「この世界の（さらにいくつもの）片隅に」

監督：片渕須直
製作国：日本
製作年・上映時間：2019年　168min
キャスト：（声）のん、細谷佳正、尾身美詞、稲葉菜月、牛山茂、新谷真弓、岩井七世

　もし一作目を観ていなければ迷わず評価は付けられた。「この世界の片隅に」に幾つかのシーンを追加した長尺版であるから基本的には作品の質は高い。けれども、加えられたシーンが前回作が作り上げていた広島原爆投下までの静かな流れとバランスは崩れていたような印象を受けてしまう。
　二作のどちらが良いという世界ではなく、小説でも改訂版で加筆や訂正によってより良い作品を目指すよう、映画の世界でも同じことが行われてもそれは全く問題は無い。伊坂幸太郎氏など改訂版で内容を大幅に変える作家も存在している。

　例えば、すずと周作の関係に絡むリンが加わることで確かにすずの内面は敢えて深読みしなくても誰の手にも届く深みを増した。けれども、その必要はあったのか。結果的には市井の中で描かれる北條家ではなくなった。

　エンドロールで描かれるリンで十分私には悲しみが伝わっていた。
　二作とも観て欲しいが、もしどちらか一作を択ぶとしたなら前作をお勧めするだろう。
　詳らかにするには168分は長過ぎた。
★★★