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「女神の見えざる手」

原題:Miss Sloane
監督:ジョン・マッデン
製作国:フランス・アメリカ
製作年・上映時間:2016年 132min
キャスト:ジェシカ・チャスティン、マーク・ストロング、アリソン・ピル、ググ・バサ=ロー、ジョン・リスゴー

 邦題の暗喩的な意味合いは解らないではないものの「余計なお世話」的な為、この点が引っ掛かり観るまでに時間を要してしまう。この映画の限らずヨーロッパ、アメリカでは個人名をタイトルに上げる映画が邦画よりも多いがどうも公開時には勝手に解釈された個人的な匂いがする邦題にすり替わることが耐えられない。これを日本に置き換えてみると解るはずだ。「織田信長」と銘打ったタイトルを他に変えられたなら如何なものか。

 最初はこの写真を挙げようと用意していた。ホワイトハウスが光の加減で影を作っているのではなく「人為的」に政治にこの光と影、或いは表と裏のような世界があることを示し、そこに挑み絡むスローン女史の姿がこの映画を端的に表現している。
 アメリカの銃規制法に関するニュースは日本でも取り上げられる。それでも、日本国内には存在しない銃器をめぐる論争についてはアメリカの人々が観るほどには「現実的」に迫って観ることが出来ないことが残念だった。
 映画では銃規制法案通過阻止の為に暗躍にも拘わらずある特定の人にはもろに見えているロビイストを描いている。法案を通す裏には当然利権者が存在し正義とは違う尺度の取引が庶民の向こうで繰り広げられている。

 ジェシカ・チャスティン演じるエリザベス・スローンに惹きつけられるのは単に生き馬の目を抜く状況下においても潰されずに自らの信念を貫く姿に幾重にもカモフラージュしていても綻びのように見せるピュアな瞬間があったからかもしれない。その瞬間の集積がラストシーンと繋がる。

 まるで回遊魚よろしく留まることを知らない。常に将棋やチェスのように行手の何手も先を読み、周囲は仮令同僚であってもその布石が読めない。観ていて小気味いいを越える。単に凄腕ロビイストではない孤高を厭わない信念の人を彼女は演じている。

 ジョン・リスゴー氏のキャステイングは失敗ではないか。映画をよくご覧になる方はこのキャステイングで先が読めてしまう。

 一方、気が付くと存在が大きくなる顧問弁護士。彼の心情の変化は大方映画を観ている人と同じだ。
 「ロビイスト」の言葉は知り、概略も解っているがそこ止まり。映画はこの限られた世界の中をテンポよく見せていきながらも「結果」を予測させ辛く構成し、スリリングに仕上がっている。132分の時間を長いと感じさせない。
 特にラストのスローンの視線が好きだ。正確には視線の先を描いて終わりとした描き方がこの映画に合っていた。
★★★★

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