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NORTHLANE『Obsidian』(2022)

2009年にオーストラリア シドニーで結成されたメタルコアバンド、Northlaneは、
Jon Deiley(g)、 Brendan Derby(Dr) 、Adrian Fitipaldes(vo)、Alex Milovic(Ba) Josh Smith(g)の初期メンバーが集まりArchtectsのナンバー『North Lane』をそのままバンド名としたことから歴史が動き出す。

2011年にはUNFDレコードと契約し『Discoveries』でシーンにデビューすると、オーストラリアのヒットチャートARIAで初登場49位を記録し、2011年の「これから来るハードコア/メタルコアバンド」最右翼として注目を集めた。

その後『Singularity』ではよりハードコア路線を強め、続く『Node』『Mesmer』ではVoがAdrian Fitipaldes からMarcus Bridgeに変更になったこともあり、クリーンヴォイスを多用するスタイルのサウンド幅を身につけたかと思いきや、2019年発表した『Alien』では突如デジタルサウンドをメインに据えたエレクトロコア路線に転向。

急な路線変更に、最初は耳がついて行かなかったが、良く聞くと『4D』とか『Eclipse』みたいな最高にクールな曲もふんだんに入っているので、いつかこの『Alien』のレビューもしようと思う。

セルフプロデュースとなる今作、2022年発表『Obsidian』は自主レーベルのBelieveからリリース。

Obsidian

サウンド面は前作よりさらにデジタルエレクトロ化が進み、EDMのような曲が並ぶ中で、Marcusの美声と美しいメロディラインが際立つ新生NORTHLANEを象徴する一枚になっている。

初期のサウンドを期待すると、面白い程に裏切られるので要注意だが、新世代オルタナハードコアアルバムとして聴けば、かなり完成度の高いアルバムになっている。

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* Marcus Bridge – lead vocals
* Jon Deiley – lead guitar, bass, programming, drum pad
* Josh Smith – rhythm guitar
* Nic Pettersen – drums, percussion
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■Clarity
シンセサイザーによるエレクトロニカサウンドが全面的に支配する近未来チューン。
前半はエフェクトをかけたボイスが浮遊感とともに空間を彷徨うが、1:30付近からの怒涛のツーバス連打と共に疾走を開始する様は圧巻。
Voの激怒シャウトと歪んだ音で放つベースが心地よい。


■Clockwork
シンセと力強いビート、そして伸びやかなクリーンヴォイスにより彩られるデジタルサウンド。
途中からヘヴィなギターと変則的に波打つベースが粒立って混ざってくるとハードコア感が増してくる。


■Echo Chamber
Pop Song的なシンセとビート、軽佻な歌い回しで大変聞きやすくて結構なんだけども、あれ、ヘヴィネスとかは前作アルバムに全部置いてきちゃったのかな…?と思いきや、3:05あたりで急激に落とす豹変っぷりに一安心。

■Carbonized
今までの流れを突然断ち切り、キラキラシンセを一切廃した、代わりにグリグリと脈打つベースが主導権を握るメタルコアチューン。
挑発的に吐き捨てるようなMarcusのラップ調の節回しに思わず昂ぶる。


■Abomination
もはやEDMとも言える打ち込みビートとエレクトロニックノイズが全面を覆う。
DJセットで違和感なくプレイできそうな曲。
ざらついたベースサウンドと豪唱シャウトよって湧き出てくるエナジーはブチ上がりの必須要素。

■Plenty
重厚感と浮遊感の両極をデジタルノイズとバンドサウンドのダイナミズムで繋いだ骨太チューン。
電子の波を掻き分けていくシャウトが、カオティックな世界に差込む光芒のようでひたすら美しい。

■Is This a Test?
アガるEDM。
LMFAOかSkrillexがDJやってるのかと思いきや、しかし僅かだが存在感のあるギターサウンドが随所に挟まることでなんとかバンドであることを思い出させてくれる。

■Xen
パンキッシュなビートと現代的なオルタナティブロックが融合した奥行きがあるサウンドスケープ。
単なる表向きのヘヴィネスに捕らわれず、曲の内面に持つ重厚感のようなものをリスナーに問うてくる一曲。
最後の1分くらいは目を瞑ってデジタル座禅タイムです。

■Cypher
テクノチックな始まりからMarcusのシャウトが空を切り裂いて音の断面を創り出していくと、粗く削ったギターサウンドが弾むように彩りを加えていく。

■Nova
Marcusの耽美な声と浮遊サウンドが織りなす、払暁に見た夢のような、穏やかな波打ち際のようなトリップ曲。

■Inamorata
終始クリーンに歌い上げる綺麗なエレクトロロックな曲。
変拍子も挟みつつ、コーラスは清涼感溢れるアトモスフェリックな歌唱に緩やかに浸れる。

■Obsidian
タイトルチューン。
前半は低く抑え気味のMarcusのVocalが、中間部で突如ギターノイズと共に激情グロウルに変わり、また突き抜けるようなハイトーンボイスをキメてくる。
テンポもメロディも万華鏡のように様々な顔を交互に見せてくるプログレ的な一曲。

■Dark Solitaire
Bring Me The Horizonや、最近だとBad Omens、Spritboxに代表される、デジタルノイズで奥行きのあるサウンドと、諦観に満ちたウィスパーボイスから一気に火の噴くような激情を吐き出すような曲。


総合満足度 83点(デジタルコアの最新系が楽しめる)

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