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ある女の子が産まれた日

その日は出産予定日の半月以上前のこと。

パパは自家用車の車検のために、一泊で地元に帰っていたので、
ママ(と、お腹の女の子)は、お兄ちゃんと、ベッドで寝ていました。

なんとなく違和感でママは目がさめて、、
「破水」したようです。

パパはいない。
お兄ちゃんは寝てる。
ママは、病院に行かないといけない。
おじいちゃんも、おばあちゃんも、遠くにいる。
さあ、どうする。

ママは声も足も震えながら、病院に電話しました。
「破水したみたいです。夫は偶然いなくて、帰りを待ったらあと数時間はかかります。両実家も遠いので、頼れません。」

電話に出てくれた助産師さんは、いいました。
「お母さんはすぐ病院に来てもらわないといけません。だれか、お友達でも、お留守番頼めませんか?」

ママは考えました。
迷惑かも、と言ってる場合じゃない。
友達にお願いしよう。

いちばん近所にいる、お兄ちゃんの同級生のママでもある、お友達に電話をかけて、、
「すごく申し訳ないけど、お留守番たのめる、、、?」

そのお友達は、快く引き受けてくれて、10分もせずにお家に来てくれました。

ママの声も足もまだ震えてる。
だけど、荷物をまとめて、タクシー呼んで、
お友達にお留守番を託して、病院に出発したんだよ。

病院までは40分くらいかかる。
途中でタクシーの運転手さんが、急ハンドルをきったと思ったら、
「見たかい?立派なツノの雄鹿がいたよ。」と言った。
衝突しなくてよかった。

病院について、色んな検査をして、
やっぱり「破水」ということで、ママはそのまま入院することになりました。

このとき、
2023年2月26日に日付がかわったころ、深夜。

たまに少しだけお腹が痛い。
お部屋を移動して、1人で「陣痛」を待ったよ。

朝方3時ころから
おなかの痛みが強くなってきた。
助産師さんにお知らせ。

10分にいちど
7分にいちど
5分にいちど

お腹がギューっと痛くなり
赤ちゃんを外に外に押し出している感じ。

助産師さんたちは、
おなかの収縮と赤ちゃんの心拍をモニターで
別室で見てくれていたけど、
お部屋にママはずっと1人。

お腹がいたくて辛かったけど、
息を長く細く吐きながら、
ウミウシが海を漂う姿を思い浮かべて
痛みに耐えていました。

あと何回、痛いの耐えたら、会えるのかな。
痛くなるたびに、ウミウシ。
お腹の海が、外に外に、赤ちゃんを押し出しているみたい。

おなかの痛みがどんどん強くなってくると
そのたびに「赤ちゃんの心拍が少し下がる」
と、助産師さんが教えてくれた。
へその緒が、首に巻いているからかも?だって。

どのくらいたったころか、
お水が飲みたくなったママは、
横になった体勢から、身体を起こして座ってお水を飲みました。

座ったことで、一気に赤ちゃんが出てこようとする動きが強まったみたい。
ママは動けなくなって、陣痛を座ったまま、なんどか耐えました。

すると、助産師さんたちがバタバタと3人くらい駆けつけてきて、「もう産まれます」と、大慌て!

そこから、一つの無駄もなく、
次の陣痛の合間に車椅子に乗り、別室に運ばれ、
その次の合間に分娩台に乗り、
その次の合間に体勢を変え、、
(ているうちに、もう赤ちゃんが出てきてる)

ママは、一度も自分の意思で「いきむ」ことなく、
赤ちゃんと子宮さんの力、それと、助産師さんの協力だけで、産まれてきたの。

ママがしたことは、呼吸。長く吐く息。
赤ちゃんとママの身体を信じること。
それだけ。

朝、7時40分。
小さいけど元気な女の子が誕生しました。

会えて嬉しい。
産まれてきてくれて、ありがとう。
これからの、あなたの世界を、祝福します。