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真夜中、黒いエプロン隊。
みなさま、こんにちは。
この週末は本当に久しぶりに予定も〆切もない、フリーな休日がやってくるわ~と思っていたら、金曜の午後になって親戚のおばさんから電話がかかってきました。
「くみちゃん、明日から来れる?」
ハイ休日消えた~。
「来れる?」というのは「葬式の手伝いに来い」ということを意味します。一見こちらの都合を聞いているように見えますが、実際は「何を差し置いても来い」という指令です。そして「明日から」ということは複数日手伝えということを意味します。
外洋の島・シマ島には葬儀屋がないので、誰かが亡くなると島民総出で葬式を執り行うことになります。しかも、長い。とにかく長い。亡くなった日に始まり仮通夜から葬儀、納骨、初七日まで長いときには1週間以上にわたってさまざまな儀式があり、ひとつひとつに厳しいしきたりがあり、ほぼすべての儀式に喪主家族以外の島民が参加するのです。
誰が表(参列)か裏(斎場の設置、配膳、備品準備等)か、というのも決まっています。裏方に回るのは、亡くなった人の親戚、同級生、隣組を中心に集められ、人数が足りないと遺族の親戚、同級生・・・という風に枝葉をたどっていきます。
でも離島の小さなコミュニティでは「親戚筋」というのが非常に複雑なんですよ。島のジイチャンバアチャン世代は兄妹が多い上に、結婚相手も地元や近隣の島の人というパターン多数。簡単に言えば「みんな誰かの親戚」なのです。
おまけにシマ島では昔、共働き夫婦に生まれた赤ちゃんを血縁関係のない家族がある程度の年齢まで育てる、という独特の風習があったようで、「血のつながっていない親子」が結構います。小さい島で支えあう中で生まれたシステムなのでしょうが、冠婚葬祭においては人間関係をさらに複雑怪奇にするのです。
そんなわけで、誰かが亡くなって初めて「あんたんとこ親戚だよ」と判明することもよくあることで、
「初めまして」が遺体
ということもわりとあります。
衝撃の出会い
まあそんなわけで、いったい誰の葬式に声がかかるかさっぱりわからず、一度呼ばれると数日間拘束されるので、誰かが亡くなるたびにビクビクしてしまうのでございます。
今回はそれにバッチリハマったわけなんですね。亡くなったおバアチャンはうちにザビママと仲良しで、うちにもよく遊びに来ていたのですが、ダンハンのザビ男に聞いても親戚じゃないという。遺族関係も親類縁者がかなりいるので今回はないと思っていただけに、「なんで声がかかったんだろう?」と謎だったんですが、ひとまず言ってみたら近所のおばさまたちに
「死んだジイサンといとこだよ」
と言われて思わず
「知らんがな!」と心の中で叫んでしまった次第です。
ともかくこの週末は葬式の手伝いに出動しているわけなのですが、女方の手伝いはTPOで装いが全て決まっております。
例えば裏方だけで準備するときは「クリー」。クリーというのは黒っぽいという意味で、要は黒とかグレーとか茶色とかそういう目立たない地味な色の服を着てこいということ。ストライプとかちょっとした明るい色は許容範囲。
これが参列者が来る通夜や葬儀などはホントに「クリー」のになります。エプロン、シャツ、パンツ、靴下まですべて黒。クリーはクリーでもマックリーやつですね。なので、島で暮らすには黒いエプロンが必須アイテムで、わたしも移住してすぐに購入しました。
せめて気分だけでもとバリスタエプロンしてみた
ちなみに参列する側になると「クロ」にしろと言われます。これは喪服ですね。葬式関係ではこの
クリー、マックリー、クロ
の三段階がドレスコードとしてひそかに存在することを、この5年でつきとめました。
余談ですが、黒いときは「クリー」、暗いときは「クレー」というトリッキーな違いもあります(ややこしや~)
そんなこんなでここ数日はクリーエプロン隊として夜の島を暗躍してまいりました。シマ島では「1人死ぬと3人死ぬ」というジンクスがあるので、このままクリーのはしごにならないよう切に願います…。
以上、じじょうくみこでした。
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