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アラフィフで結婚すると、人は結局「うの」になる。

みなさま、こんにちは。自粛解除で急に忙しくなってきて、カラダがまったくついてこないじじょうくみこでございます(疲労困憊)

さて、6月も後半戦に入ってまいりましたが、6月といえばジューンブライド。今年ご結婚される方は、本当に大変だと思います。結婚式を挙げるのに、こんなに大変な思いをするのかということを5年前にさんざん味わっただけに、その心労を思うと胸が苦しくなります。どうか無事すばらしい門出の日を迎えられますように。

というわけで、アラフィフともなると結婚式というものはおそろしく複雑怪奇な事態になるのだなというお話を、本日からしばらくの間、シリーズでお送りします。まずは、発端となるお話から。

カモメ


そもそも結婚式を、挙げるつもりなどなかったのです。


長らく独身生活を送ってきたシマ島のザビ男とわたくし、じじょうくみこでございますので、そんなふたりが結婚するというのは確かにエポック・メイキングというか革命というか事件というか、とにかく大変な出来事ではあります。

とはいえふたりとも、目立つことは大の苦手。喫茶店の隅っこでちんまりとコーヒーをすすっていればご機嫌ですし、なにしろいいトシのオッチャンとオバチャンですので、願わくば「あら知らないうちにあそこに嫁さんいるわー」ぐらいの感じでひそーり、こそーり、静かーに結婚生活を始めてしまいたい。

ところが前回ザビ家に結婚のご挨拶に行った際、ザビパパに

「大げさなことはしなくていいから、何らかの祝宴を催してほしい」

と何度もお願いされ、これはどうしたものかと思っていたのです。これから家族として共に暮らすのですから、祝福してくれる気持ちはありがたく受け止めたい。それに島の方々と宴席で親睦を深めることができれば、島での生活がスムーズになるのかもしれないという計算が、わたしのなかに芽生えたのでありました。

一方、わたしの母には「結婚して島に行くことにした。今度改めて挨拶に行くから」と電話で報告いたしました。すると母は一瞬絶句して

「……えー、くみちゃんってもっと面白い生き方するのかと思ってたー」

ようやく片付こうかという娘に対して、そのガッカリ感なに! とツッコもうかと思ったのですが、そんな隙も与えずに母は

「だったら大げさなことはしなくていいから、何かやってほしい。くみちゃんのドレス姿を見せてほしいなあ」

まさかのキラーパスをぶっこんできて、こちらを絶句させたのでありました。

今までそんなことは一度も言ったことのない母でしたので、「ドレス姿が見たい」とくり返す母に戸惑うばかり。長年心配かけてきた娘としては、母の願いはできるだけかなえてやりたいと思うものの、さてどうしたものかとザビ男に相談すると、

「じゃあ身内だけで食事会すればいいんじゃない? 東京なら双方で集まれるでしょ。そのときにくみちゃんはドレスを着ればいいよ。ただしタキシードは着ないよ? 紋付袴ならいいけど、タキシードなんて恥ずかしいものはぜったい着ないからねっ!」

袴とドレスの新郎新婦ってそのバラバラ感どうなのって疑問はありますが、とにかく親が喜ぶならば何らかの宴をやりましょうか、ということになったのです。

祝宴開催にあたって、ザビ男と考えたのは以下の条件。

・互いの親族と近しい友人を呼んで30人程度の食事会
・時期は暑さ寒さで体に負担がかからず、雨も少なさそうな5月頃
・地方からのゲストが多いので、場所は都内のターミナル駅からアクセスのいいエリア
・ふたりとも神社仏閣好きなので、挙式するなら迷わず神前式(でも高いなら挙げなくてもOK)
・衣装は和装、ドレスは最近流行っているらしいフォトウェディング(貸衣装+スタジオ撮影)で写真だけ撮って手を打つ

母には申し訳ないのですが、どうしてもウエディングドレスを着て人前に立つ気にはなれませんでした。ワンピースですら大変な困難を伴うオバハン体型なのに、くびれ命のドレスなんて


ワアアアァァ( °∀°)ァァアアア


す、すいません、いま想像しただけでリバースしそうになりました…。

ザビ男は着物が似合うタイプですし、わたしもこの機会に着物デビューをはたしたいところ。とにかく堅苦しいことはナシにして、ごく親しい人と簡単な食事会をすれば万事OKでしょ! と話はサクサク進んでいったのです。


左4c


なんだろう、いやな予感しかしない


雲行きがあやしくなってきたのは、会場探しを始めてしばらくのことでありました。

それにしても、いまどきは高級ホテルでも10人単位の家族ウェディングなんてやっているんですねえ。しかも談合でもしてるんですかってくらい、どこも見事に料金横並び。

少人数の食事会ができるところなんてそうないだろうと思っていましたが、予想外に選択肢が多くて途方に暮れるばかり。それでもザビ男と相談しながら、いくつかの会場が候補に上がってきたところで

「やっぱり東京には行けないわ」

といきなり母が言いだしたのでありました。

70代の母は体が強くないので、長距離移動が負担になるのでは…と気にはなっておりました。それでも姉が付き添いで来てくれるし、なんとかなりそうだと思っていたところが母の中で何らかの変化があったのでしょう、急に態度を硬化させ、わたしが何を言ってもきかなくなりました。

おまけに母の弟である叔父さんが人工透析を始めるハメになり、気弱になった叔父さんからも「行けない、ごめん」との連絡。結局わたしの親族は姉と妹だけが参列することになったのです。それだけならまだいいのですが、

「東京には行けないけど、何かしらやってほしい」

と母が言ってきかず、結果的に

東京と新婦故郷の2ヶ所で祝宴開催

という、ちょっと面倒くさいことになってきたのでありました。

「ムリして体調を崩すよりはいいだろう、私たちが出向けばいいことだ」というザビ男の言葉にウンそうねそうねと気を取り直し、今度はザビ男側の親族が集まりやすい場所で会場を考えようということになりました。

90手前のザビパパは、このところ足の調子があまりよくない様子。そこで、車イスOKのバリアフリー&ウォシュレットのある会場を重点的に探すことにしたのです。

ところがウェディング慣れしている会場の多くは内装が凝った作りになっていて、段差が多かったり通路が狭かったりと、バリアフリーになっていないところが意外に多いことが発覚。いいなと思う会場が見つかっても「エレベーターさえついていれば…」「せめてウォシュレットだったら…」と泣く泣くあきらめることも一度や二度ではありませんでした。

もともと結婚式には積極的ではなかったわたくしです。苦戦する会場探しに「もうやらなくていいんじゃないかな」と根を上げそうになりました。ところがそういうときに限って

「あと少しだから、一緒にがんばろうよ!」

と、どういう風の吹き回しかザビ男が珍しくやる気を見せるのでありました。いやね、やる気になるのはいいんですけどね、

一緒も何も、アンタ離島にいるんだから動くのはわたしなんですけど!?

という言葉を飲み込んだのは、ここだけの話であります…。


そんなこんなで探しに探しまくって、ようやく予算と希望に見合った会場を見つけられたのは3月に入ってからのこと。駅から少し離れた場所ではありましたが、こじんまりした路面店のレストランで、バリアフリー&ウォシュレット完備。1日1組限定の貸切で、控え室やウェイティングスペースが広く、ゲストにゆったり使ってもらえそうなところが好印象でした。

料理もあっさりめで、魚料理が得意なところも高ポイント。しかもここで契約すると、提携神社で挙式が格安でできるうえ、和装を式からパーティまで通しで使えると聞いて、「よし、ここだ!」と。ただし下見の時点で既におおかたの日程は予約が埋まっていて、おさえられるのは6月しかありませんでした。というわけで…

東京&新婦故郷で祝宴2ヶ所開催
しかも結果的にジューンブライド

ってヤダなんか結婚する気マンマンなカップルみたいで恥ずかしすぎるっ!!

と複雑な気分でしたが、もはや会場探しだけで精根尽き果てていたので、ようやく決まってひと安心。本契約も交わして、あとは粛々と準備を進めるだけ…というところで

「結婚式には行きません」

と突如としてザビパパが言いだしたのでありました。

ええええええええええ|゚Д゚)))


ザビ男によると、ザビパパは数日前に家の中で転倒したというのです。幸い骨折などもなく体は無事だったのですが、どうも心がポキッとなってしまったようで、ザビ男が何を言っても頑なに「東京なんてムリ、ぜったい行かない」の一点張り。そうなるとパパをひとりで留守番させるわけにもいかず、自動的にザビママも参列できないことになりました。

親のための祝宴が、両家そろって親が欠席する事態!


これじゃあ何のためにやるのかとションボリしてしまい、「まだ全額払ってないし招待状も出してないから、やめちゃおうか…?」と切り出したのですが、ここでまたザビ男が再び

「オヤジは出席するようにちゃんと説得するから。本土に親戚もいるし、こうなったら友だちをもっと呼んでパーティやっちゃおうよ」

と妙なやる気を見せたので、結局そのまま決行することになったのでありました。

けれど、結局ザビパパの気持ちは変わりませんでした。わたしも島に行って説得したものの、もはや聞く耳もちませんという感じ。そのかわり、パパはこう言いました。

「私は東京には行きません。でも、何かしらやってくれないかね」

はいはいはい
といったわけでですね、


東京&新婦故郷&新郎故郷の3ヶ所にて
祝宴全国ツアー開催決定~~ヽ(;▽;)ノ


なんだ、この神田うの状態……

*神田うの:自身の結婚式を9回も挙げたウェディング界のレジェンド。

若いときの結婚もそれはそれで大変だと思いますが、オバフォーはオバフォーでまた別の大変さがあるのだと思い知った、じじょうくみこでありました。明日へつづく。

Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

*この記事はウェブマガジン「どうする?over40」で2015年に掲載した連載の内容を一部アレンジして再掲載したものです。

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