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背番号「93」 松本友と樋口龍之介

「ファームで無双」という話は漏れ聞こえてきていた。
コロナによる開幕延期、無観客試合と、スタジアム観戦から遠ざかる日々で、私が初めて樋口龍之介のプレーする姿をこの目で見たのは、8月5日、対東京ヤクルトのファーム戦だった。

ファイターズ鎌ヶ谷スタジアムで毎年執り行われる、1月の新入団選手歓迎式典で写真に収めたのが最初で最後。
「ぐっちーと呼んでください」と自己紹介した、樋口。ハイタッチで室内練習場から見送ってくれたぐっちーは、長身が多いファイターズの選手らしからぬ、168cmの小柄な選手だった。

だが、その背中は、三桁の背番号が窮屈そうに感じないほど、広い。小柄さを感じさせないダイナミックなスイングに、「こりゃ無双なわけだ」と納得させられた。

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ベイスターズジュニア出身の樋口は、こどものころからエリートだった。高校は、超名門・横浜高校。経歴は華麗だった。それでも、立正大学から新潟アルビレックスBCへ。プロ野球選手としてのキャリアは独立リーグからスタートした。NPB入りは25歳の育成契約。

タイミングなのだろうか。こういったものは、個人で決められることは何もない。よく腐らず、これまで野球を続けてくれた。おかげでこういう出会いに恵まれたのだ。感謝したい。

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松本友の支配下選手契約のニュースは、夏に入ってきた。ヤクルトの育成選手は、キャッチャー・内山太嗣と、ピッチャー・ジュリアスの2人になった。

支配下登録から約3か月、ようやく神宮にやって来た友さんは、戸田焼けの真っ黒な顔で、少し緊張気味にアップを始めていた。村上宗隆が、友さんに話しかける。7歳差をものともしない、村上パイセン。頼もしい。友さんはきっと、リラックスできただろう。

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今年は中止が決まってしまった、松山秋季キャンプ。去年のキャンプ見学で、元育成選手の大村孟さんとふたり、居残り練習をする友さんの姿がまぶたに浮かぶ。はじめさんもまた、育成契約から支配下登録となった選手だった。

戸田で頑張る育成選手たちを、ファンはずっと見てきた。見守り、応燕することしかできない。それでも、ともに闘う仲間として、ずっと見つめ続けている。

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友さんの背番号は、二桁になっていた。初打席は、代打。ショートゴロに倒れた。いやぁ、まだまだ。これからだ。

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背番号「93」。神宮の杜と、北の大地で躍動するふたりの背中を、私は追い続ける。忙しい。

ぐっちー!友さん!頑張って!頑張れ!

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