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28.いい加減の「いい」はどの加減

 長期滞在したいほど去り難い町になる。
 城壁内の径は既に書いていたよう1km程度のとてもこじんまりとした町の為、四日間滞在すると風景に慣れていく。その慣れた風景を来た道と逆に駅へ向かって下っていく。途中、旧市街へ向かうスーツケースを引いた旅行者とすれ違う。休み休み上る彼女の気持ちが今はよく解る。

 前日に乗車便の変更をPCで済ませた際、PC上では何も問題なく終わっていた為安心して窓口に並ぶ。しかし、窓口駅員はPC手続きで控えた番号だけではダメだと、断固としてプリントアウト用紙を出せと要求してくる。
 こちらは旅行者でプリンターは無いのでそれは出来なかったと云っても譲ってくれない。iPadで撮った写真でもダメだと拒否しとうとう上司と相談する展開、最終的にはしぶしぶと変更を認めることとなる。
 エヴォラを去る最後がこうしたことは残念だが、そもそもこちらは片言英語でお願いしているのだから仕方がない。こうした交渉一つ一つを苦痛や不安になるようであれば、個人旅行は難しくなる。うまく事が運んでも運ばなくても振り返るとそれらは全て思い出になる。
 乗車すると車内はガラガラに近かった。何度二人で座席番号を確認しても私たち二人が「座るべき」場所にはPCを広げかなり寛いだ若者カップルが座っている。私たちが乗り込んでも気配を意識する様子さえない。
 仕方なく通路を挟んだ反対側に座るが、本来の指定席ではないので落ち着かない。駅に着く度に私たちは冷や冷やしているのだが、ポルトガルの人々は頓着せず「空いている席」に座っていく。でも、様子を見る限り最初のズレが延々と響き、一つずつズレていく。
 とうとう車掌さんの検札が始まった。が、何も云われない。
 駅窓口の拘りは彼一人の極めて個人的な部類だったのか?何か朝から虫の居所でも悪かったの?と訊きたくなる。この差は何だろう。
 道路に引かれた芸術的までにも曲がった青い線といい、指定席の無意味化、一方窓口駅員の四角四面な態度。ポルトガルのいい加減はどのあたりなのだろう。

 


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