見出し画像

Q.E.D 中尾輝

2017年からの復活。それは、球団だけでなく、ファンの課題でもあった。

本当に、辛いシーズンだった。けが人が続出したことが96敗の理由だろうと、そんな評価になっていた。それはそうなのだろう。ただ、そのことでチャンスが巡ってきた若手選手たちを「美女木スワローズ」と揶揄したあの風潮が、なにより嫌だった。若い選手は、経験を積ませ、プロ野球選手として育てなければならない。ただ、ベテランと呼ばれる30代の選手が主力のヤクルトは、その“経験を積む”という機会が若手に巡ってこないチームでもあった。この状況を「チャンス」と言ってしまうのは、離脱した選手に申し訳ない。ただ、若い選手をグラウンドに送り出すための鼓舞としては、ぴったりな言葉だった。

頑張ってこい。お前らは、抜けた穴を埋めるピースじゃない。鬼の居ぬ間に、存分に野球してこい!

そうやって前を向き続けた、そんなどん底のシーズンだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2018年は、交流戦1位という“ひょんなことから”勢いづいた。それまで最下位に低迷していたヤクルトは、息を吹き返した。
その、ヤクルトに息を吹き込み、吹き返させたその人が、2年目の中尾輝だった。

画像2

名立たる解説者たちに「予想外」と言わしめた、中尾-近藤-石山 の7・8・9回は、まさに盤石の体制。セットアッパーだった石山がクローザーに転向してできあがった新方程式は、先発からバトンを受け、そのバトンをベテランの近藤に渡す大役を中尾が務めることで証明された。この計算式を、ファンは「勝ちパターン」と呼び、その美しさに酔いしれた。チームは急上昇を遂げた。
2年目、美女木スワローズ出身の中尾輝が、近藤、石山という経験豊富な先輩に交じり躍進する姿は、前年見た若手の躍進と重なり、楽しかった。いや、ヤクルトの選手は皆、美女木スワローズ出身じゃないか。臆することなく神宮へ来い。そして存分にマウンドを担え。中尾輝は、頼もしくてかっこいい、勝利の方程式そのものだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

2019年、中尾の離脱とともに低迷したヤクルトは、浮上することなく終わってしまった。
輝がいないと、勝利の方程式は成立しない。つまり、ヤクルトは勝てないということか。そうか。

2020プロ野球開幕まであと13日ひかる22

輝がいないと、ヤクルトは優勝できない。Q.E.D

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?