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<1>泣きじゃくる20代と、闊歩する70代の狭間で。

さてさて2023年、今年は書くぞー!と思ってふと履歴を見たら、じじょうくみこが10歳になってました。

ウェブマガジン「どうする?Over40」で「崖っぷちほどいい天気」の連載を始めたのが、2013年5月。あれからの10年、なにこの激動。

長年ブログを書いている、あるカメラマンさんが最近「同じ日の10年前と今日」みたいな感じで古い日記と当日の日記を並列で載せていて、そういう見せ方もあるのか面白いなーと思っていたところだったので、しばらくやってみようと思います。

そんなわけで勝手に「プレイバック・じじょうくみこ」企画。今日は、じじょうくみこが誕生した2013年5月11日の連載第1回です。当時は派遣先のトイレで原稿書いてました。

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*** 2013年5月11日の記事***
<1>泣きじゃくる20代と、闊歩する70代の間で。



みなさま、お初にお目にかかります。「じじょうくみこ」と申します。

昼間は派遣OLとして働いたり、夜はフリーランスで文章を書いたりなんだりしている、哀愁あふれるアラフィフ独女でございます。以後、お見知りおきのほどを。

いきなりで恐縮ですが、先日会社のトイレに入ったときのことです。

私が働いている会社の女子トイレには、個室が3つあります。ランチタイムの混雑が過ぎ去った昼下がり、誰もいないトイレで私は手前の個室に入り、ひと息ついておりました。すると突然女子トイレの入口が開き、誰かがドスドスと入ってきてひと言、


「オスカルいる〜? ちょっとオスカル今すぐ出てきなさいよ〜」


「あ、はい」

と一瞬躍り出してしまいそうになりましたが、待てよ私いつからオスカルだっけか? とふと考え直し、もしや秘密裏にオスカルと呼ばれていたのかもしれない、前世でオスカルだったことはないか、と逡巡していると一番奥の個室のドアがカチャリと開く音がしました。

なんだ、いたのかオスカル。

ホッとしたのもつかの間、今度は「え、どしたどした?」と戸惑う女子の声と、誰かがむせび泣く声がするではありませんか。

ヒクッ エグエグ ハアハア ゲー ゲボゲホ エグッエグッググ〜ッ

「こいつ死ぬんじゃないか」と思うほど、それはそれは激しい泣きっぷりでありました。泣いているのはどうやらオスカルの模様。

「…何。どしたのよ。言ってみ?」
「わ、わたしもう無理です。こんな顔で会議に出られませんマジ勘弁してください!ワアッ」
「オスカーール!」

オスカル再びトイレに籠城。

オスカルと呼んだら号泣する女が出てくるトイレっていうのもどうかと思いますが、「出てきて」「いや出ない」と20代とおぼしきオスカルとアンドレの攻防は一向に終わる気配がありません。しょうがないのでえいやっとドアを開け、ギョッとする2人を尻目に(ええ、ええ、若いといろいろありますよね、新年度ですもんね、大丈夫だれにも言いませんから)というメッセージを込めてフェルゼンは軽く会釈をしてトイレを後にしました。


その一方。

いま東京で飲食店に行くと、年齢層の高さに驚かされます。特にファストフードの高年齢ぶりがハンパない。東京のファストフードはシルバー世代が支えているんじゃないかと思うほど、店内がおじいちゃんおばあちゃんだらけの時があります。もちろん揚げたてのフライドポテトも、ぶっといバンズのハンバーガーも普通にペロリ、であります。

先日は夜9時をまわった都心部のファストフードで、確実に70オーバーのおじいちゃん3人が熱く語り合っていました。

「なあ、長生きするコツってなんだか知ってるか?」
「なんだよ」
「それはな、満腹にならないことだ」

夜中にミルフィーユとアップルパイつつきながら言う話かよ、と思わずツッコミそうになりましたが、大人なのでそこはぐっと辛抱。結局じいさまたちは閉店までおしゃべりを楽しみ、

「じゃあ、生きていたらまた集まろう!」

とシャレにならないあいさつを交わして駅へ向かっていったのでした。

いやはや元気ですよ、ワカモノも、シルバーも。
で、我らが40代、50代はどうしておられるのでしょう?


世の中に「40の壁」というものがあるのだ、ということを恥ずかしながら最近知りました。

39から40になるのって、29から30になるより全然ラク〜なんて思って通り過ぎちゃいましたが、40になった途端に健康保険料がアップするわ、メタボ検診はあるわ、目はかすむわ、家族は老いるわ、急にいろんなものがドッと肩の上に乗っかる感じ。体力は落ちがち、心は揺れがち、いろんな意味で「30代までの財産じゃもう乗り切っていけないのだ」ということを感じるようになりました。

おまけにフリーランスの仕事も激減。出版界は新陳代謝が激しいですから、気づけば仕事をふってくれた同世代の編集者はみーんな管理職になり、同業者は仕事を失って次々と足洗ってしまいました。危機感を感じた私は、派遣の仕事にしがみついてなんとか難を逃れたものの、やはり派遣は派遣。仕事できる期間は限られています。

ヤダ誰か助けて? と思ったけどダンナがいなかったわ?
じゃ仕事するわ? と思ったけどもうすぐ契約切れだわ?
せめて家がほしいわ? と思ったけど貯金がなかったわ?
老後が心配すぎるわ? と思ったけど年金ほとんどもらえないわ?

でもいいの。40代はオトナの女。
どんな丸投げ案件にも笑顔で対応します。
どんなダメ社員にもイイコイイコします。
税金、年金、黙って支払います。

KNSG(更年期障害)もローガンズも静かに受け止めます。
原稿料1本300円? 書いてあげてもよくってよ。
増税ですって? アベちゃん呼んで?

そう、40代はオトナの女。
どんな事情だってくむのです。
事情くみすぎ、気づけばいつでも崖っぷち。
でも崖っぷちは風が強くて、案外いい天気です。

そんなわけで、金なし家なし家族なし子・じじょうくみこが、泣きじゃくる20代と闊歩する70代の間で悶絶する40代の生き方を見つめていきたいと、野望だけはでっかくがんばってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

次回のお題は「40代のコンカツ」です(そこかよ)

illustration:カピバラ舎

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