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アビスパJ1昇格〜愛媛より愛を込めて〜

2020年1月9日。今年のアビスパ福岡が始動した。

長谷部茂利新監督は「勝点81を目指す」と宣言した。

https://www.nikkansports.com/soccer/news/202001090000481.html

月日は流れ2020年12月16日。第41節愛媛FC対アビスパ福岡。

残り2試合。

アビスパは勝ち点78を積み上げ自動昇格圏内の2位。

3位の長崎は勝点76。

1試合で引っくり返る予断を許さない状況。

そんな状況の中で平日極寒の愛媛には300人以上のサポーターが集結した。

私もそのひとりだった。

自分が行ったとて。勝敗には何ら影響しないことは分かっている。

それでも行くことを決めた。

もちろん目の前でアビスパが勝ち、昇格するところを見たいという気持ちもあった。

ただそれ以上に2020年アビスパの行く末を最後まで現地で見届けたい。

1人でも多くのサポーターがチームを信じて、愛媛まで来ているんだという所を見せたい。

そんな想いの方が強かった気がする。

そう思わせてくれるだけのモノが今年のアビスパには間違いなくあった。

辿り着いたニンジニアスタジアム。

気温は4度。ありえん。めっちゃ寒い。

秋春制なんてどう考えても馬鹿げてる。

ただここまで来たらやる事は1つ。最高の雰囲気を作って勝つ事だけ。

ハリセンや手拍子をアビサポが掻き鳴らす中。試合は始まった。

開始2分早速フアンマがイエローカードを貰ってしまう。

カードコレクターとはいえ、幾ら何でも早すぎるカード。

不穏な空気。

そして遂に恐れていたことが起きてしまう。

開始4分。ピンチの状況で相手選手と競り合った上島拓巳。

レフリーが笛を吹く。

「あっ…これはマズい!」

主審はイエローカードを上島に提示した。

溜息と不服が入り混じったゴール裏。

そのカードはここまで全試合に出場してきたDFの要が大一番の最終戦に出られない事を示していた。

「何としてもこの試合で決めなければ…」

そんな想いがより一層強くなる。

しかしそんな重い空気を吹き飛ばしてくれたのは、他ならぬ上島だった。

アビスパが得た最初のCK。

J2アシスト王エミルの右足から放たれたボールを上島がニアですらす。

そのボールに山岸が詰める。

アビスパが今季手にした武器セットプレーでのゴールだった。

正直。現地では誰が決めたのか分からなかった。

ゴールが認められたかも分からなかった。

とりあえず喜んどこう!そうすりゃ認められるかもしれん!

そんなノリだった。

そんなノリが通じたのかはともかく無事アビスパは先制した。

前半の給水タイム。

ゴール裏では当然他会場の結果が気になる。

徳島1−0大宮

長崎1-0甲府

やはり昇格争いしている3チームはそう簡単には取りこぼさない。

この時点でアビスパも先制出来ていて良かった。

選手は気にしてないだろうが、サポーターに変に焦りが生まれる所だった。

1−0のままハーフタイムに突入すると思われた前半アディショナルタイム。

セランテスのゴールキックにフアンマが競り勝つ。

そのボールに反応したのがエース遠野大弥だった。

シャペウで相手を交わす。そして左足を振り抜く。

もう彼に迷いはなかった。

ボールはゴールネット右隅に突き刺さる。

素晴らしいゴール。

彼もまた上島と同じようにアビスパで昇格争いをする中で大きく成長してくれた。

試合は後半。

アビスパは危なげなく試合を進めていく。

「今のアビスパはやはり強い」

自信を持ってそう言えるチームの姿がそこにはあった。

後半の給水タイム。

ゴール裏が異常にざわついた。

「甲府が追いついた!!!」

盛り上がるゴール裏。

選手達もその空気を感じ取ったかもしれない。

多くのアビスパサポーター達は正直浮かれてた。

だが完全には油断しなかったはずだ。

「我々はまだ何も手にしていない」

「2−0は危険なスコア。勝ちを確信してたのに何度追いつかれたことがあっただろう」

「2015年最終節。ジュビロが追いつかれた1分後に逆転」

数々の辛酸を舐めてきた歴史が私たちに語りかける。

アビサポはそういった経験値はJリーグのサポーターの中では随一だ。

そこはある意味誇れる点かもしれん。

もうそんな歴史には終止符を打ちたいが。

時が進むに連れてアビスパの勝利は揺るぎないものとなっていく。

そして試合は2-0のまま終了。

負けられないアビスパはプレッシャーに打ち勝ち勝点3を掴んだ。

そしてシーズン当初目標にしていた勝点81に到達。

目の前の試合が終わった後は、まだ終わっていない長崎の結果次第。

選手達もベンチ前でタブレットを囲む。

サポーターも祈るような思いで画面を見つめる。

この時の光景が凄く好きで。

現地で見ても映像で見ても。皆んなが同じ想いのもとでひとつになっていた。

そして遂にその時は来た。

ゴール裏と選手達がほぼ同時に歓喜の声を上げる。

ようやく成し遂げた!5年ぶりのJ1昇格!

この素晴らしい監督、選手、スタッフ。

このメンバーで送った素晴らしいシーズンが無にならなかった。

結果を残せた。

嬉しいという気持ち以上にそういった安堵の気持ちの方が強かったもしれない。

知らないサポーターと喜び合う。選手達もはしゃいでいる。

幸せな光景が広がっていた。

「ここにいられて本当に幸せだ」

もちろんこの状況下来れない人の方が多かったはず。

それでもその人達の想いは皆んな同じだったろうし、アビスパを愛する皆んなが幸せになった瞬間だった。

興奮しすぎてホテルに戻った後も暫くは眠れなかった。

深夜地上波で流れていた試合をもう一度見てしまった。

SNSもひたすらに漁ってた。

それくらい嬉しかった。

今回。自分がサポーターになってから3度目の昇格だった。

今回の昇格はこれまでの昇格とは違う意味合いがあるように思う。

今までは何処か昇格することがゴールになっていたように感じる。

しかし今回はようやくスタートラインに立てたという思いが強い。

長谷部監督の招聘。

的確な選手補強。

シーズン中何度も起きたトラブルへの対応力。

クラブとしての力がついてきているのを肌で実感したシーズンだった。

このままJ1に挑戦し定着する。

その為のスタートラインに立てた安堵感を自分は今回凄く感じた。

「J1昇格して残留しないと歴史が始まらない」と中村北斗は言う。

「クラブの目標はJ1定着。5年周期は最後」と城後は話す。

アビスパに長く関わっている人達は、痛い程その意味分かっている。

ここからが本当の戦いになる。J1で迎える2021シーズンが楽しみだ。

そして。その前に徳島との最終節が残っている。

7点差以上の勝利で優勝の可能性も残している。

正直現実的では無いかもしれない。

しかし長谷部さんの言葉を借りるなら「後1試合あるので夢を追いましょう」

例え逆転優勝出来なくても、徳島に勝点84で並びシーズンダブルする姿が見たい。

後1試合。

昇格が決まった両チームによる最高のゲーム。そしてセレモニーが見られるのが楽しみだ。

非常に高揚している。

アウェイでバモるサポーターがひとり増えます