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笑顔が素敵なピッチャー・馬場皐輔のこれからに期待したい

本記事は「文春野球フレッシュオールスター2020」応募作品です。(リンクは加筆しております)

本作品で努力賞をいただきました!
上には上がたくさんいるので精進します。

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笑顔には、ふしぎな効果があるといわれる。誰かが笑えば、自然にそのまわりも笑いだすし、楽しくなる。

阪神タイガースの矢野監督は、喜びの感情をかなり表に出し、よく笑う。ナイスプレーが出れば選手やコーチと共に喜びを分かち合う。拳を突き上げ喜ぶその姿は「矢野ガッツ」と呼ばれるようになった。
ベンチの誰よりも監督が笑顔で喜んでいることもよくある。スポナビの一球速報アプリを開いて試合の様子をチェックしていると、良いプレーが出たときに「ガッツポーズ(矢野)」と書かれていることも多々ある。そこ、選手じゃないんかい。
監督の笑顔につられて、ベンチが笑顔になる。ふしぎとチームの雰囲気もよくなる。
昨年の阪神3位の原動力は、笑顔にあったのかもしれない。

矢野政権2年目の今年、阪神の1軍戦力に、矢野監督に負けないぐらいの笑顔を見せる選手が加わった。

馬場皐輔。ばばこうすけ。大卒プロ3年目、25歳のピッチャーである。

(右が馬場皐輔選手)

馬場は笑顔が似合う選手だ。入団会見の写真も笑顔で写っているし、球団公式サイトの選手情報のページも満面の笑み。「馬場皐輔」とネットで画像検索すれば笑顔の写真がたくさん出てくる。笑顔がないのは選手名鑑用の真顔バージョンの写真ぐらいだろうか。

2018年シーズン開幕直前、パシフィコ横浜で行われたセ・リーグ ファンミーティング。このイベントには、好きな球団のドラフト1位ルーキーに手渡しでサインを貰える権利付きのチケットがあった。阪神のサイン手渡しチケットを手に入れた私は、2017年ドラフト1位の馬場からサインを貰えることになった。
サインを貰える参加者は1球団につき100人。アイドルの握手会じゃないけれど、選手とふれあえる時間はめちゃくちゃ短い。短い時間にどんな言葉をかけるかずっと考え続けていたが、答えは出ないまま、あっという間に私の番がやってきた。

「頑張ってください!」
超ありきたりのフレーズしか出なかった私に、馬場は「ありがとうございます!」と笑顔でサイン色紙を渡してくれた。野球少年がそのまま大人になったような、屈託のない笑顔。本当に素敵なルーキーだった。
そのときのサイン色紙は、今も我が家に飾られている。

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(当時頂いたサイン色紙。サイン色紙でもらうのが人生で初めてだった。持ち帰り方がわからず、若干左上が折れてしまったのはご愛嬌)


馬場の昨年までの2年間の1軍登板は、合計4試合。その4回とも、1試合登板しただけで登録抹消されて2軍に戻っていた。馬場にとって、シーズン序盤から1軍で投げるのも、継続して1軍で投げるのも、今年が初めて。開幕1軍こそならず、昇格当初はビハインド時の登板が多かったが、徐々に同点や勝ちパターンなど大事な場面も任されるようになってきている。ストレートにカットボールやスプリットを織り交ぜて、空振りさせ三振を奪っていく投球スタイルで、与えれた登板機会をきっちりとこなしている。

7月21日の甲子園での広島戦、馬場は7回から登板した。田中広輔にタイムリーを打たれて1点を失ってしまい点数は2点差、続く長野久義もヒットで1アウト満塁。バッターは西川龍馬。ヒットが出れば同点、長打が出れば逆転もありうる大ピンチ。絶体絶命の状況で、馬場は西川をピッチャーゴロ併殺に打ち取った。右腕を突き上げて叫びながら、馬場がベンチに走っていく。あふれんばかりの笑顔に、渾身のガッツポーズ。その姿はまるで、全国制覇を決めた高校球児のようだった。「矢野ガッツ」ならぬ「馬場ガッツ」が、生まれた瞬間だった。馬場につられるかのように、阪神ベンチの選手たちも、みんなみんな笑っていた。


リリーフ投手はいつ出番が来るかわからない。その時投げている投手の調子が崩れたり、アクシデントがあったり、登板のきっかけはふとした瞬間に訪れる。肩を作って準備しても、その日は結局投げないことだってある。試合のたび、今日はあのリリーフ投手が投げるだろうか、と考えても、実際に投げるかどうかは試合展開次第。

8月10日、横浜スタジアム。この日観戦に行っていた私は、ついに馬場の投げる姿を球場で直接見ることができた。4-5と1点ビハインドの7回裏。前回の登板で4失点してしまったからか、少し登板間隔があいたからか、リリーフカーに乗って現れた馬場の姿は少し緊張しているようにも見えた。
先頭バッターの中井大介に初球をいきなりセンター前に運ばれたものの、そのあとは後続をフライ、三振、三振と抑えて無失点。17球でしっかりと仕事を終えた。

初々しい笑顔でサイン色紙を手渡してくれたルーキーはもうどこにもいなかった。あれから2年の時を経て、1軍の大舞台で堂々と投げるリリーバーになっていた。中継を見るだけでは感じ取りきれなかったが、馬場はたしかに成長していたのだ。2年の間にこんなに頼もしいピッチャーになっていたのだから、馬場のこれからに、期待せずにはいられない。

馬場の1軍でのキャリアははじまったばかりである。今後、彼はどんなピッチャーになるのだろう。馬場の笑顔をもっと見たい。大舞台の大事な大事な場面でしっかり抑え、満面の笑みで駆けていく彼を、見てみたい。そんなことを思いながら、今日も試合をチェックするのである。

今日は、馬場、投げるだろうか。


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