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「ヒトラーのための虐殺会議」

原題:Die Wannseekonferenz
監督:マッティ・ゲショネック
製作国:ドイツ
製作年・上映時間:2022年 112min
キャスト:フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルマイヤー、マキシミリアン・ブリュックナー

「1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名。移送、強制収容と労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌が80年後のいま、明らかになる。

すべてのドイツ占領下および同盟国から東ヨーロッパの絶滅収容所へのユダヤ人強制送還の始まりとなった「ヴァンゼー会議」。本作は、アドルフ・アイヒマンによって記録された会議の議事録に基づき、80年後の2022年にドイツで製作された。その議事録は、1部のみが残されたホロコーストに関する重要文書だ。出席者15名がまるでビジネスのように、論争の的になるユダヤ人問題について話し合い、大量虐殺に対して反論する者が誰一人いない異様な光景に戦慄が走る。」 *公式ホームページより

ベルリンの高級住宅街にある大邸宅

 私たちは第二次世界大戦中にヒトラー支持のもと民族大虐殺が行われたこと、その方法、場所等ももう既知だ。けれども、経緯や詳細を知っている訳ではない、また、過去の話でもない。
 ジェノサイドは今現時点でも新疆ウイグル自治区の悲しい現実然り世界のいくつもの場所で行われていることを考えると今に続く話である。

軍服が与える印象

 終始感情を揺らす或いは助長するような音楽は一切流れず、寧ろ彼らの軍靴の音が響くほど静謐な画。激昂するような場面もなくこれがサイレント作品であればあるビジネス会議風景と変わらないほど淡々と確認作業が続く。

招かれた官僚ら

 ヨーロッパに住むユダヤ人問題に対する最終的解決を話し合う会議には外務大臣や法務大臣など協力が当然必要だった。
 想像はついていたが虐殺される側への配慮は一切なく、強いて国内のユダヤ人の地を引く混血人はその数に入るのか否かの短い討論場面はあった。それでさえ最終的には純粋(完璧)を求めていく彼の会議。

 「銃殺では殺す兵士も精神的ダメージが残る、若い兵士のそうしたケアは考えるべきだ」とこれまで行われてきた最終解決方法に異議が唱えられる。
 微々であっても彼らに人としてまともな感覚が残っていると見ていた私が馬鹿を見る展開が政府高官の発言場面では起こる。
 最終解決方法それ自体にも遂行にかかる「時間と経費」を命を無視して合理的な着地点を求めて議論されていく。

実際の参加者

 人はこれほどまでにも容易に全体に調和し間違いを修正する場を失うのかと、会議中誰一人反対意見を求めない異常さに本当に見ていても背筋が寒くなった。

 随分以前に観た「ハンナ・アーレント」をもう一度観直したい。
 彼女がアイヒマン裁判を傍聴して「大衆の無関心さや思考停止こそが悪だ」と悪の凡庸さと説いていたことを思い出した。

★★★
 
 
 

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