366日/HY
ドラマの主題歌として知ったこの歌を、ふいに歌番組で聴いた。イントロが流れ、つい顔が上がり画面を見つめる。
366日/HY
ミディアムスローで進行するテンポが、爽快で心地よい。
聴きながら、仲宗根泉の「琉球コブシ」を真似てみる。当然、上手くいかない。
声帯の柔軟性、発声の仕方、歌詞に込めた思い。すべて身についていないのだから、当たり前だ。
「戻れないと知ってても……知ってても……」
「私を好きになる……私を……私を好きになる……好きになる……」
上手くいかないなぁ。仕方ないか。
そんな風に、聴きながら、歌いながら、身の入らぬ視聴をしていたとき、急に涙があふれ出た。
あの時 私 忘れたらよかったの?
今の今まで、「コブシを回せない」と首をひねっていた私が、この一節に胸を押しつぶされた。
涙は、噴水のように噴き出した。頭の中では、マーライオンのような噴出の仕方だ。
この歌が主題歌だったドラマ「赤い糸」は、高校生の恋愛を描いた物語だ。ケータイ小説がドラマ化された、若者の文化だったこのドラマを、何故か私は毎週見ていた。
当時、私は30代。たしかに高校生の恋愛は切ないが、もう20年も前のことだ。単純に物語を楽しんでいた。
そして、「366日」もまた、忘れ得ぬ恋人を思い続ける歌だが、この歌詞のような、胸が締め付けられる恋愛を経験した過去もない。
なのに、泣けたのだ。
「忘れられたらよかった」ではなく、「忘れたらよかった」。
忘れられない人を乞う自分に言い聞かせても、答えは出ない。忘れようと思って忘れられることなど、何もない。それが愛した人なら、なおさら。
仲宗根泉の力強い歌声は、真っすぐな意志を持って、私の胸に突き刺さった。
そして、ふと、卒業式で終わらせられていなかった片思いを思い出した。
note連続投稿366日目の今日の日に。
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