「捕手コーチ」野村親子の仕事の流儀

「……カツは?」

野球ファンが驚いた、楽天の監督交代劇。石井一久GMが、GM職はそのまま現場に就くという報道だった。
「全権指揮官」というパワーワードとともに知らされた人事。楽天は、勝つためにいつも新たな取り組みをしている。
三木肇監督は、二軍監督に。2019年にその姿を見てきたヤクルトファンは、それならそれで、はじめちゃんに会いに行けばいい。そんな風にとらえるだけだった。

その後、開示された2021年首脳陣人事。

伊藤智仁と野村克則の名前がなかった。

戻ってくるのか?ヤクルトに。でも、はじめちゃんは「カツノリと一緒なら」という条件を上げ、楽天に行ったと聞いた。はじめちゃんは、どうするのか。
ともさんは……帰ってくればいい。

はじめちゃんとカツノリは、同期入団。他には、東京ヤクルト・宮出隆自ヘッドコーチと、石井弘寿投手コーチ。指名はこの4人だけだ。
大卒はカツノリ。あとの3人は高卒。カツはひとりだけ4歳年上だが、この4人で熱海一泊の懇親ゴルフ旅行をする仲だ。

4人とも、2014年から2018年まで、コーチとしてヤクルト球団にいた。その間、優勝もしている。雄平の優勝決定サヨナラタイムリーの真中満監督を囲み、ぴょんぴょん跳ねて喜ぶカツとはじめちゃんを、「選手みたいだな」と、ファンはほほえましく見ていたのだ。

おじさんの就く職業であるコーチたちが、選手のように熱く戦っている。それが、三木肇という人で、野村克則という人だった。

◇◆◇◆◇

「カツは?」から1日後に、カツの進路が発表された。

育成捕手コーチ。初めて聞く役職。急いで12球団のホームページを確認しても、捕手コーチという肩書は見当たらなかった。なんだ、戻ってこないのか。でも、はじめちゃんを残して楽天を去るわけにはいかない。これが正解なのだろう。

「育成捕手コーチ」という仕事がどういう仕事か分からない。でも、恩師(父)、野村克也は常々言っていた。

「捕手コーチっていうのが必要なんだよ」

捕手の指導は、バッテリーコーチが行っている。だからなのか、バッテリーコーチは捕手が担うものだ。
「バッテリーコーチ=捕手コーチではない」。それが野村克也の持論だった。
野球を知らない私は、文字通りに受け取るしかない。

バッテリーコーチは、バッテリーのためのコーチであり、捕手のためのコーチではない。
しかし、野村克也の指導を見ていると、ゲームメイクは捕手の仕事。だから、バッテリーも捕手主導。
野村克也の指導法では、「バッテリーコーチ=捕手コーチ」ということも言えるような気がする。

でも、野村克也は、それが違うと主張し続けた。

だから、違うのだな。バッテリーが捕手のものだとしても、バッテリーコーチは捕手コーチではない。野村克也の中では。

前例にとらわれない取り組みを続ける楽天という球団に誕生した、前例のない「捕手コーチ」に、野村克則が就いた。

これが、野村親子の仕事の流儀か。野球がおもしろい。

で、育成捕手コーチって、どこにいる人?神宮で会える?それとも鎌スタ?

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