バレンタインの生チョコ

毎年、バレンタインデーになると生チョコをつくる。
お正月のおせちや、誕生日のお祝いなどではなかなか決まった物をつくれないけど(そもそも料理がおっくうなのだ)いつの間にかこれだけは慣習になっていた。
誰かのために、というのもあるけれど、きっと、生チョコを一年にいちど思う存分に食べたいんだ。




きっかけは、小学生の頃よく遊んだいとこのお姉ちゃんが毎年作っていたことだった。
10こほど歳の離れたいとこはひとりっ子で、優しかった。当時姉が怖かったわたしと弟は、安息を求めてよく遊びに行ったものだ。


チョコレートを刻み、生クリームと合わせて溶かしたものを、バットに流し込む。
大きなバットの中でねっとり固まったチョコレートを、ムニュッと包丁で切り離し、ココアパウダーをまぶすと、たくさんの生チョコができあがった。
「もっと食べていいんだよ」
口の中でとろけるチョコレートが、たくさん並んでいる幸せな光景。

〝こんなにおいしいチョコレートが、家でつくれるなんて…!〟私には衝撃だった。
しかも、私でもつくれそうだ。



それがはじまりだったと思う。
そうして今では毎年作るようになった生チョコだが、「生チョコなら失敗がない」と思いこんでいた私は、何度も失敗を繰り返した。

湯煎の温度が高すぎてうまくチョコレートが溶けない、ということはよくあった。
温度が高ければいいというものではないらしい。(いまだに適温はわからない)
他にも、チョコレートをビターにして苦すぎる生チョコになったり、バターの塩見がアクセントとなると思い、有塩バターを入れてやたらしょっぱい生チョコが出来上がったりと、さまざまな失敗をしたなと思う。

型のバットや容器も毎年違う物なので、薄かったり、厚くてキューブのような形だったり。やわらかすぎて包丁で切るのが難しかったりと、なかなか毎年、一定のものができないものね…。


2024年の今年は、クーベルチュールチョコレート(詳しくは覚えていないが、なんか本格的なチョコレート。調べたらカカオ成分35%以上のもの、というとだった)を取り寄せて、バターなしのレシピでつくってみた。バターをなくしたのは、ただ買い忘れてしまったからだが、上手くできたら今後は入れなくてもいいかもしれない。

チョコの通販は送料がかかるため渋っていたが、1㎏サイズのクーベルチュールチョコレートが半額になっており、迷わず購入した。これなら送料を含めても元値より安い…!やった。


これは今年の革命だった。
今まで市販の板チョコのパッケージをむき、肩こりと格闘しながらチョコレートを刻んでいたが、今年は小さな(といっても10円玉サイズの)タブレット型のそのまま使えるチョコレート。しかも本格的な、溶けやすいやつ。
袋を開けてバラバラとボウルにのせ、温めた生クリームを混ぜるだけ、という超かんたんさ!なぜ今まで使わなかったのか…。今後はずっとこれにしようと誓った。

作っている途中に、バターを入れないことが不安になり、家にあった有塩バターを2カケラ入れてみた。(2カケラなら、塩分はセーフななず。)
それから、板チョコより甘さ控えめのクーベルチュールチョコレートにしたので、蜂蜜を3まわしくらいかけた。
出来上がった生チョコは、甘すぎず、口どけもよく、美味しかった。
やっぱり、素材が大事なのだ。


来年もきっと、タブレット形のクーベルチュールチョコレートを通販するんだと思う。バターはなしで。
スーパーにもあればいいのにな。
バレンタインデーはついつい、たくさん作ったからと、チョコレートを食べすぎてしまう。

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