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「ジョジョラビット」

原題:Jojo Rabbit
監督:タイカ・ワイティティ
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2019年 109min
キャスト:ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、レベル・ウィルソン、スティーブン・マーチャント、アルフィー・アレン、サム・ロックウェル、スカーレット・ヨハンソン

 鑑賞後レヴューを見ると愛らしい・可愛らしい類の表現があったが、私にはジョジョが無邪気にヒトラーを崇高していくほどに比例して家族の悲しみが深くなり、その繊細な描写が切なかった。
 児童・生徒の訓練風景をコミカルに描いても、既に私たちは事実を知っている上で観ている為、決して楽しむためのコメディには見えない。

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 冒頭、当時第一次世界大戦後疲弊しきった国民の前に現れたヒトラーを歓迎するシーンに「抱きしめたい」ビートルズを被せていく見事なシニカルさ。作品内に流れる曲は多くが一般的に知られている分、まるで合唱のように画像と重奏となる。

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 厳しい世情の中で母は息子を守りながらも、正義を通していく。
 この辺り、スカーレット・ヨハンソンもサム・ロックウェルも見せている演技が実は表裏一体になっていて悲しみを隠す陽気さの表現が見事だった。

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 焚書のシーンでも、彼はこのドアの傍に立った時と似た悲しい表情をしていた。彼もジョジョの母と同じく、見かけと信条が違う人だったのだろう。

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 一見少年の空想を具現化したようなファンタジーのように、或いは場面によっては茶化しているような印象を与えながら、戦争が狂わしていく世界を重石としてではなく、希望に変えて伝えてきた。
 当初、ドイツを描きながら英語が流れる(この作品に限らずよくある)違和感に慣れる時間は必要だったが、このことも軽快に流れる音楽と同じだったのかもしれない。手渡されたプレゼントのパッケージはどこまでもポップでわくわくしてしまう。せめて箱を開けるまでは、真実を知るまではそれでもよくない?とでもいうように。
 最後に、ドイツ語バージョン「ヒーローズ」D・ボウイが流れ、何も云うことはなかった。
★★★★

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