだなーと思ったところまで意識はあったのだが、次の意識は当たり前だが術後だ。
起きてすぐに横を向かされ、今しがた肩から取りだした脂肪の塊を見せてもらった。脂肪腫を見たいという私の要望に応えていただいた訳だが、麻酔から目覚めてすぐ過ぎるし、体もまったく動かないし、おそらく先生たちも早く処理したいのに目覚めるの待ってなきゃいけなくて「はよ!」て気持ちもあっただろうし、一瞬過ぎてとにかくよく見えなかったのが残念。でも思ったより小さかったという印象だった。記憶では5〜6cm。事前に動画などで見ていた限りではズルズルと10cmぐらい引き出すようなシーンもあったので(気味が悪くて申し訳ありません)、意外とそんなもんかとちょっと不本意な気持ちだった。
しばらく手術室の控え室みたいなところで経過観察。当然麻酔も効いているので痛いという感覚はなく、晴れてそのまままた稼働式病室ベッドで病室に戻るのだった。実は手術から退院までそして一年経った今も、メスで皮膚と肉を切ったことの痛みというのは一度も感じていない。しっかり面談もした高度な麻酔技術があり、もちろん術後も痛み止めの薬を飲んで徹底的に痛みコントロールがされているので、肉を切るということに不安があるという人には心配しなくて大丈夫だと言いたい。
ただ、縫った箇所がジンジンする(打撲のような痛み)とか、傷口から出てくる滲出液を外に吐き出すストローを傷口近くにぶっ刺しているのだが、そのあたりがチクチク気になるというのはあった。
とにかく私の脂肪腫摘出手術はおよそ1時間程度で終わり、大成功で幕を閉じたのだった。

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