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「卒業」

原題: The Graduate
監督:マイク・ニコルズ
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:1967年 107min *日本公開1968年
キャスト:ダスティン・ホフマン、アン・バンクロフト、キャサリン・ロス

 4Kデジタル修復版で初めて映画館のスクリーンで観る。
 この作品ほどまだ観てもいないにも拘わらず粗筋・ラストハイライトシーン・音楽等を知っている映画は少ない。ラストシーンは様々な所で語られもしている、パロディにもなるほどもう普遍性を持っている。

 観終わってすぐ予想外の自身の感想は「登場人物の誰にも感情移入が出来ない」。特に夫の共同経営者の息子を誘惑するロビンソン夫人については同性であっても何もかもが理解できない。一連の不貞が表立ってからの行動は嘘だらけ自己保身。人格的に破綻し庇いようがない。

 卒業祝い、誕生日に知人友人を集めパーティーをする恵まれた環境。勿論、ベンジャミンはこのパーティー開催を喜んでいるわけではない。親の為と顔を出すところは50年前も今も青年の心境は同じ。

 卒業祝いにアルファロメオを贈られる裕福な家のお坊ちゃん。この車での運転シーンはどのシーンにおいても突出した印象で、彼が置かれている上流階級を文字通り絵に描いていた。

 将来を決めかね行動すべきことも見つけられないモラトリアム感は、まだ駆け出し舞台俳優から抜擢されたばかりでありながら、一人のシーンは十分に伝わった。

 でも、
 でも、
 50年前はこのあり得ない年の差誘惑、或いは倫理的にあり得ない誘惑も観客には受け入れられたのか、そこが不思議でならない。

 エレーンの行動も、ごめんなさい理解できない。本当に母と関係を持ったことがあり、幼馴染程度しか知らない人の元へ結婚式を中断しても走るのか。少なくとも映画では複雑な心情、細やかな部分は描かれない。

 結婚式に乱入し「花嫁を奪ったまでの映画」と捉えるのであれば、どうにか納得できるのかも知れない。その後の展開は何も考えないことで精神衛生は保たれるか。

 帰宅後、公開当時の1967年映画作品を確認した。
 時代が違う。そうした中での「卒業」は今の視線で見ると雑な撮影技術フェードアウトも存在が違っていたのだろうし、プール水中の場面然りベンジャミンの表情を固定したまま場面展開していく辺りは新鮮だったのか。
 今は劇中の音楽は台詞同様に重みがある。台詞がなくとも状況を語らせもする。この映画音楽に関しても「卒業」では同じ曲が作品中何回か使われることに驚きながら映画の進歩をみる。

 サイモン&ガーファンクルの曲が使われた夫々のシーンを観られたことは素直に楽しめ全てを否定する訳ではない。
 若き日のダスティン・ホフマン氏の演技と映画と一体となりPVよろしくのサイモン&ガーファンクルに★を。
★★

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