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白い石山

久々に見たたいちは、いつもどおり投げていた。2019年、前年築き上げた勝利の方程式が崩れた投壊ヤクルトは、大型連敗から浮上できず最下位に終わった。セットアッパー、クローザーが固定できないことが、これほど苦しいものなのか。そう思い知らされた辛いシーズンだった。そんな中でも、中継ぎのハフ、抑えに回ったマクガフはいつもマウンドで力強い投球を見せてくれ、梅野雄吾という20歳の若い投手が、最年長40歳の五十嵐亮太と中継ぎの双璧を担ってくれた。ファンは感謝しかない。

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▲2020.2.9 sun. 春季キャンプ in 浦添ブルペン

石山泰稚は秋田県出身。出身校は金足農業高だ。昔から高校野球の名門であったはずだが、近年は夏の甲子園準優勝投手・吉田輝星の「金農旋風」で有名になった。東北福祉大-ヤマハから、2012年ドラフト1位で入団した。
社会人経験のある即戦力のドラ1ピッチャーは1年目からセットアッパーとして結果を残したが、先発への転向と右肘の故障で不調にあえいだ時期もある。2017年、再びセットアッパーへ転向したあと、翌2018年にクローザーとなり、2位躍進の立役者となった。1年目、2013年以来のクローザーという役割は、たいちに合っているのかもしれない。そう希望をもって応燕していた。

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▲2019.6.4 tue. 対北海道日本ハム戦 札幌ドーム

2019年シーズン、前年に確立した、中尾-近藤-石山の『勝利の方程式』はシーズン序盤で崩れた。クローザーの石山もコンディション不良で離脱し、復帰したもののインフルエンザ罹患で7月に再度登録抹消となる。オールスターゲームの出場も決まっていたが、辞退した。

不安だった。コンディション不良という野球界では一般的に使われる体調不良は、整形外科的なけがや違和感なのだろうと想像がつく。だが、インフルエンザというウイルス感染、しかもよく流行する季節ではない夏場の罹患に、何故?という思いがよぎる。人から人に伝染るのがウイルスだから、流行期でなくとも罹ることはあるだろう。だが、戻ってきたのは7月5日の抹消から約2か月後の8月29日。インフルエンザがここまで長引くなんて、どんだけの体調不良なんだ。たいちの体は大丈夫なのか。まさかインフルエンザをこじらせて、重症に陥っていたのか。

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▲2019.6.19 wed. 対ソフトバンク戦 明治神宮野球場

たいちは、秋田美人だ。色白。細身。朴訥とした口調。楚々とした秋田小町をほうふつとさせる、美しい選手だ。
だからふと、考えてしまったのだ。たいちのあの白い肌は、なにか重大な病気の予兆だったのではないか、と。私が長い手足から繰り出されるフォークにうっとりと見とれていたあの時間にも、たいちの体を病魔がむしばんでいたとしたら。たいちは本当に、大丈夫なのか。だって私は2か月も、たいちを見ていないんだぞ!

たいちがいない神宮で、そんな風にたいちに思いを馳せているうちに、シーズンは終わってしまった。

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▲2020.2.8 sat. 春季キャンプ in 浦添 山田哲人を三本間に挟む!

年が明け、たいちは浦添キャンプにいた。いつもどおり投げているたいちを見て、私はシャッターを切りまくった。相変わらずの、透き通る白い肌だ。だがたいちはしっかり、野球をしていた。たいちがそこにいて、投げていること。それがこんなにありがたいなんて。

2020プロ野球開幕まであと12日たいち22

体大切に。ファンというものは、元気な野球選手を、いつでも見つめていたいものなのだから。開幕まで、あと12日。



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