「6さま」から「6くん」へ 元山飛優

ソファーに着弾したのは、7時だった。急いでテレビを付ける。3回裏。オリックスの攻撃。まだ3回か。……ん?んぁ!

オリックス 7-0 ヤクルト

3回で7点差!?何があった!

先発・石川雅規が炎上していた。1回裏に1点先制され、2回裏に6点の大量失点。1回2/3、58球でノックアウト。試合前、誰がこんなことを予想しただろうか。
対するオリックス先発・山﨑福也は5回1失点57球。あまりに対照的な出来に、思わずため息が出る。

しかし、この山﨑福也からもぎ取った1点は、期待のルーキーが放った初タイムリーだった。

元山飛優。東北福祉大学からドラフト4位で入団した内野手だ。

元山は、7年ぶりにヤクルトの背番号「6」を復活させた。
前任者は、宮本慎也。ショートの名手で、2000本安打も打った、言わずと知れたヤクルトのレジェンドだ。2018年にはヘッドコーチとしてヤクルトに戻ってきたが、当然背番号は「6」ではなかった。2年でユニフォームを再び脱いだあとは、NHKの解説者として野球を外から見ている。

長い間、空き番号だった背番号は、その期間が長ければ長いほど神格化され、後から付けることのハードルはどんどん上がっていく。
ヤクルトの背番号「6」も、そうなっていた。
だから、その背番号をあっさり(というように見える)タイミングで与えられたこの元山飛優という野球選手は、やはり希望の星なのだろうと、そう思った。

その元山が、序盤の重苦しい空気を文字通り打ち破った。オープン戦ながらプロ初タイムリーに、思わず笑みがこぼれる。
背番号「6」=ショートのイメージで間違いないのだが、こうしてバッティングで結果を出していく元山の姿に、夢がどんどん膨らんでいく。

しかし同時に、先日読んだ記事が頭に浮かんだ。背番号「6」の前任者が、現「6」のバッティングに言及している記事だ。

……背番号「6」のせいだ。あの背番号を見ていると、気が休まらない。こんな夢と希望のタイムリーの後でもシャキッとなるのが、ヤクルトの背番号「6」なのだ。

元山のバッティングが崩れないよう、助言している。足の速い元山の特性を捉えている。私のような素人には分からない視点だ。

宮本慎也は、つば九郎から「6さま」と呼ばれていた。

元山飛優は、謂わば「6くん」だ。

「ショートに目立ちたがり屋はいない」という指摘は置いておくとして笑、今日の元山のバッティングが「走り打ち」だったのかどうかは分からない。しかし、まだシーズンは始まってもいない。
これから元山が、今日のようにしっかり塁に出て点を取れるよう、「しっかりスイングしてから走る」というこの「6さま」からのメッセージが、「6くん」に届きますように。

R3.3.10 wed.
B 7-6 S オープン戦
京セラドーム大阪

1点差まで詰めたの、すごくない!?

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