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【写真部】走れ、こーたろー! 山崎晃大朗が駆け出すその先に【2022年度ベスト写真】

「今年の1枚」と言えば、村上宗隆56号ホームランしかないだろう。
と、誰しも思うもの。
しかし、こういうものは経験して分かるものだ。

「ああいう“非常時”に、まともな写真は撮れない」ということを。

村上宗隆の写真の出来が悪かったから、というわけではなく、私には心に残る1枚があった。

R4.8.23 tue. @明治神宮野球場

山崎晃大朗、その一瞬。

こーたろーは、今年29歳。同い年には塩見泰隆がいる。

山崎と塩見は、同級生だが同期ではない。
山崎は、2015年ドラフト5位で日本大学から入団。
あの、「真中満フェイクガッツポーズ事件」があった、あの年のドラフト会議だ。
その、日大の先輩・真中満が付けていた背番号31を入団時から付けている。

塩見は、帝京大学から社会人野球のENEOSを経て、2017年ドラフト4位で入団。
その年の1位は、村上宗隆だ。

プロ経験は、山崎が2年多い。だが、2021年、代走、守備固めの出場に留まった山崎は、不動のリードオフマンとして20年振りの日本一に大きく貢献した塩見に水をあけられる形となってしまった。

声がかかるタイミングを自ら把握し、ベンチでヘルメットをかぶる山崎の献身は、三塁側内野席からしっかり見ていた。
組織には、役割分担がある。
塩見と山崎では、バッティングのタイプも違う。
それぞれの立場で、山崎もまた、その与えられた役割を果たし、チームの日本一に貢献した。

しかし、山崎もまた、野球選手なのだ。
同級生の飛躍を近くで見て、自分も高みを目指したいと期する思いがあっただろうか。
そして、同じように代打、代走、守備固めで重宝されていた先輩があっさり馘を切られたのを目の当たりにして、野球選手としての今後に危機感を持ったようにも思う。

山崎は毎シーズン、始まりの好調を維持することができなかった。
自覚はあったようで、自身でも「春先は調子がいいんだけど……」と言っていた。
そんな山崎が今季、シーズン終盤までスタメンに名を連ねることが増えた。
5月25日水曜日、対北海道日本ハムファイターズ戦では人生初のサヨナラホームランを放ち、存在感を見せつけた。

山崎は、入団当初からオールドスタイルを貫いている。理由は分からない。
ただ、173cm/68kgの小さな体と、引き締まったふくらはぎが露出されたオールドスタイルは、相性がいい。
そして山崎は足が速い。濃紺のソックスは、50m走5.9秒の俊足をより演出するアイテムになっている。

打った瞬間、たとえそれが当たりの悪いゴロであったとしても、ヤクルトの選手は常に全力疾走だ。
山崎晃大朗が駆け出すその先に、見据えたレギュラー奪取。

その一瞬に出会えたこの写真が、私の「2022年度ベスト写真」だ。

◇◆◇

7月23日火曜日。熱狂的な燕党として有名だった山本コウタロー氏が亡くなったと報じられたこの日、山崎晃大朗第1打席登場曲が「走れコウタロー」に変更された。
塩見泰隆の第1打席登場曲は「GⅠファンファーレ」。
この1・2番コンビに、明治神宮競馬場は盛り上がった。
来季も、楽しみに待っている。

走れ、こーたろー!

※昨年の「今年の1枚」です。

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